第9話 魂と引き換えに
「助けてください」
まだ少年ぼさを残している男。
たぶん、16歳くらいだろう。
身なりからすると冒険者だ。
ただ、革鎧はあちこち剥がれていてボロボロで、頭や手足は包帯だらけだ。
「どうした?」
「助けてください。仲間がゴブリンにつかまってしまって」
ゴブリン討伐に失敗したのか。
それだとまぁ、D級冒険者くらいか。
「そうか。残念だったな。仲間のことはあきらめろ」
「そんな・・・諦められません」
真っすぐな目をして俺を見る。
「きっと名のある剣士の方だとお見受けしました。助力をお願いします」
「捕まったのは、お前の女か」
必死さをみていて、思ったことを聞いてみた。
「女。。。大切な女性です。村から一緒に出て冒険者になった仲間なんです」
「ほう。まだ、やっていない女か。なぜ、やってもいない女のために、そこまで必死になる?」
仲間と言う言葉に過剰反応している俺がいる。
「村を出るとき、決めたんです。この人を何をしても守るって」
子供の頃の決意という奴か。
それがいかに意味がなかったかを知って、つまらない大人になるってな。
「それなら、その女を助けるためには何でもするってことか?」
「もちろんです。僕にできることなら、なんでも言ってください」
「命も掛けられるよな」
「当然です」
「じゅあ、魂を懸けるっていうのはどうだ。お前の魂を差し出せるか?」
どういう意味なのか、理解するのに時間がかかる。
そして、ゆっくりと言葉を出す。
「もしかして、あなたは悪魔ですか?」
「似たようなものだ」
「魂を差し出せば、彼女を助けてくれるんですか?」
「ああ、助けよう」
「それならば、僕の魂でよけば自由にしてください」
一直線だな。
こういう奴はどうせ碌な死に方しないな。
残念ながら、悪魔ではないから魂をどうのこうのするなんてことはできやしない。
だが、俺と一緒で悪魔に魂を売る覚悟は認めてやろう。
「わかった。その女、助けてやろう」
「ありがとうございます」
本気で嬉しそうだ。
別にそんな顔を見たい訳ではない。
「ただし、ゴブリンに女が捕まるってどういうことか分かるか」
しぱらく考えている風でいたが、苦痛を感じた顔に変わる。
「そういうことだ。本当にその女は助けて欲しいと思っているのか?」
「それでも、僕が助けると決めたんです」
「どんな状態になっているか、それは知らん。だが、仮に遺体になっていても連れてこよう」
「ありがとうございます」
魂と引き換えっていうと、なんでもしてくれそう。この男。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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