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第8話 ダンジョンに死体を捨てるな

 オリーブさんとの交渉を終えて、帰り道だ。


「あのちっこいデブ、ドケチでしたねェ」

 美少女吸血鬼(ヴァンパイア)のヴィオラが言った。


「……」

「……」


 アイラは沈黙した。

 

 俺は、恐ろしくて同意できない。

 オリーブさんには、それぐらい迫力があった。


「ちっこいデブはやめて。

 オリーブさんは組合の幹部の一人だし、武器や魔術も使うし、強いって噂よ」



 あの圧は、本人の強さも原因と。



「ほう、それは、それは!

 戦士ヴィオラとして、一度立ち会ってみたいです」


 ヴィオラは吸血鬼ヴァンパイアの特性として怪力で、武器を扱う技術も素晴らしい。


 ヴィオラとオリーブさん、どちらが強いだろうか。


 いや。

 これは、白黒つけないのが賢明だな。


 うん。





「なあ、みんな」

 俺は話題を変えた。


「なによ?」

「なんですか、エド様」


「さっきのダンジョンで、けっこう大きな荷車を引いてる冒険者パーティーを見たんだよ」


「ああ、いたわね」


「あの荷車に死体を載せて、大きな布で隠せば分からないんじゃないか?」


「そうね、あの大きさならいけそうね」


「もしかして、ダンジョンに死体を捨てるって、割と良くあることなのか?

 ほら、悪い奴らが死体の始末に困って……とかさ」


 ちょっと気になってるんだよね。



「……死体を持ち運ぶのは、そんなに簡単でもないわよ」

 アイラが言った。


「ダンジョンに入る時に組合がチェックしてるけど、ザルに見えたんだよ」

 俺は自分の意見を主張する。



「……死体ってさ、けっこう臭うのよ。

 ついでに重いし。

 ダンジョンで死んだ仲間の遺体を運んでいるパーティーを、手伝ったことがあるから知ってるんだけど」

 アイラは言った。そして、続ける。


「私は冒険者として、ダンジョンを死体捨て場に使われるのはイヤだわ。

 だから私は、そういう悪党を見つけたら組合にチクる。

 私と同じような考えの冒険者は多いと思う」



「ダンジョンに死体を捨てるのは、死体を地面に埋めるより目につくってことか」



「まぁ、エドモンの言う通り、入り口のチェックをもう少し厳しくしても良いと思うわよ」

 最後にアイラはまとめた。



 冒険者が全員無法者ってことはない。

 荒っぽい連中は多いだろうけど。



「エド様が心配してるのとは、ちょっと違いますけど。

『ダンジョン葬』って知ってますかァ?」

ヴィオラが新しい話題を持ち出した。


「えっと、知らない」

「何だそれは?」


「人間族の、ある部族の風習なんですが、亡くなられた方の遺体を土に埋めたり焼いたりしないんです。

 代わりに遺体をダンジョンに放置するんです」


 ダンジョンに放置された死体は、ダンジョンに吸収される。


「その部族にとって、それが死者の弔い方なんだね」


「そうです」



 それは死体を捨てることは違う、よな?


 ヒト族それぞれ、弔い方もその土地や部族それぞれ。


 世界は広い。


 いや、冒険者も失敗すればダンジョン葬なのか?




「そうだ、ヴィオラ。

 君に血をあげる約束をしてたよね」


「さすが、エド様。ちゃんと覚えていてくれたんですね!」


「もちろん。今回の事件はヴィオラが解決したようなものだから」


 俺やアイラは、推理というか、あれこれ理屈をこね回していただけだ。


「んふふー。でもちょっと今はいいです。

 エド様もアイラさんも、この前血をもらったばかりですから。

 同じヒトからもらう時は、少し時間を置いた方が良いってお母様に習いましたァ」


「へー、そうなの」


「はい。でも約束は有効ですからね。

 エド様からもアイラさんからも、コップ半分もらいますからね」


 ヴィオラはたくましい笑顔で言った。


 約束を忘れたら、メイスを持って追いかけてきそうだな。





 そして。


 一週間を待たずして、俺達はオリーブさんに呼び出された。


「検査が終わった。

 血液は、確かに豚の血だった。

 

 容疑者Aは拘束中だ。

 第一発見者も共犯だった。

 逃げる前に、とっつかまえたよ。


 悪党のグループで、ダンジョンを混乱させて、腐肉食スカベンジャーや脅迫で荒稼ぎするつもりだったらしい。


 でも残念なことに、主犯は逃げられてしまった。

 まったくもって、街の役人は頼りにならない」

 オリーブさんは言った。



「主犯が逃げられたのは残念だけど、金貨15枚はもらうわよ」

 アイラが断固宣言する。



「ああ、支払うよ。

 金貨15枚、早期解決分として追加5枚、返却ぶんも合わせて21枚を支払う」



 俺達はギョッとした。


 明日は雨か嵐か雹か雪か。


「ありがたくいただくわ。

 でも、オリーブさん、どうしたの?

 大丈夫?

 お腹が痛かったりしない?

 エドモンは、治癒術師ヒーラーよ。

 相談したら?」

 アイラが言う。


 あ、うん。

 俺が治せるかは分かりませんが、話を聞いて師匠に紹介するぐらいなら。



「君達パーティーの能力を正当な評価した結果だ。正当な報酬だと思っている。


 その能力をみこんで頼みがあるんだ」



 俺達三人は、さらにギョッとした。


 オリーブさんが気前よく支払うような頼みごと。


 嫌な予感しかしない。



 もう想像がついてる方もいるだろう。

 オリーブさんの無茶振りは、『ジルを連れて行ってほしい』というものだった。



 さて、この後の俺達の『毒を喰らわば皿まで』の物語は、また別の機会に語る。



 とりあえず、殺人事件は解決したからだ。

 解決したよね?






ここで一旦〆になります。

この続きは、なるべく夏に、間に合わなければ秋か冬になります。



ここで一旦〆になります。


続きの構想はあります。

ブクマはそのままにお願いします。

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