英雄の凱旋
午後2時半、ファナとアディスが、帰還した。
今日も全て売り切ったとのことである。
二人は速やかに、皿洗いを手伝ってくれた。
午後3時の鐘が鳴った。
閉店の刻限である。
お客がどんどんはけていき、最後の1人まで帰ったら、休憩時間だ。
ジュレとプリムは、店内の清掃、リーズヘッグは金勘定、ファナとアディスは、皿洗いだ。
俺とアイロスは、昼食の仕込みである。
昼食の献立は、汁物料理がコンソメスープ。
肉料理がトマトのごときイノッサの煮込みハンバーグ。
付け合わせが、ジャガイモのごときフォンディと、アスパラガスのごときジェランの、醤油のごときユーカン炒めと、ホウレンソウのごときテーペとベーコンの乳脂炒め。
菓子が、チョコまんである。
俺とアイロスは、分担して料理を作っていく。
アイロスは、俺が気まぐれに変更する付け合わせを、文句も言わずに作ってくれる。
俺は安心して仕事を任せることが出来た。
料理が仕上がったら、カウンターに並べていく。
配膳はジュレ、お茶の準備はプリムがしてくれた。
「お待たせしたね。昼食の献立は、汁物料理がコンソメスープ。肉料理がイノッサの煮込みハンバーグ。付け合わせが、フォンディとジェランのユーカン炒めと、テーペとベーコンの乳脂炒め。輪切りにしたフランスパンを添えて、菓子は、チョコまんを用意しているよ。さぁ、召し上がれ」
俺達は突き匙を取り上げ、一斉に食べ始めた。
煮込みハンバーグは、焼いたハンバーグとも違う、一風変わった美味しさがある。
付け合わせも、緑が美しく、主菜を彩っている。
今日はトマトのごときイノッサを、ハンバーグで使っているので、ベストな選択だった事だろう。
コンソメスープは罪のない味わいだ。
「毎日キョウスケの料理を食べてると、舌が肥えちゃってさぁ。たまに塩辛い軽食を食べたりすると、塩辛くて口に合わないんだよね。昔は美味しいと思ってた筈なのに、不思議だよね」
「ぼ、僕は乳脂を使っていない料理というものが、こんなに美味しいと思っていなかったもので……今は乳脂の料理も口に合わないかもしれません」
「俺もそうだな。塩辛いのが普通だった頃には、もう戻れんな」
プリムとジュレとリーズヘッグがそう言った。
「あたしの家は、そこまで塩辛い料理ってわけじゃなかったけど、キョウスケと比べちゃうと話にならないね。プリムの気持ち、わかるなぁ」
「俺も今はキョウスケの料理が一番口に合いますね。休日の食事が塩辛くていけません」
「俺も似たようなものだ。お前の料理はクセになるからな」
ファナ、アディス、アイロスがそう言った。
「俺の故郷の味が受け入れられて、とても嬉しいよ。塩辛い料理も、好きな人はいるんだろうけどね。俺にとっては、塩分の過剰摂取かな」
あれだけ塩辛いと、俺の料理なんて薄味に過ぎるだろう。
まあ、食の好みは人それぞれだ。
俺は俺の美味いと思う料理を作っていく。
みんなの皿が空いた頃合いで、菓子を配膳した。
チョコまんは、初の御披露目だ。
ふわふわの生地の中に、甘いチョコレートの餡が入っている。
「以前に、あんまんを出した事があったけれど、今日はヨーデルの餡を入れてみたよ。お味は如何かな?」
「あっという間に食べちゃった。すっごく美味しい!」
「と、とても美味しいです」
「うむ。美味いが1個じゃ足りないと騒ぐ客がいそうだな」
「そうだね。これは持ち帰りも出来るから、多めに仕込んでおくよ」
プリム、ジュレ、リーズヘッグが感想を述べてくれた。
「すっごく美味しい! もし閉店後に余るようなら、あたしが引き取るわ!」
「とても美味しいです」
「美味い。蒸し饅頭は餡が命だ。この餡は実に濃厚で後を引く」
ファナ、アディス、アイロスの順に感想を述べてくれた。
俺は満足して、ゆっくりチョコまんを味わった。
食後は、料理の仕込みである。
俺とアイロスは、昼の仕込み。
ファナとアディスは、カルボナーラの仕込みだ。
俺達は調理に没頭して、仕事をこなしていく。
午後4時半、ファナとアディスが、出発した。
仕込みもあとひと息である。
俺達は集中して、料理を仕上げるのだった。
午後5時の鐘が鳴った。
開店の刻限である。
並んでいたお客が、怒濤のように押し寄せてくる。
プリムが順番に案内して、注文を取っていく。
ジュレは、お茶の配膳だ。
「1番から6番まで、1つずつね!」
「あいよ!」
「1番テーブルに6つ、お願いします!」
「あいよ!」
俺は煮込みハンバーグを木皿に盛り付ける。
今日の汁物料理は、コンソメスープ。
肉料理が、トマトのごときイノッサの煮込みハンバーグ。
付け合わせが、ジャガイモのごときフォンディと、アスパラガスのごときジェランの、醤油のごときユーカン炒めと、ホウレンソウのごときテーペとベーコンの乳脂炒めだ。
付け合わせの盛り付けと、汁物料理の取り分けは、アイロスの担当である。
俺は仕上がった日替わりを、カウンターに並べていく。
「1番から6番、上がったよ!」
「は、はい!」
「1番テーブルの6つ、上がったよ!」
「はーいっ!」
俺は木皿に、煮込みハンバーグを盛り付ける。
次々に注文が入ってくる。
「7番から12番、上がったよ!」
「はーいっ!」
「2番テーブル、5つ、上がったよ!」
「は、はい!」
店内は満員御礼、凄い熱気だ。
常連さんが、プリムに声をかける。
「姉ちゃん、歌を歌ってくれよ。『英雄の凱旋』は、歌えるかい?」
「いいよ! じゃあちょっと、1曲歌わせてね! 曲は『英雄の凱旋』。聞いて下さい」
そして、プリムの歌に聴き惚れながら、俺は木皿に、煮込みハンバーグを盛り付けた。
出来上がった日替わりを、カウンターに並べていく。
そして歌が終わり、拍手が沸き起こる。
「ご清聴ありがとうございました! 今料理を運ぶから、ちょっと待ってね!」
プリムが頭を下げるのを待って、俺は声を上げた。
「3番テーブルに4つ、上がったよ!」
「は、はい!」
「4番テーブルの5つ、上がったよ!」
「はーいっ!」
そろそろ菓子を出す頃合いだ。
俺はチョコまんを、木皿に盛り付けるのだった。




