第1話 大学入学と思い出
道路には桜の花びら絨毯。周りの新入生たちはもちろんはしゃいでいた。
もちろんここで家族3人、娘を真ん中に幸せそうに歩いている。
「父さん、お母さん。私も今日から大学生だよ!」
「沙羅が生まれて今日まであっという間だったな……。」
娘の横で桜が舞っている空を見上げて、過去を思い出している。
「パパなんて最初……。ふふっ。」
母の紗奈里は思い出し笑いをしていた。
そんな2人を交互に見て沙羅は思い出していた。
――そう、私が生まれた日。父さんはもうひとつ命を連れて帰った。
私が生まれた事に興奮して何故か猫を買って来たのだ。
私の誕生日である10月7日。
この日の話をする時には必ず父さんが連れて帰ってきた黒猫、『ルナ』の話になるんだ。
もう私の耳にたこが出来るレベルだ!
私にとってはルナはペットではなく、兄弟みたいな存在だったんだ。
一緒にいると安心するんだ。
亡くなった後も、いつも近くに感じているんだ。
「でも、それが運命だったのかもしれない……。」
◆◇
出産の日、予定日より3日遅れだった。
蒼一の仕事終わりの帰り道、電車で帰っていた。
ブー、ブー。
(満員電車だから携帯が見れない……。次の駅で乗り換えだから我慢しよう。)
左手でつり革を持ち、右手はブリーフケースを持ち、ジャケットを掛けている。
(まぁ、状況的に見るの無理なんだけどね。)
と心の中でツッコミ、駅に着くのを待った。
駅に着くと周りの出る人に身を任せて一緒に降りた。
(よし、安全地帯ー。)
人通りの少ない自動販売機の前に陣取り、携帯を開いた。
『産気づいた、タクシーで病院行くね。』
とメッセージが入っていた。
(今乗り換え 駅から原付で向かあ!)
歩きながら返事を返し、ポケットに携帯をつっこみながら乗り換えのホームへ急いだ。
「次の電車までは3分か……。」
乗り換えの電車が来るまでそわそわとした。
(遅延ないのが救いか。早く来てくれー!)
そのあとはすんなりと最寄り駅に着いた。
改札を出て、携帯を見た。
『誤字?慌てすぎ!』
『まだ時間かかりそうだから家で待ってて!』
「はっず!とりあえず帰るか。」
『了解!持っていくものがあれば言って!』
誤字に赤面しながら返事をし、原付で家に帰った。
真っ暗な家に電気をつけて携帯を開いた。
『準備してたキャリーケースは持ってきてるから取り合えず大丈夫。』
『たぶん1時間はかかるみたいだから外でご飯食べてから来て。』
(やべ、充電30%だ、充電しておこう。)
蒼一はメッセージを見て携帯を充電しながらご飯の宅配を頼んだ。
(到着まで15分、置き配。ギリ風呂入れるぞ!)
シャワーだけで猛ダッシュで入った。
バスタオルを取って携帯を見る。
(さなからメッセは来ていな。ご飯は……、もうマンションの近くじゃん!)
急いで体を拭いた。
「ピンポーン。」
(やべぇ、オートロックー!)
脱衣所から駆け足でインターホンへ行き、解除ボタンを押した。
『髪の毛後でいいや。』
髪の毛を乾かすのを諦めて服を着た。
「ピンポーン。」
再びチャイムが鳴った。
配達の人は玄関の横にご飯を置いてそっとその場を離れた。
ガシガシとバスタオルで髪の毛を拭きながら玄関を開けた。
(よしっ。牛丼急いで食べて、髪の毛乾かして家出よう。)
そこからは牛丼を大きな口へかき込み、髪の毛を乾かして仕事のブリーフケースを持ち、家を出た。
エレベーターに乗りながら携帯を確認。
(よしっ、返事は来てないな!)
『今から原付で向かう。ご飯は食べた。』
既読はついていないが気にせず病院へ向かった。
片道20分くらいだ。
◆◇◆◇
病院が見えてきたころ、電話が鳴った。
『あとちょっとなのに……。』
目の前のコンビニに原付を止めて携帯をポケットから取り出した。
(病院からだ!)
「紗奈里さんの旦那様でしょうか?」
「……はい、そうです。」
「これから分娩室に移動します、お産に立ち会われますか?」
「はい、あと5分くらいで着きます。」
「では5階に直接来てください。」
電話をしながら、コンビニでペットボトルのコーヒーと水を選んでいた。
電話を切るとレジへ向かい会計をして急いで病院へ向かった。
そこからはあっという間だった。
紗奈里の手を握り、ただ待つことしかできなかった。
「おめでとうございます、元気な女の子です。」
蒼一は何度も「女の子?本当に?」と確認しながら涙を流した。
「抱っこしますか?」
蒼一は何度も頷き抱っこをした。
(幸せだ、生涯愛しているよ……。)
蒼一は沙羅に心の中で誓った。
紗奈里が携帯を看護師さんに渡した。
「3人で写真を撮ってもらっていいですか?」
「パシャパシャッ。」
「ありがとうございます。」
紗奈里は携帯を受け取って写真を幸せそうな顔で確認していた。
すると医師が紗奈里に近付き一言。
「経過は安定しています。」
紗理奈は安堵の顔をし、蒼一を見た。
蒼一は沙羅の抱っこに夢中で幸せそうな顔をみて微笑んだ。




