48.店頭販売員殺人事件
「ガイシャは、派遣店頭販売員の九重岩雄。自宅で首を括って亡くなっているのを、尋ねてきた娘が発見した。索条痕から他殺と簡単に判る。ホシは、常識がないか、思い込みが激しい愚か者だ。そうですね、井関さん。」
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
新垣舞・・・捜査四課課長。警部補。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『絞殺偽装殺人事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャは、派遣店頭販売員の九重岩雄。自宅で首を括って亡くなっているのを、尋ねてきた娘が発見した。索条痕から他殺と簡単に判る。ホシは、常識がないか、思い込みが激しい愚か者だ。そうですね、井関さん。」
「代わりに言って頂き、ありがとうございます。智子。」
「踏み台が近くにありましたが、適当に転がしたようです。もっと適切な・・・あ、寸法が合う椅子もあったのに。とにかく、雑でした。明らかに絞殺の後、鴨居にぶら下げています。」
「何かのカモフラージュかも。あ、洒落じゃなくて。」
「名探偵大曲尚人のカンが、そう言わせるのかな?」
また、蘭子のイジメだ。
蘭子は大曲先輩のの元カノで、大曲先輩は、元カレだ。
昇進試験に受かったので、蘭子は大曲先輩の上司になってしまった。
不思議な2人だ。
「何が不思議だって?」と、蘭子は俺を覗き込んで言った。
しまった。独り言は、身を滅ぼす。
「大曲先輩と同意見です。絞殺して息の根が止まっているなら、さっさと逃げればいいのに。」
「まあ、詳しいことはホシに聞こう。ガイシャは、この道何年のベテランで、派遣会社によると、昔は宣伝販売や実演販売をしていたそうだ。だが、腰を痛めて何時間も立っていなられなくなり、社長が座って客の相手が出来る、今の仕事を進めたらしい。客あしらいは慣れているからな。」
「反社関係が絡んでいるかもな。」と言いながら、新垣が入ってきた。
「取り締まりが厳しくなったから、最近は、『みかじめ料』をせびるヤカラは少なくなった筈だが、最近は『真似反社』もいるからな。」
「何だ、舞。それは。」「お隣の国は、民族性なのか、何でも真似て本物っぽく振る舞うバカがいるからな。ヨーロッパに行った隣国旅行者が、自分は日本人だ、と言ってから傍若無人に振る舞ったケースが何年か前まであった。日本人なら、わざわざ人種を名乗らない。例えヤクザ屋さんでもな。で、埼玉県で、ヤクザを名乗って、暴れた隣国の若者が、店頭販売員に暴力を振るった事件があるんだ。」
「折角だから、聞き込み手伝えよ。本性隠してな。」
「喜んでー。」
辻さんも蒔さんもビビっている。
「ガイシャはPC持っていないそうだ。お前らは、娘さんに立ち会って貰って、何か無くなった気配がないか、調べてくれ。」
午後2時。移動中の車の中。
運転しながら、俺は大曲先輩に聞いてみた。
「ねえ、先輩。」「何だ、新入り。」「新入りじゃないですけど。」「じゃ、新米。」
ハードボイルド、気取っているのかな?
「新垣さんって、男みたいですね。」「男だ。」「え?」
「ウソーん。アイツな。昔、ヤクザの情婦だったらしい。姐さんが何故か女性警察官になった。何で?って聞いたら、『可愛がって欲しいのか、ボウズ』って言われた。」
「恐い。」「だろ。だから、何かで用が出来たら、蘭子に言え。」
「了解。」
午後3時。九重家。
娘の、妙子さんは、待ってくれていた。
「嫁ぎ先が群馬県なので、頻繁には来られなくて。」
「成程。電話でお話ししましたが、お父さんが持っている筈のもので、何か無くなっていないか確認を願います。」「判りました。」
どの道、司法解剖の為、遺体はすぐには返らない。
1時間後。俺達が2階を調べ終えて降りてくると、「ありました。いえ、無くなっています。無くなっている物がありました。」
妙子は、メモ帳を取り出し、さっと書いた。
「父は3何前まで、実演販売していました。『よく切れる包丁』です。引退記念に、会社から譲り受けたんです。」
「・・・そういうことか。眩目。秋野に確認してみろ。クビを括ったロープの切っ先は、カッターナイフだったと言ってた気がするんだ。」
「了解・・・その通りだそうです。」
午後5時半。捜査一課横の大会議室。『絞殺偽装殺人事件』本部。
「四課で、別件で逮捕拘留中の被疑者が吐いた。被疑者黒金徹は、九重を殺害後、運悪く組の仲間に出逢い、出入りに参加した。新垣が九重の写真を見せたら反応があり、あっさり自供した。黒金は、殺しをやった凶器を兄貴分の最上から受取り、咄嗟に九重の包丁に混ぜた。スーパーの店頭販売をしていた九重に声をかけ、実演販売時代の話を聞き出し、巧みに九重家に上がり込んだ。実演販売の小道具に使っていたロープを出して来たので、咄嗟にクビを締め、キーホルダーから物置の鍵を取り出し、包丁を回収した。ところが、クビを締めたロープの切っ先が、問題の包丁のものだと感じた黒金は、ロープを切った上で、鴨居にぶら下げて、ロープの破片と包丁を回収した。素人の悲しさで、改修した包丁は兄貴分のものとは違うことに気づかなかった。」
「刃物にはね、作った人の『銘』が刻んであるんだ。殺す必要は無かったんだ。」と、死刑が締め括った。
午後7時。眩目家。
ハヤシライスを食べる蘭子に尋ねた。
「明日も、お通夜行くの?」
「お通夜は、明後日。」
蘭子は、指をポキポキ鳴らした。
恐い。
―完―




