シュバイエの気持ち
更新が遅れてしまい申し訳ございませんでした。
ラーブさんからシュバイエの引き取りの話を聞いた僕とエリールとシュバイエは自宅の大部屋にいる。
まさかこの村でシュバイエの引き取りに来るとは、なかなか大胆なことをするものだ。
今、この村はエストラル王国の領地の扱いになっているので、事実上、敵地に殴り込み行くようなものになる。
こんな無茶なことができるシュバイエの親はどんな人間なの会ってみたいものだ。
しかし、なぜこの村が引き取り場所になったのか。
うーーーん。
考えれば考えるほどわからなくなる。
恐らく、この村と同盟を結んでいるエストラル王国に圧力をかけに来たのか、それとも単に村の視察をするだけなのか?
うーーーん。
全然分からない。
ぐぅううう。
あっ、色々考えていたらお腹がすいてきたな。
後のことを考えてもしょうがないので、晩御飯にしよう。
数分後。
食堂のテーブルには僕とエリールにシュバイエとレフコンとメランとラーブさんが席に座っている。
今日の晩御飯は立吹特製オムライス、サラダに野菜スープだ。
まさかこの世界に来てオムライスを食べる日が来るなんて今でも信じられない。
ところで僕の料理の腕前は普通で、親は仕事が忙しく帰りが遅くなることがあるので、ご飯とケチャップに卵があればよく作っていたものだ。
僕以外の面々は、テーブルに並べられた料理に興味津々だ。
「なぁー、この黄色いのはなんのじゃ?」
「これはオムライスっていうんだ」
「オムライス?」
「うん。僕のいた世界の料理だよ」
「これが神の使いの世界の料理なのか?毒とか入っていないだろうな?」
「入っているわけないでしょう!とにかく食べてみて」
「わかったよ」
半信半疑になりながらもシュバイエはスプーンですくったケチャップライスとそれに覆われている薄焼き卵を口に運んだ。
「むっ!」
おや?お口に合わなかったのか、咳き込むような反応してけど大丈夫なのか?
「お、おいしい。なんておいしいんだ!」
「だろー」
「こんなの初めて食べたぞ!」
シュバイエがおいしそうに食べてるのを見ていたエリールは恐る恐るスプーンでオムライスをすくい自分の口へと運んだ。
「うーん。おいしい~」
それを見ていたレフコンも口に運び、メランは四足歩行のためスプーンは使えないので、そのままオムライスにかぶりついた。
「ううぉ、なんじゃこれは!この赤いご飯の酸味がきいておいしいではないか!!!」
「これうっま!!赤く染まったご飯に黄色い布のようなモノに包んでいるだけなのに、なんておいしいんだ!」
みんなはオムライスを無我夢中で食べている。
それもそのはず。
このオムライスに入って具材は村で収穫したエンドウ豆とトウモロコシにニンジンなどが入っているし、鳥型魔物の肉が入っているので食べ応えがある。
みんなが美味しそうに食べるので、僕も一口。
うーん、いつもの味だ。
オムライス自体もおいしいが、鳥型魔物の肉は意ケチャップとうまく絡み合っていて、すごくおいしい。
これは今後のメニューのレパートリーが増えそうだ。
ふと気付けばオムライスは完食していた。
今回は久々の得意料理を作ったのだが、この世界に来てかなり時間が立っていたので、料理の腕が落ちていないか心配したが、特に問題は無いようだ。
もちろんサラダとスープも食べました。
夕ご飯を食べ終えた後、みんなで後片付けをして解散した。
解散したみんなは各々の部屋に戻り、僕は部屋に戻ってすぐに服を脱ぎ、あらかじめ沸かしていた風呂に入った。
ふぅー、体を動かした後の風呂は気持ちいいものだな。
しかし、明日は大変な一日になりそうだ。
というのもこの村にシュバイエの父でブランチ鉄鋼国皇帝がやってくるからだ。
出来れば問題なく終わればいいのだが、果たして無事に終えることができるのだろうか、はっきり言って心配である。
後先のことを考えてもしょうがないのでもうちょっと浸かって今のことを忘れよう。
しばらく風呂に浸かっていると扉が開く音が聞こえてきたので、音のする方へ向けると、そこにいたのはタオルを巻かずに裸になっているシュバイエがいた。
「うわ!シュバイエ!?いつの間に脱いだんだ!?」
「なんだ?悪いか?」
「別に悪いってわけではないけど。せめてタオルを巻くなどしてくれないか?正直、目のやり場に困るのだけど・・・」
「何を言っている。こういう場は男女関係なく裸の付き合いをするの当り前じゃないのか?」
「そういうわけじゃ・・・」
「それにお互いの身体を触りあうことで仲良くできると父上からそう教えてもらったぞ」
「教えてもらった?」
「あぁ、今も父上と一緒に入って家族仲を深めているぞ」
なんだって!?いい年して父親と一緒にふろに入っているのは家族仲を深めるよりかはいやらしい意味で接触しているに違いない。
正直に言って呆れる。
ますます彼女の親がどんな人なのか気になってしまう。
「そいじゃ。隣失礼するぞ」
「ちょ、ちょっと!」
僕の制止を聞かずにシュバイエは風呂につかり、僕の隣に座った。
なんだか気まずい雰囲気になった。
ここまでの状況は分かっているが、僕の隣には褐色美女が裸になって座っている。
一体何の目的で僕のところに来たのか。
少し気になるが、まず目につくのが豊満な胸部にすらっとしたくびれた体だ。
いやいや、そんなことよりもなぜ僕のところに来たのか聞いておかなければ。
「なぁー、シュバイエ」
「なんだ?」
「なんで僕のところに来たんだ?」
「それは質問か?」
「いや、そう言うわけじゃ・・・」
そうだ。
彼女には僕と奴隷契約を交わしていたんだった。
ここはちゃんと質問だということを言っておこう。
「まぁ、質問と言ったら質問だけど。答えたくなかったら無理に話さなくても・・・」
「私は貴様がどんな人間なのか聞きに来ただけだが」
ズコーーー!!!
そこははっきり言うんかい!
一体何をしたいのやら・・・。
「はははっ。僕のことを知りたいっていっても、ただの農作業が好きな人間だよ。それ以上知っても意味は・・・」
僕は中身のない返事をすると、風呂に浸かっていたシュバイエは立ち上がり、僕の目の前に立ちふさがるようにして話はじめた。
「いや、貴様はこの村の村長だということと、エストラル王国と同盟を結んでいることはわかっている。だからこそ貴様のことをもっと知りたいのだ!さぁ、はっきり答えるのだ!!!」
シュバイエはぐいぐいと僕の顔に迫ってくる。
ここは正直に答えた方がいいのだろうか、これはこれで悩ましい。
だが、答えないとがみがみ言われるのでここは正直に答えよう。
「分かったから、全部話すからちょっと離れてくれない?」
「わかった」
僕の返答を聞いたシュバイエは離れた後、僕の隣に座った。
そして、僕がどんな力を得て、この村を作ったまでのいきさつをすべて話した。
「・・・というわけで、僕はこの村の村長になったというわけだが、これで十分か?」
「うむ。問題ない。これで父上に報告ができるぞ!」
なんだか上から目線気味な態度に少し癇に障った。
だが、嬉しそうな表情をしているシュバイエを見てなんだかかわいらしく思った。
可愛いと思ったのは気のせいだろうか?
いや、今はこの感情を捨てておこう。
何より質問を答えたのだから今度は僕が質問をする番だ。
「ねぇ〜。シュバイエさん」
「ん?なんだ?」
「君の質問に答えたのだから、次は僕が質問をしてもいいよね?」
「な!?」
想定外のことに嬉しそうな表情から一変してシュバイエは恥ずかしそうな顔になった。
「なっな、なにを言うか思ったら私に質問だと!?ひ、卑怯だぞ!」
「卑怯?いきなりこの村の周りを徘徊し、僕を誘拐しようとした人に言われる筋合いはないけどなぁ~~~」
「ぐぬぬ・・・」
シュバイエは苦虫を噛み潰したような表情した。
しばらくして観念したのか動揺していたシュバイエ少し落ち着くとシュバイエは僕に話しかけた。
「わかったよ。さぁ、私に何を聞きたいんだ?」
「うーんとね。じゃあ、シュバイエのの父親ってどんなひとなの?」
「なっ!?ちっ父上についてか?」
僕はブランチ鉄鋼国の皇帝であるシュバイエの父親について聞いてみたのだが、さすがにプライバシーのこともあり、話さないだろうと思っていたら、シュバイエは自分の父親について話し始めた。
「父上は私達のことを常に考え優しくしてくれる世界一の父親だ。私が幼い頃、他の兄弟に比べて何かしらの個性がないことに悩んでいたが、ある時、私には暗殺の才能があると分かり、そこから暗殺の訓練をして、私は父上のことを邪魔する輩を潰すため暗殺者になった。暗殺の任務を終え報告した時はよく褒めてくれたものだ。今は国の情勢で大変だが、いずれこの国を世界一にするのが私の夢なんだ」
「・・・」
彼女の口から語られた父親について僕は悩んでしまった。
彼女の父親は戦争を起こすきっかけを作った人物なのだが、彼女にとっては大事な父親なのだろう。
しかし、彼女の父親はエストラル王国敵対国の皇帝であり、第一騎士団長のアーノッドにとっては婚約者が人質に取られている重要人物だ。
だが、彼女にとっては立派な父親に見えているのだろう。
僕は何て答えればいいのだろうか?
ここで悩んでいる場合ではない。
ここは刺激しないようにしつつ、シンプルな答えておこう。
「優しいお父さんだね」
「そうだろ!いつも私たちのことを見てくれているんだ」
僕のそっけない返事を聞いたシュバイエは自慢げに態度をとる。
「ところでシュバイエは故郷に帰ったらどうするんだ?」
「ん?帰ったら、父上と一緒に風呂に入るつもりだが」
「はぁーっ・・・」
帰ったら親と一緒に入浴するのかい!
シュバイエはただのファザコンなのか、それとも皇帝の方が変態なのか、何をツッコめばいいのか正直めんどくさい。
「わかった。じゃあ先に上がるから」
「待ってくれ。私も一緒に上がるから」
僕とシュバイエは一緒に風呂から上がり、脱衣所で体を拭いた。
「ところで君のお姉さんも一緒に迎えにはこないの?」
「多分来ないな」
「どうして?」
「最近、姉上は国のことで多忙になっていて。兄上が代わりに来るだろう」
「兄上?確かお姉さんがいるのは知っているけど、兄さんがいるんだ」
「あぁ、私には二つ上の兄上がいてな。フィチャーチャー一家の長男であり、次期皇帝としている方だ」
「へぇー、そうなんだ」
へぇー、兄さんがいるのか。
以前、エリールからいとこのメイリスと今いる妹のシュバイエのことは聞いていたが、二人には兄さんがいるのか。
しかも、次期皇帝候補とは・・・、明日、会うとなると緊張するな。
おっと、そんなことを考えている場合ではない。
明日のことは明日になってから考えよう。
今更だが、この場にいるのは裸になっている僕とシュバイエだけだ。
少々気まずいので僕はシュバイエより早く着替えたのち、すぐに自室へと戻った。
自室へ戻ってすぐにベッドへとダイブしうずくまった。
今日は怒涛の一日にだったな。
村の侵入者の対処をし、一旦様子見しようとしたら、明日シュバイエの引き取りに来るというてんやわんやな日になったな。
せっかく大きな山場となる邪神竜の戦いを終えようやく村らしさになったところなのに、今回のブランチ鉄鋼国皇帝の訪問は第二の山場になる気がしそうだ。
果たして、問題が起きることなく引き渡しが終えることができるか心配だ。
ふと心配事を考えていたら、自室のドアからノックする音が聞こえてきた。
ん?こんな時間に何の用だ?
何か緊急な事なのかと思ったので、僕はこの部屋を通すことにした。
「入っていいよ」
僕の返事でドアがギィーっと音を立てて入ってきたのはなんと、服は着ているが、少しはだけているシュバイエだった。
「うわぁ!!何で君がここに!?」
「何って、お前と一緒に寝るに決まっているだろ?」
「なんでそんなことになるの!!」
さっきから何を言っているのか訳が分からない。
なぜ僕と一緒に寝るんだ?
「はっ!まさかこの場で僕を誘拐する気か!」
「なぜそうなる。私はただ貴様と一緒に寝るだけだぞ?」
「じゃあ。なんで僕と一緒に寝るの?君の部屋は用意しているのだけど・・・。もしかして一人だと寂しいとか」
「そんなわけがないだろう!」
「だったらなんで?」
「なんでって、奴隷である私と奴隷契約をしている貴様と一緒に寝るんじゃないのか?」
「は?」
何を言っているんだコイツは!
明らかに誰かに吹聴して偏った常識を持っているようだ。
「その偏った常識は誰から聞いたんだ?」
「だれって父上に決まっているじゃないか!」
父上って、あの皇帝か!
自分の娘に何の教育しているんだ!
本当に世界征服をねらう皇帝の娘なのか疑問に思うところだ。
彼女の話に何て返せばいいのか考えていたら、何も聞いていないのにシュバイエは話し続けた。
「父上は奴隷商から買った奴隷の女を自室に連れ込んで、一緒に寝ているところを私たちに見せてくれてたものだな」
「はぁ~~~」
結局、親が親なら子供も子供だ。
漫画に出てくる一般常識が通じない人間が目の前にいるなんて、それを見ている僕は完全にあきれてため息が出てしまった。
ただ、そのまま放って置くにもいかないので、ここはシュバイエの言うとおりにしておこう。
「分かったよ。今日は一緒に寝ようか」
「本当か!?」
「あー、また会えないかもしれないから、今晩だけたぞ」
「分かった。それじゃあ寝るか」
僕が寝ている隣でシュバイエが横になった。
今日は忙しい一日になった。
村に侵入者がやってきたり、その侵入者がエリールの知り合いでブランチ鉄鋼国の皇帝の娘だったり、そして何よりも明日はその娘を引き取りに皇帝自ら迎えに来るという嘘のようで本当のような出来事がやってくる。
果たして、この始まりの村はブランチ鉄鋼国とエストラル王国の戦場になることなく穏便に終えることができるのだろうか。




