54.学歴差別殺人事件
ガイシャは、大迫淳之介。新進の陶芸家、としてデビューする筈だった、と発見者の育子が言っている。ガイシャは、育子が買物に行っている間に強盗に入られ、殺害された。凶器は刃物だが、慰留は無く、特定も出来ていない。井関さん。
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『陶芸家殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、大迫淳之介。新進の陶芸家、としてデビューする筈だった、と発見者の育子が言っている。ガイシャは、育子が買物に行っている間に強盗に入られ、殺害された。凶器は刃物だが、慰留は無く、特定も出来ていない。井関さん。」
「頸動脈を切られて、失血死。奥さんが帰宅した時は、血の海だった。可哀想にな。新婚だったらしい。」
「今、村松が詳しい事情を聞いている。適任だな。辻さん、蒔さん、京都まで出張して下さい。夫妻は、『京都〇統工芸大学校』出身で、卒業して転居したばかりです。」
「開光課長。強盗じゃないんですか?」
「財布の現金・クレジットカードは抜かれている。だが、通帳・印鑑・キャッシュカードは探せば見つかる場所にあった。暗証番号はガイシャの誕生日だ。取り敢えず、強盗なら持ち去る。運転免許証で誕生日は明白だ。運転免許証は財布の中にあった。」
「明らかに、偽装。詰まり、動機は怨恨、か。」と、大曲先輩は言った。
そこに、つけまつげをベタネタにした村松が入ってきた。
「引っ越して一週間だそうです。小学校から同級生で、一緒に陶芸学びに京都に行ってたそうです。家捜しの了解は取りました。」
「よくやった、村松。良い子だ。大曲、PCを探せ。開梱していない荷物も開梱しろ。」
「了解。眩目、行くぞ。」
午後2時。自動車の中。
「先輩。大学、じゃないんですか?」
「ああ、よく混同されるな、『大学』は、『高校』の上の学び舎だが、文科省所管だ。大して、『大学校』は、名前がややこしいが、文科省以外の省庁所管の特殊な公立専門学校だ。例えば、『防衛大学校』は『防衛省』所管の『大学校』であって、大学じゃない。ガイシャ達が通った『京都〇統工芸大学校』の他に、関西では『大阪芸〇大学附属大阪美〇専門学校』という学校がある。こちらは、私立の『大阪芸〇大学』の付属の私立の『専門学校』だ。」
「先輩、詳しいんですね。」
「実は、中学の同級生が『大阪芸〇大学附属大阪美〇専門学校』に進学したんだ。わざわざ転校して。」
午後3時。大迫家。
本来は、育子の立合いが要るが、血の海がある家では眠れないだろう。
実家の両親が出てきて、ホテルに一緒に泊まることになっていて、警察官の監視下にある。
PCを操作している大曲先輩に、俺は怒鳴った。
「先輩。タブレットがあります。」
「よし、電源をセットしろ。Wi-Fiは・・・要らないか。めぼしいファイルがないか探せ。」
30分後。俺は、見付けた。
「先輩。ありました。日記と、同窓会案内です。高校の。」
「こっちにも日記があった。」
その時、村松から大曲先輩のスマホにテレビ電話があった。
「大曲せんぱーぃ。育子さんが同窓会のこと思い出してくれました。」
「村松。育子さんに、山口俊喜って人物と大迫さんが親しかったか尋ねてみろ。」
画面に大迫育子が出てきた。
「山口さんなら、美術部の仲間です。私は美術部じゃなかったけど。再会を喜んでいました。同窓会は1月でした。成人の日。」
「繋がったな。」大曲先輩は、大迫さんの苦悩を、日記ファイルから読んでいた。
午後4時半。捜査一課横の大会議室。『陶芸家殺人事件』本部。
取り調べ室から蘭子と管理官が出てきた。
「ホシは、ガイシャの高校時代の美術部仲間山口俊喜。山口は一浪して、美術系ではない私立大学に進んだ。二浪は許されなかった。一方、大迫さんは、育子さんと共に『『京都伝〇工芸大学校』』を卒業した。同窓会の後、友好を深めた積りの大迫さんは、『大学校は大学じゃない。』と開き治った山口に、高校時代の部費横領事件で言い返した。部費は大迫さんが立て替えたんだ。ソレが殺害動機だ。無くなっていた、大迫さんのスマホや凶器の『掻きベラ』は、山口の自宅にまだあるそうだ。村松、よく聞き出した。」と蘭子が言い、「出張中の辻さんからも連絡が入った。仲のいい、学生カップルとしか聞き出せなかったそうだ。ホシの山口の件は私から伝えておくよ。」と、管理官が言った。
午後6時半。眩目家。
辻さんからの電話に、蘭子は丁寧に謝っていた。見込み違いだった、と。
複雑な事件だ。仕方ないよな。
午後7時半。
出前が来た。青椒肉絲、焼餃子、チャーハン。
「たまには、いいかな。上手いな。」
「小さな美術道具でも殺せるんだね。」
「場所を間違えなければ、な。試してみる?」
「死んでもいいの?」
「ただ、殺すのは、勿体ないな。」
え?え?え?
―完―
※実名は、なるべく避けました。「大学」と「大学校」の違いは、ネットで調べて、私見を交えました。尚、題材になった事件は存在しません。
クライングフリーマン




