40.落ちて来た男
40.落ちて来た男
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
=================================
午後1時。捜査一課横の大会議室。『自殺未遂事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャ仁木治は、三階建ての自宅三階から飛び降り自殺した・・・と思われていた。だが、全身打撲だが、意識はある。そして、『遺書』のことを否定した。どうやら複雑なようだからと、村松くんが開光君に事件を預けた。」
「え?みちる。お前の担当だったの?」と大曲が言うと、「課長と、優秀な部下の担当の方が早く片付くと思って。今ね。集議院議員のオッサン家の空き巣担当してるのよ。」と、村松は、ぶりっ子して、お尻まで振った。
「そんじゃあ。」と言って、村松は舌を出して消えてしまった。
「辻さん。ガイシャの家の付近は住宅街ですか?」と蘭子は尋ねた。
「ええ。隣が駐車場、田んぼ。反対側に、建て売り住宅があります。三階建ての家は、ガイシャ宅だけです。孤立しているのかと思ったら、そうでもないようです。母親が上手く付き合っているようなので。目撃者は、その住宅の住人です。死んだものと思って、村松の係が、ある程度聞き込みしています。」
「じゃ、聞き込みを引き継いで下さい。目撃者がいるかもしれない。病院へは私が行こう。大曲と眩目はガイシャの家で不審な跡がないか調べてくれ。侵入者がいた筈だ。ガイシャは飛び降りたんじゃない、突き落とされたんだ。捜索の許可はとっておく。管理官。暫くは、ガイシャが亡くなったことにしておいて下さい。」
「了解した。」
午後2時半。仁木家。
「今時、三階建てって、珍しいですよね、お金持ちなんだ。」
「だろうな。まずは、住所録、探そう。辻さん達には無理だ。三階はな。」
「はい。」
ガイシャ宅は、一階がガレージになっている。住居部は二階と三階だ。階段はあるが、エレベーターはない。
現場の三階から手掛かりを探すことになった。
「先輩。ありました。年賀状ホルダーの中に。きっと、年賀状出す時に、前の年賀状の確認しているんですね。」
「手間が省けたな・・・って言いたいが、PC持ってる者は、大体PCで印刷するから電子データがある筈だ。」そう言って、大曲先輩は、PCを起動した。
パスワード入力画面だ。だが、そこで諦める先輩じゃない。
「眩目。その年賀状ホルダーの中に、メモないか。」
「ええ?ここにですかあ?・・・あった。コレじゃないかな。UMASO・・・治のアルファベットの反対かあ。」
PCは起動した。ファイルはきちんと整理保存されている。
簡単に視認出来るフォルダーだ。考えていた大曲先輩は、『ゴミ箱』を開いた。
中にあるのは、幾つかのショートカット。
先輩は、起動させてみたが、簡単に起動した。
はあ。壁紙に、色んなファイルを置く人は多いが、『ゴミ箱』に隠すとは。
「復元ソフトは要らないな。」
大曲先輩は、蘭子のスマホに電話して、確認をとった。
電話を終えて、大曲先輩は俺に言った。
「コピって来い、得意だろ、盗むのは得意だろ?・・・。」
「先輩。冗談じゃないですか。二階も調べます?」
「そうだな、お前、先に行って調べろ。」
俺は、コピーの作業を任せて二階に降りた。
やっぱり性格かな。ダイニングキッチンも寝室もリビングも片付いていた。
お金持ちは違うなあ。
ふと気が付くと、足元のキッチンマットがずれている。
めくってみて、理由が分かった。
床下収納があり、金庫があったが、カラっぽだった。
午後4時半。捜査一課横の大会議室。『自殺未遂事件』本部。
辻さんが、スクリーンを見ながら説明している。
「たんぼの向こうのアパートに、浪人中の学生が住んでいて、2浪してやっと大学に受かったと自慢していました。そして、お祝いに買って貰った天体望遠鏡で、偶然『犯行時刻の写真』を撮っていました。今は『冬の大三角』とかいう時機だそうで、大学では天文学を学ぶ予定だそうです。それでですね、星を観測しようしたら、ホシが写ったらしいんです。」
「上手い!!」と井関さんが合いの手を入れた。
あ。天体の星と、犯人のホシかあ。
「正に、突き落とす瞬間だな。今、開光君が取り調べしている、仁木の母親じゃないか。」と、管理官は感嘆した。
「出張中、というご近所の話は違和感ありましたが、アリバイ作りの積りだったんですね。」と、辻が感心した。
取り調べ室から蘭子が出てきて、開口一番、「落ちました。」と言った。
「病院で、何か様子がおかしいから、看護師に尋ねました。すると、『良かった、生きてて』って言ったそうです。台詞、違いますよね?」
「普通は、怪我の程度を尋ねますね。」と、智子が言った。
「それで、『トドメをさしに来たのか?』って言ったら、『逮捕してください。』ですからね。」
蘭子は、俺が渡したコップの水を飲み干すと続けた。
「先日、他の党と合体した党。宗教団体の関連組織だって有名ですよね。仁木は、その組織の重大な機密データが床下にあるのを知って、ある日、『バックアップはある。もう脱退してくれ、組織を』と頼み、口論になり、一旦は喧嘩を収めたものの、上司に相談してしまった。そして、組織の人間が、床下の紙データを回収している間に再び口論になった。で、突き落としてしまった。出張中の筈だから、と言われ、組織の人間の車で逃走した。」
「仁木は、『僕が悪いんだ』と言っていたらしいが・・・さっき息を引き取った。未遂では無くなったよ。」と管理官は悲しい顔で言った。
午後8時。眩目家。
「あさりの味噌汁、旨いな。お前はいい亭主だ。」
「やっぱり信仰が人を救うことはあっても、宗教は人を救わないんだね。」
「お前の信仰は、何だ?」
「蘭子ちゅあわん。」「合格だ。」
蘭子は目を輝かせ、ステーキを食べ始めた。
―完―
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻瑛人・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
村松みちる・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
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午後1時。捜査一課横の大会議室。『自殺未遂事件』本部。
昼食の後、捜査会議が始まった。
そして、志摩管理官が説明を始めた。
「ガイシャ仁木治は、三階建ての自宅三階から飛び降り自殺した・・・と思われていた。だが、全身打撲だが、意識はある。そして、『遺書』のことを否定した。どうやら複雑なようだからと、村松くんが開光君に事件を預けた。」
「え?みちる。お前の担当だったの?」と大曲が言うと、「課長と、優秀な部下の担当の方が早く片付くと思って。今ね。集議院議員のオッサン家の空き巣担当してるのよ。」と、村松は、ぶりっ子して、お尻まで振った。
「そんじゃあ。」と言って、村松は舌を出して消えてしまった。
「辻さん。ガイシャの家の付近は住宅街ですか?」と蘭子は尋ねた。
「ええ。隣が駐車場、田んぼ。反対側に、建て売り住宅があります。三階建ての家は、ガイシャ宅だけです。孤立しているのかと思ったら、そうでもないようです。母親が上手く付き合っているようなので。目撃者は、その住宅の住人です。死んだものと思って、村松の係が、ある程度聞き込みしています。」
「じゃ、聞き込みを引き継いで下さい。目撃者がいるかもしれない。病院へは私が行こう。大曲と眩目はガイシャの家で不審な跡がないか調べてくれ。侵入者がいた筈だ。ガイシャは飛び降りたんじゃない、突き落とされたんだ。捜索の許可はとっておく。管理官。暫くは、ガイシャが亡くなったことにしておいて下さい。」
「了解した。」
午後2時半。仁木家。
「今時、三階建てって、珍しいですよね、お金持ちなんだ。」
「だろうな。まずは、住所録、探そう。辻さん達には無理だ。三階はな。」
「はい。」
ガイシャ宅は、一階がガレージになっている。住居部は二階と三階だ。階段はあるが、エレベーターはない。
現場の三階から手掛かりを探すことになった。
「先輩。ありました。年賀状ホルダーの中に。きっと、年賀状出す時に、前の年賀状の確認しているんですね。」
「手間が省けたな・・・って言いたいが、PC持ってる者は、大体PCで印刷するから電子データがある筈だ。」そう言って、大曲先輩は、PCを起動した。
パスワード入力画面だ。だが、そこで諦める先輩じゃない。
「眩目。その年賀状ホルダーの中に、メモないか。」
「ええ?ここにですかあ?・・・あった。コレじゃないかな。UMASO・・・治のアルファベットの反対かあ。」
PCは起動した。ファイルはきちんと整理保存されている。
簡単に視認出来るフォルダーだ。考えていた大曲先輩は、『ゴミ箱』を開いた。
中にあるのは、幾つかのショートカット。
先輩は、起動させてみたが、簡単に起動した。
はあ。壁紙に、色んなファイルを置く人は多いが、『ゴミ箱』に隠すとは。
「復元ソフトは要らないな。」
大曲先輩は、蘭子のスマホに電話して、確認をとった。
電話を終えて、大曲先輩は俺に言った。
「コピって来い、得意だろ、盗むのは得意だろ?・・・。」
「先輩。冗談じゃないですか。二階も調べます?」
「そうだな、お前、先に行って調べろ。」
俺は、コピーの作業を任せて二階に降りた。
やっぱり性格かな。ダイニングキッチンも寝室もリビングも片付いていた。
お金持ちは違うなあ。
ふと気が付くと、足元のキッチンマットがずれている。
めくってみて、理由が分かった。
床下収納があり、金庫があったが、カラっぽだった。
午後4時半。捜査一課横の大会議室。『自殺未遂事件』本部。
辻さんが、スクリーンを見ながら説明している。
「たんぼの向こうのアパートに、浪人中の学生が住んでいて、2浪してやっと大学に受かったと自慢していました。そして、お祝いに買って貰った天体望遠鏡で、偶然『犯行時刻の写真』を撮っていました。今は『冬の大三角』とかいう時機だそうで、大学では天文学を学ぶ予定だそうです。それでですね、星を観測しようしたら、ホシが写ったらしいんです。」
「上手い!!」と井関さんが合いの手を入れた。
あ。天体の星と、犯人のホシかあ。
「正に、突き落とす瞬間だな。今、開光君が取り調べしている、仁木の母親じゃないか。」と、管理官は感嘆した。
「出張中、というご近所の話は違和感ありましたが、アリバイ作りの積りだったんですね。」と、辻が感心した。
取り調べ室から蘭子が出てきて、開口一番、「落ちました。」と言った。
「病院で、何か様子がおかしいから、看護師に尋ねました。すると、『良かった、生きてて』って言ったそうです。台詞、違いますよね?」
「普通は、怪我の程度を尋ねますね。」と、智子が言った。
「それで、『トドメをさしに来たのか?』って言ったら、『逮捕してください。』ですからね。」
蘭子は、俺が渡したコップの水を飲み干すと続けた。
「先日、他の党と合体した党。宗教団体の関連組織だって有名ですよね。仁木は、その組織の重大な機密データが床下にあるのを知って、ある日、『バックアップはある。もう脱退してくれ、組織を』と頼み、口論になり、一旦は喧嘩を収めたものの、上司に相談してしまった。そして、組織の人間が、床下の紙データを回収している間に再び口論になった。で、突き落としてしまった。出張中の筈だから、と言われ、組織の人間の車で逃走した。」
「仁木は、『僕が悪いんだ』と言っていたらしいが・・・さっき息を引き取った。未遂では無くなったよ。」と管理官は悲しい顔で言った。
午後8時。眩目家。
「あさりの味噌汁、旨いな。お前はいい亭主だ。」
「やっぱり信仰が人を救うことはあっても、宗教は人を救わないんだね。」
「お前の信仰は、何だ?」
「蘭子ちゅあわん。」「合格だ。」
蘭子は目を輝かせ、ステーキを食べ始めた。
―完―




