真実の向こう側2
私は今でもラウラスのことは好きだと思うけど、離れる選択をして正解だったと思っているし、このままメリディエル家に嫁ぐことが次の一歩にはならないんだろうか。
『シュリアがそれで幸せだと思えるなら構わない』
わからない。
今はただ、ラウラスが幸せでいてくれればいいと、そう思うだけで。
それ以上は分からない。私の幸せなんて。
少なくとも、メリディエル家に嫁ぐことが幸せだとは思っていない。
いったいどうすることが、幸せになるための一歩になるのだろう……。
ずっとラウラスを好きだと思ってるからいけないの? この想い自体を手放さないと、次の一歩はないということなのかな。
でも、そんなの、私は──。
「あの……。シュリアさま?」
「え? なに?」
気づけば、イデルは読んでいた本を閉じ、じっと私を見ていた。
「シュリアさまはミリッシュがトルナード男爵夫妻の件の犯人だとお考えなのですよね?」
「え、ええ……まあ、勘違いであってほしいとは思っているけど。ミリが犯人じゃないかと思っているわ」
溜息の理由を訊かれるわけじゃないと分かって、すこしホッとした。
「だって、それ以外にイデルを消そうとする理由なんてないでしょ。自分の正体を知っている人間がいたら不都合だったと考えるのは普通じゃない? 実際、あのあとミリは行方をくらませているけど、イデルがミリのことを喋れば、すぐに怪しい人物として手配されるだろうし、それがレールティ家に出入りしている仕立て屋だって分かれば、すぐに足がついてしまうわ。お兄さまの情報網と追跡能力も大概だけど、本気になったおばあさまも大概よ。知ってるでしょ」
イデルは大真面目な顔で深く頷いた。
「ええ、それはもう重々。そういえば、あの時点ではシュリアさまの花嫁衣装もまだミリッシュの手元にあったはずですし。そのまま消息を絶っていたら、アナファさまが怒り狂って草の根分けてでもミリッシュを捜し出していたでしょうね」
「そう。だから、よけいにレールティ家の人間に不審に思われるようなことがあってはいけなかったのよ。まだ何も知らない顔をしてレールティ家と関わる必要があったから、イデルは邪魔な存在になってしまったのよ」
「ですが、仮にミリッシュが一連の事件の犯人だったとして、彼女はいったい何のためにトルナード男爵夫妻を狙ったんでしょう?」
「それなのよねえ。ミリの秘密の片恋の相手がサエウム伯爵だったとか、そういうのしか思いつかないのよね」
相手が死んでいたら、それはもう絶対に叶わない片恋だし。
「いや、さすがにそれはちょっと、ないんじゃないでしょうか。ミリッシュの想い人って、たしか同い年なのでしょう? サエウム伯爵はそこまで若くありませんもの」
「そうなのよね。十年前といえば、ミリは十七歳のはずだし、話が繋がらなくなるのよね」
でも、トルナード男爵夫妻の事件に羽舞草が絡んでいることを考えると、動機はやっぱりサエウム伯爵の死に関係しているとしか思えない。
サエウム伯爵に想いを寄せていたとかじゃないなら、他に復讐を考えるような要素って……。
「十七歳といえば、当時サエウム伯爵の城に火を放ったとして捕まって処刑された人が、たしかそんな歳でしたけど」
「え……」
上体を起こした拍子に肘がすぐそばに積んであった本にあたり、バサバサと本の山が崩れ落ちた。




