伝言屋に依頼
俺とアイロスは晩餐の準備である。
タマネギのごときカペラと、ナスのごときビトーと、小松菜のごときケリパを、味噌のごときトーテムで、兎肉とともに炒める。
焼きあがった焼肉を木皿に盛り付け、カウンターに並べていく。
配膳はジュレ、お茶の準備はプリムがしてくれた。
「お待たせしたね。晩餐の献立は、汁物料理はイノッサの洋風スープに、肉料理がトーテムのタレで焼いた焼肉。付け合わせはタピとディラーのレィモン乳脂炒めと、キノコ2種類とセルルのナムル。輪切りのフランスパンを添えて、菓子は、ジュピターのシフォンケーキを用意しているよ。さぁ、召し上がれ」
俺達は突き匙を取り上げて、一斉に食べ始めた。
味噌ダレの焼肉の塩気が疲れた身体に染み渡る。
付け合わせのパプリカのごときディラーが美味しい。
俺はフランスパンを千切って、口に放り入れた。
「あ、さっき来た騎士のローガンが、思わぬ話を持ってきてくれたよ。なんと通行証を発行してくれるんだってさ。それで《六角亭》の予約を取ってくれるそうなんだけど、全員で行くよね? 10人まで連れて行って貰えるそうだよ」
「俺はカトリーヌを連れて行きたいな。会計は全て俺が持つ。遠慮はいらんぞ」
「リーズヘッグとカトリーヌ、あたしとジュレ、ファナとアディス、キョウスケとリリア、アイロスで9人だね。せっかくだから、あと一人連れて行ったら?」
「ぼ、僕も連れて行って貰えるんですか? 《六角亭》は、名前を知っています。有名なお店です」
リーズヘッグ、プリム、ジュレがそう言って、残りの3人の顔を見た。
「せっかくの機会ですから、俺も行きたいですね。きっとキョウスケは驚きますよ」
「嬉しい……。親に自慢しなくっちゃ! じゃあ、あと1人はリエルで良いんじゃない? アイロスはどう思う?」
「俺は多分料理に夢中になってしまうぞ。それでも良いなら、連れて行くが良い」
アディス、ファナ、アイロスの順にそう言った。
「じゃあ、それで10人だね。日付は、来月2月7日でどうだろう? 都合の悪い人はいるかな?」
「リエルには明日の朝に話しておくわ! 多分大丈夫だけど、返事は明日まで待ってね!」
「了解したよ。じゃあ、よろしくね、ファナ」
ファナは浮かれきった心地で頷いた。
俺はみんなの皿が空いた頃合いで、菓子を出した。
今日の菓子は紅茶のごときジュピターのシフォンケーキである。
俺は甘い菓子を堪能しながら、ローガンがなかなかだという《六角亭》の菓子に心を飛ばしていた。
俺もリリアの都合を確認しないといけない。
「リーズヘッグもカトリーヌの用事を確認しないといけないだろう? いつ連絡を取るんだい?」
「身体は空かんから、伝言屋を使うつもりだ。お前さんも、リリアの泊まっとる宿屋はわかるか? 仕入れの際に、伝言屋に一緒に頼んできてやろう」
「そんな仕事があるんだね。リリアは《七面鳥の卵》っていう宿屋に泊まっているはずだね。どうか宜しくお願いするよ」
「うむ。《七面鳥の卵》だな。承った。10時頃に伝言を届けるように、手配しておく」
リーズヘッグは頼もしく請け負ってくれた。
菓子を食べ終わり、お茶を飲んで解散する。
今日は良い夢が見れそうだ。
俺は後片付けをしながら、充足した心地に包まれるのであった。
1月10日。
午前6時に集合し、おのおの仕事に取りかかる。
俺とアイロスは朝食の仕込み。
ファナとアディスは、イチゴ大福のごときガル大福の仕込みである。
俺達は料理に没頭し、作業を進めた。
午前8時の鐘が鳴る。
従業員は顔を揃え、着席していく。
料理の配膳はジュレ、お茶の準備はプリムがしてくれた。
「お待たせしたね。朝食の献立は、汁物料理はコンソメスープと、デミグラスソースの兎肉のソテーを挟んだサンドイッチだよ。さぁ、召し上がれ」
俺達は、一斉に食べ始めた。
デミグラスソースはハンバーグの方が合う印象だが、なかなか悪くない。
コンソメスープも過不足のない味わいだ。
「キョウスケ、伝言屋にはしっかり頼んできたからな。返事も早急に貰えるように言っておいた」
「ありがとう、リーズヘッグ。お代は後で払うからね。ファナはリエルに会えたかな?」
「もっちろんよ! リエルはアイロスと一緒に《六角亭》へ行けるって聞いただけで、感激しちゃってさー! 勿論2月7日は空いてるそうだよ!」
「そっか。良かったね。一応騎士のローガンが、いつ来るかわからないけど、10名ってことで返答するからね」
「うん! 宜しくねー!」
ファナは元気いっぱいに、にかっと笑った。
食事が終わったら、仕込みの仕事だ。
俺とアイロスは、昼の仕込み。
ファナとアディスは、カルボナーラの仕込みだ。
俺達は料理に没頭し、料理を作り上げるのだった。
午前10時半、ファナとアディスは出発していった。
仕込みもあとひと息である。
俺はフランスパンに切り込みを入れ、乳脂を塗っていた。
アイロスはクッキーの焼き上げである。
午前11時の鐘が鳴り響く。
開店の刻限だ。
並んでいたお客が、勢いよくなだれ込んでくる。
プリムが順番に案内し、注文を取る。
ジュレは、お茶の配膳だ。
「1番テーブルに6つと、1番から6番まで1つずつねー!」
「あいよ!」
「7番から12番に1つずつです!」
「あいよ!」
俺は2つの鉄鍋を使い、兎肉のソテーを仕上げていく。
焼きあがったら、デミグラスソースを絡めて、食べやすい大きさに切る。
フランスパンに兎肉のソテーを挟んで、完成だ。
昼は毎日同じ付け合わせで、マッシュ・ポテトのごときマッシュ・フォンディと、カボチャのごときエリマを練り込んだクッキーである。
汁物料理は、コンソメスープ。
付け合わせの盛り付けと、汁物料理の取り分けは、アイロスが担当してくれた。
「1番テーブルに6つと、1番から6番まで、上がったよ!」
「はーいっ!」
俺は鉄鍋に肉を投じる。
じゅうじゅうと焼けていく兎肉が、とても良い香りだ。
「兄ちゃん、こりゃあ美味いサンドイッチだな! 新作かい?」
「は、はい。デミグラスソースを使っております」
「俺は毎日通ってるけど、毎日味が違うもんなぁ。本当に美味いよ。料理番の兄ちゃんにもよろしく伝えておいてくれよ」
「は、はい。ありがとうございます」
常連さんとジュレの会話を聞きながら、俺は新たな肉を投じるのだった。




