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物語の都合でざまぁ&処刑されるクズ王子、記憶を取り戻して転生し、魔法学校からやりなおす!  作者: 江本マシメサ
第四章 行動――味方を探す

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クズ王子は、婚約者から呼び出しを受ける

 久しぶりに、アウグスタから呼び出しを受ける。場所は、サロンカフェ〝クライノート〟だった。なんでも、貸し切りで予約をしているらしい。

 いったいなんの用事なのか。

 以前までは、アウグスタにしょっちゅう呼び出しを受け、日常生活における王族らしからぬ行動について注意されていた。

 ここ最近は、真面目に暮らしているし、授業も真面目に受けている。物申されるような挙動はしていないはずだ。


 放課後――カイを引き連れ、ドキドキしながらサロンカフェ〝クライノート〟に向かった。


「カイ、アウグスタはなんの用件だと思う?」

「想像もできません。ただ、これまでのようにアウグスタ様がクリストハルト殿下にご意見する、という目的ではないような気がします。何か、相談されたいのでは?」

「アウグスタが私に相談? ありえないな……」


 ただ、私とアウグスタの関係もこれまでと変わりつつある。もしかしたら、頼りに思うようになっているのかもしれない。


「そうか。アウグスタがついに、私に相談事を持ちかけるようになったか!」

「あの、あくまでも想像ですので」

「ああ、わかっている」


 〝アーベント・ガルデン〟のゲートを通り過ぎると、ほとんどの店が閉まっていた。人の気配はまったく感じない。


「まさか、サロンカフェ〝クライノート〟だけではなく、〝アーベント・ガルデン〟そのものを貸し切り状態にしているのか?」

「アウグスタ様でしたら、それも可能ですね」


 何を隠そう、この〝アーベント・ガルデン〟を運営しているのは、アウグスタの父ヴュルテンベルク公爵だ。きっと、アウグスタは父親にお願いし、ここに誰も入れないようにしたのだろう。


「いや、何を話すんだ!?」


 だんだんと怖くなってきた。ここまでするということは、アウグスタの話したいことは世間話ではないし、ちょっとした相談事ではないだろう。


「怖い、怖すぎる……!」

「クリストハルト殿下、お気を確かに」

「もしも気絶したら、目覚めるまでその場に放っておいてくれ」

「いえ、保健室に運ばせていただきます」

「それが恥ずかしいと暗に言ったのだ」


 なんて、カイと話をしているうちにサロンカフェ〝クライノート〟に辿り着いてしまった。ドキドキしながら、中へと入る。

 店の中心にある席にアウグスタは座っていた。私に気づくと、美しい跪礼きれいを見せる。


「アウグスタ、待たせたな」

「いいえ、わたくしも、今参ったところです」


 従業員の姿はない。ここで働く者すら、遠ざけたようだ。

 テーブルの上には魔石ポットがあり、アウグスタが手ずから紅茶を淹れてくれた。

 ただ座って待つだけなのに、すさまじい緊張感に襲われている。茶などどうでもいいので、早く本題へ移ってほしい。


 アウグスタは香り高い茶を私へ差し出す。


「お口に合えばよろしいのですが」

「ああ、いただこう」


 そういえば、彼女がこうして淹れてくれた茶を飲むのは初めてだった。通常、上級貴族の娘は茶なんか淹れない。方法すら知らないだろう。

 茶を淹れるのは、メイドの仕事だから。

 一口飲んでみたら、豊かな芳香とまろやかな味わいが口の中に広がった。


「驚いた。お前に茶を淹れる才能があるとは」

「休日は、王妃様のもとでメイドをしておりましたので」

「メイド? 侍女ではなく?」

「ええ」


 メイドというのは、下働きである。メイドの中にもランクがあり、アウグスタがしていたのは貴婦人に仕えるレディースメイドだったという。

 ちなみに侍女は、女主人の手足となって動く者。服を着せたり、風呂で身体を洗ったりと、女主人が自分でするようなことを行う者達を侍女と呼ぶのだ。メイドと混同されがちだが、大きな違いがある。

 だがこれは上級貴族でもほんの一部の決まりごとで、メイドと侍女を兼任している家も多いという。


「視野を広げるために、未来の王妃となるものはメイドとして労働を行うのです。そのさいに、お茶の淹れ方も習いましたの」

「そうだったのか。知らぬ間に、苦労をしていたのだな」

「これしきのこと、苦労だなんて思っておりません」


 アウグスタは珍しく、顔を俯かせる。いったい何があったのか。とても、私のほうから聞ける雰囲気ではなかった。


「それも、無駄になってしまったのですが」

「どういうことだ?」


 アウグスタは顔を上げ、今にも泣きそうな顔で私に告げる。


「王太子殿下との婚約を、破棄いたしました」

「は?」


 シーンと静まり返る。アウグスタはポロポロと、涙を零した。


「いや、なぜ勝手に婚約を破棄した!?」

「もともと、婚約を解消する許可は、国王陛下とお父様の双方から出ておりました。わたくしが望んだら、すぐに受け入れてくださいました」

「いや、その許可は――フェリクスが取ったものだろうが」

「ええ」


 いったいなぜ、いきなり婚約破棄をしてくれたのか。気になるものの、辛そうに涙するアウグスタへ追及なんかできない。

 ハンカチを差し出すと、アウグスタは受け取ってくれた。

 それから、彼女が落ち着くまでしばし待つ。

 十分後、アウグスタは婚約破棄した理由を話してくれた。

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