↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載再開】ダンジョンで殺人が起こると発生する閉鎖空間に閉じ込められた俺が脱出するまで  作者: ミンミンこおろぎ
第三章 死霊術師を探せ〜女3人男1人のハーレムパーティーでダンジョンに向かうまで〜
42/58

第6話 セバスチャンといっしょ

門を越え、一歩踏み出す。




 


 目に写った死霊街は、……日差しに照らされた明るい廃墟だった。




 木や草は、あまり生えていない。


 道には石畳が敷いてあるが、あちらこちらで剥がれている。


 そして崩れた、あるいは崩れかけた建物の数々。





「時間の止まった街だな」


 俺はポツリと言った。




 と。


 フッと目の前で、何かが笑ったような気がした。





「エド様、そうだとも、そうじゃないとも言えるそうです。


 みなさーん、ヴィオラちゃんでーす。


 おじゃましまーす。


 こちらの方々は、仲間でーす。


 仲間ともどもよろしくお願いしまーす」


 ヴィオラが虚空に向かって声をあげる。




 空気が微かに揺れたような気がした。





「えーと、何かいるんだよな?」


 俺は左右を見回しながら言う。


 俺には何も見えない。




「いるよ、幽霊ゴーストだね。


 鈍感な君がボクはうらやましいよ」


 返事はジルから返ってきた。




「あのさ」




「言っておくけど、くれぐれも聖属性魔術を使っちゃダメだよ。


 街の住人が怒るから」




「それは冒険者組合で、さんざん聞いたよ」





 ジルは俺に絡んできている、よな?





「ヴィオラ、正門から入らないと、どうなるの?」


 アイラが尋ねる。




「アイラさん、侵入者は住民がオモチャにして良い契約だって、ボクは聞いたよ。


 だから、侵入者は、幽霊ゴーストや亡霊レイスに、弄もてあそばれ取り憑かれちゃうんだ」


 先に答えたのは、ジルだ。





「でも、腕の良い死霊術師ネクロマンサーなら、街に紛れ込めます。


 だから、この街まで死霊術師ネクロマンサーを探しに行かされてるんです」


 ヴィオラが続けた。






「では、正式な訪問者として、ちょっと失礼するわよ」




 そう言うと、アイラはしゃがみ、扉の下の地面に白いチョークで線を引いていく。


 気合いの入った太い線だ。




「その線はなんだ?」




「線の上をヒトが通れば気配で分かるの。


 消されても分かる。


 この街はヒトがいないから役に立つわ」


 アイラが答える。





 アイラのチョークのスキルは、やっぱりすごいよな。





「侵入者が、門から出ていくとは思えませんけど」


 ヴィオラ。




「余計な一言だよ、ヴィオラ・サン。


 気休めでもやる価値はあるだろ?」


 ジル。





 ジルは、アイラのことはちゃんと認めてるな。


 俺とヴィオラのことは、、、うん、認めてないね。


 





「みなさん、泊まる場所まで行きますよォ」




 ヴィオラの先導で、俺達は死霊街を歩く。




 大通りの石畳には、色タイルの意匠がある。


 かつては裕福なヒトビトが暮らす街だったのだろう。




 ただ、遠目ではきれいな石畳も、歩くとボコボコだった。


 今の街の住人に足はないので、直す必要もない。





 道路の左右には、屋根や壁が崩れ落ち、完全に廃墟になっている建物がある。


 一方で、意外にしっかり建っていて、またヒトが住めそうな建物もある。




 二つの建物の違いは何なのだろう?





「こちらです」




 ヴィオラが案内したのは、四角い壁で囲まれた石造りの邸宅だった。


 今まで見た建物の中で、一番きれいかもしれない。




「ヴィオラでーす。


 昼間から、ごめんくださーぃ。


 用事があって、戻ってきました」




 コンコン。


 ヴィオラは、玄関の扉のノックを叩く。





 ギィィィ。




 扉が開いた。


 すぅっと冷たい空気が流れてきた。




「おや、居候いそうろうのお嬢様ではありませんか。お早いお帰りで」




 そこにいたのは、まるでお屋敷の執事のような格好の、男だ。


 ただし、半透明な。




 死霊属性に鈍い俺でも見える。


 幽霊ゴーストではない。


 亡霊レイスだ。





「久しぶり、セバスチャン。


 変わりはない?」


 ヴィオラが言った。




「久しぶりというほどでもありませんね。


 お屋敷は変わりありません」


 亡霊レイスが、淡々と答える。





 執事のオバケで、名前がセバスチャンか。





「わたしヴィオラは、組合から仕事を押し付けられました。


 お仕事なので、生きてる仲間もいっしょです。


 仲間もこちらに泊めてくれませんか?」





「お手伝いいただけるなら、お部屋はお貸しします。


 ただし、くれぐれも汚さずに使ってください」




 はい。





 屋敷の中は、きれいに掃除されていた。


 ぜんぜんホコリが落ちていない。




 ただ、家具の類たぐいは、ほとんどない。


 作り付けの棚と絨毯が敷いてあるぐらいだ。





「皆さまは、こちらのロビーの、絨毯を敷いてない部分をお使いください。


 中庭の井戸には水がありますので、汲んでかまいません。


 台所の魔石コンロは使ってかまいません。


 それ以外の設備を使う場合は、申し出てください」




 はい。




 何事もセバスチャンの言うとおりに。


 ここは、死霊街なのだから。





「セバスチャン、この辺りで生きてる死霊術師と赤毛の子供を見ませんでしたか?」


 ヴィオラが尋ねる。




「さあ? このお屋敷には来ていませんね。


 私はこの屋敷の外には興味がないので」


 セバスチャンは答える。




「予想通りっちゃ予想通りですね。


 セバスチャンは、家付き霊ブラウニーなので屋敷の外に出ないんです。


 夜になったら、外の連中の話を聞いてみましょう」





 セバスチャンは、生きてるヒトとは興味の方向性が違うようだった。





「居候いそうろうのお嬢様とお客様、先にお手伝いをお願いします」


 


 はい。





 セバスチャンから頼まれた手伝いは、植木の手入れだった。




「草を生えなくする魔術はございますが、植木を枯らすわけにはまいりません」




 伸び過ぎた枝を切ってほしいとのこと。





「エド様ァ、その枝は、もうちょっと根元から切ってほしいそうでーす」


 梯子を支えるヴィオラの声が、下から聞こえた。





 今、俺の手には小型の鎌がある。


 古風な植木の手入れ道具だ。


 慣れない道具で扱いにくい。




 が、やるしかない。俺の仕事だ。




 高い所の作業を女性にやらせたなんてバレたら、兄さんに怒られる。


 さらに、姉と妹に死ぬほど馬鹿にされる。





「ここらへんですか?」




「はい、そちらでけっこうです」




 いきなり、隣からセバスチャンの声が聞こえた。


 び、びっくりした!




 俺はセバスチャンの指示通り、枝を剪定した。


 うまく切れなかった時は、隣で溜息が聞こえた。




 道具が古いんだよ。


 最新式のX字の剪定ハサミを用意してくれ。





「お昼にするわよ!」


 下からアイラの声が聞こえた。




 昼食の弁当は、街から持ってきた。


 魔石コンロで湯が沸かせるので、温かいお茶が付いた。





 午後から、アイラと交代した。




 アイラが「私も高い所に登りたい」と言ったからだ。


 これは、男として責任を放棄したことにはならない。




 アイラは、俺より高い所に慣れていて、手際よく枝を剪定していく。





 そして、セバスチャンから代わりに頼まれたのは、草むしりだった。




 はい。




「あの手この手を尽くしておりますが、除草の魔法もなかなか完璧とはいかず」




 はい。




「組合職員に年に一度は頼んでいますが、やはり綺麗な方が良いのですよ」




 はい。





 草むしりはジルと一緒にやった。


 そして、明らかにジルは俺を避けている。




 一言も口をきかないのはもちろん、何をするにも俺を避けて動く。




 俺が何をしたと言うんだ?




 姉と妹とは、あれこれこき使われたし、悪口もさんざん言い合った。


 でも、こんな風に避けられたことは、あまりない。




 だんだん凹んできた。




 オリーブさん、なんでジルを連れて行けって言ったんだよ!





 日が傾きかけた頃、セバスチャンが「今日はここまでにしましょう」と宣言した。




 はい。





 午後の残りは休憩だ。


 安全な拠点があるのは素晴らしい。





 夕食は、保存食をかき込む。





「さぁ、街の住人に聞き込みよ!」


 パーティー・リーダーのアイラが言った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。