◆その罪は永遠
精霊王様たちは沢山働きました。
神様から与えられた世界を守るというお仕事です。
勤勉に、思慮深く、時には怠惰に。
彼らは世界を作る。
彼らは世界を守る。
軈て世界が育ってくると精霊王の仕事はぐんと増えてしまいました。精霊王の手が届かぬところは生き物が生まれない。神様がそれではダメだと精霊樹を精霊王達に託し、彼らは大切に精霊樹を育てました。
やがてそこから精霊達が生まれいでて、世界は更なる成長へと向かい、彩りました。
精霊王が亡くなっても、次の精霊王が産まれるので世界は今も成長を続けられていました。
『なんで』
けれども水の精霊王様だけ十数年前から生まれてこなくなってしまったのです。
川はかれ、井戸も枯れ、土地が死に、そこに住む生き物も死んでいく。
精霊王はかけてはならぬのです。彼らは世界自身であるから。
一柱かけるだけで世界は終わりへと向かってしまう。水がなければどうやって生きればいいのでしょう。
水精霊王様は、まだ私達を許してくれないのでしょうか。
あの優しい水精霊王様は
もう世界を愛せなくなってしまったのでしょうか。
『せいれいおう…さま』
唯一人に寄り添って来た彼はもう二度と産まれないのでしょうか。
寝物語として聞かされた話。
世界の成り立ちと、水精霊王様がまだ世界を許せてないから産まれてこないのかもしれないと絶望に近いものを聞かされた。
お母さんはでもねと最後に必ず付け加える。
“水精霊王様は、きっと許すだとか許さないだとか考えていないとおもうのよ”
“きっと疲れてしまったのね、ずっと働きどおしだったもの ”
“彼らが頑張った分、今度は生かされている私たちが我慢する番なのよカナリア”
“だから”
“かの方々を恨んではダメよ”
「僕がもう少し早く来れたなら」
この人がもっと早く産まれてくれれば。
お母さんは
死ななかったんだろう。
この人がもっと早く世界に水を溢れさせてくれれば。
そう考えられたら楽なんだろう。
信じられないという気持ちが、浮かぶ。でも、この人は悪くない。だって。
私が急かしたんだ。
『悪くないよ、アルヴィス…様は。だって、私がもっと待っていたら良かった話なんだもの』
もう少し我慢出来ていたら。テルナマリンに水精霊王が来たんだからこっちに来てくれるって可能性の方が高かったのに。
それでも少しでも喜びに触れたくてお母さんを急かして旅に出たのは私だ。
『私が、お母さんを殺したの、その罪はいくら恩人のアルヴィス様にだってあげられない!』
私が背負わなきゃいけない。私がずっと後悔し続けなければいけない。私を守るために死んだお母さんの為に。守られた私がそれを覚え続けなきゃいけない。
だから、私のせいなの。
私が殺したのよお母さんを。




