カナリアと夜
カナリアの言葉を聞いてアルヴィスはゆっくりと目を伏せた。何も言わずただ周りの音を聞く。
罪とは嫌がられるものだと思っていた。誰もが押し付け合い自分から退けてしまいたいものだと記憶していた。
『主…』
ベルグの声を聞く。カナリアもまたアルヴィスのように口を閉じていた。
奴隷狩り、鳥になる、けれど夜の眠っているあいだはその姿が元に戻る。
薄々勘づいていたと言えばそうだが、口に出すことを憚る位には曖昧だった。だからこそアルヴィスが精霊王だと口にする必要があったのだ。
すっと、
手袋を外す。
人と触れ合うことができるよう。人に精霊王だと露見せぬ様。ずっとはめ続けたそれを外すと、精霊王である彼は普通の人とは普通の生き物とは触れ合えない。
けれど例外がある。
精霊王との契約を魂に刻んでいる契約者。彼らは精霊王に触れることが出来る。
ゆっくりと瞼を上げて、手袋を外した素手でカナリアの頭を優しく撫でる。
『アルヴィス様?』
「うん、やっぱり」
触れられる。その事実だけで、アルヴィスに一つの答えが確定した。
「カナリア、君を人に戻す術は僕にはない、けれど君の契約した精霊王に会いに行けばその呪いは解けると思うよ」
『精霊王と契約…?』
彼女は月夜に人の姿に戻る。月夜に力が増す精霊王なんて一柱しかいない。アルヴィスも出会ったことないが。
シュバルツの対の存在とされる精霊王は。
「君は闇精霊王の契約者だね」
『……え』
闇精霊王は夜と闇を好む。だからこそ夜に力が強くなるためカナリアは夜の呪いが薄まる意識のない状態でのみ元の姿に戻る。逆に日中は光精霊王の力が強くなるため元の姿に戻ることは出来ない。
カナリアが元の姿にもどる術、それは闇精霊王と再会を果たすこと、それ以外アルヴィスには浮かばなかった。
「精霊王に触れれるのは契約者のみ、…だからこそ僕は君が契約者だという証になると思った、君に僕の事を教えないとと思ったんだ」
『アルヴィス様…』
「精霊王と会うことが本当にいい事なのか分からない、君を迎えにこない闇精霊王がどんな考えなのかも分からない…でも」
「でも君は元に戻りたいなら会わなければならない、闇精霊王がどこにいるかは分からないけど、一緒に探しに行こう」
アルヴィスはそう言ってゆっくりと微笑む。カナリアはベルグの背中から飛び立ちアルヴィスの肩に止まる。
『ありがとう…ありがとうアルヴィス様』
こうしてカナリアがアルヴィスやベルグと旅をすることが決まった。行方の知れない闇精霊王。
アルヴィスは薄々気付いていた。
全ての精霊王に会わねばならないことを。
まるで何かに運命付られたかのように。彼はゆっくりと精霊樹を見上げる。
出来るなら平和な世界になって欲しいと。
心の底から思っていた。




