53.マラソンマブダチ事件
「ガイシャは、牡蠣野充生。路上で倒れていて、通行人が119番したが、救急車の中で亡くなった。ホシは、出頭してきた、草野均。だが、おかしい。」
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
神道助六・・・捜査二課課長。警部補。蘭子と同期。
=================================
午後1時。捜査一課横の大会議室。『マラソンランナー殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、牡蠣野充生。路上で倒れていて、通行人が119番したが、救急車の中で亡くなった。ホシは、出頭してきた、草野均。だが、おかしい。」
「ホシじゃないもん。」と、村松は泣きながら抗議した。
「村松。捜査に余談は禁物だ。判ってるだろ。知り合いなのか?どちらかと。」
「草野さん。私、時々マラソンに参加しています。草野さんと何度も会って親しくなって。殺しする人じゃありません。」
「だから、それを余談って言うんだよ。」管理官は、極力優しい声でなだめた。
他の、どの課でも扱い難い、と匙を投げた警察官だ。
それを、蘭子が拾い上げた。
「取り敢えず、情報あるなら言ってみろ、村松。」と、蘭子は事務的に言った。
「草野さんは、有る時、『女子マラソンも出るの?』ってきいて来たんです。それで、『性別は男性なので。パートナーは女性・男性どちらも不要です。』って答えたら、笑い出して。Gとの違いを教えたんです。そしたら、『俺も性別なんか気にしない。仕事なら仕事こなせればいい。マラソンなら走れればいい。』って。」
「それで、肩入れする訳か。管理官も言われた通り、不審な点が多い。詰まり、誰かを庇っている。辻さん。直近でいいからマラソンランナーのリストを手に入れて、ランナーを当たって下さい。マラソンはいい趣味だと思うが、その趣味仲間で何かあったのかも。村松も、草野さんが親しいランナーを思い出せ。お前以外にな。」と、蘭子が締めくくり、例によって、俺と大曲先輩は、草野家に向かった。
午後2時。草野家。
「みちるちゃんがマラソンランナーって知らなかった。でも、女子マラソンには参加あいないんだ。」
「そりゃそうだろ。性別は男、だし。蘭子は、村松にも義理チョコあげてたぞ。」
「そうなんすか?」
「そうなんすか?って、知らないのか?ハズバンドなのに。蘭子は性別で判断して、管理官にも井関さんにも辻さんにも蒔にも秋野にも配ってるぞ、義理チョコ。誰も裏切らないから2倍返しか3倍返しする。判ったか、ハズバンド。元カレが言うんだから、間違いない・・・・・って、これ???奥さん、呼んでこい。」
俺は、慌てて洗濯物を干している奥さんの竹子さんを呼んで来た。
「奥さん、パスワード、ご存じないですか?PCにはロックがかかって無かったけど、ファイルにロックかかっているのがあるんです。犯人探す手掛かりとしてPCを操作することは上司の命令なんです。」
ここで、上司の許可を貰っている、と言うと、後々が面倒になる。
「さあ、私、コンピュータ苦手で・・・。」
大曲先輩は、試しに『T.A.K.E.K.O』と打った。
開かない。
俺は閃いて、先輩の横から打った。
『M.I.C.H.I.R.U』パスワードは村松だった。
内容は、日記だった。生々しい、『肉体関係』の。女性も男性もいた。草野均は、後者のパターンだ。そして・・・。」
午後4時半。捜査一課横の大会議室。『マラソンランナー殺人事件』本部。
取り調べ室から、蘭子が出てきた。
「結論から言うと、草野均は、牡蠣野充生とも牡蠣野竹子とも付き合っていた。所謂『B』だ。牡蠣野竹子も元々マラソンランナーだった。ホシは、ガイシャの奥さんだった。」
「詐欺と言えば詐欺だが、二課はお呼びじゃないな。開光。あのリスト、二課でも使えそうだからコピったぞ。」
「ああ、スキにしろ。」
「こんな変な犯罪、初めてだ。」と、珍しく管理官がボヤき、井関さんが肩に手を置いた。
午後7時半。眩目家。
今日は卵チャーハンだ。
「腕、挙げたな、真吉。」
「隠し味、みちるちゃんが教えてくれたんだ。」
「ふうん。私からも、教えてあげなくちゃ、な。新しい味を。」
蘭子は、舌なめずりをした。
やっぱり、黙っていれば良かった。
―完―




