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29.介護士殺人事件

葛城由香里。無論、高齢者だ、と言いたいが、介護士だ。夜勤専門だが、介護福祉士を目指して勉強中だった。夜勤は忙しい。

 

 ========== フィクションです ===========

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。

 井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。


 辻・・・捜査一課辻班班長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。

 神道助六・・・捜査二課課長。

 新垣舞・・・捜査四課課長。



 =================================


 午後1時。捜査一課。『介護施設落下事件』本部。

 昼食の後、捜査会議が始まった。

 そして、志摩管理官が説明を始めた。

「ガイシャは、葛城由香里。無論、高齢者だ、と言いたいが、介護士だ。夜勤専門だが、介護福祉士を目指して勉強中だった。夜勤は忙しい。それでも、日勤よりは時間が取れる、と言っていたそうだ。何故なら、日勤はやることが多い。どこの施設でも人手不足だが、大抵夜勤は一人だ。入居者の人数が少なければ回るかも知れないが、少ないと経営が難しいそうだ。屋上から転落して、遺書があった。」

「あり得ない!」と蘭子の目が光った。

「私が彼女の立場で自殺を図るなら、勤め先は選ばない。しかも、夜間だ。異変に気づいたのは、早朝勤務の介護士だ。自殺したいのなら、『助かる見込み』は残さない。」

「うむ。井関さん、死亡推定時刻は?」

「逆算すると、午前5時。開光課長の言う様に、午前8時に早朝勤務も者がやってくるのに、まるで発見してくれ、と言わんばかりの時刻だ。」

 井関の言葉を受けて、辻が報告した。

「施設長は、迷惑をかけることに気遣ったのだろう、と言っています。」

「施設長は男性?」と、蘭子が尋ねると、「はい。」と辻は即答した。

「ホシは施設長だな。」と蘭子が言うと、「『日勤よりは時間が取れる』って誰が?」と大曲が言った。

「先輩。施設長です。それで、夜勤を希望したとか。」と俺が言うと、「「あり得ない。」」と、大曲先輩と蘭子が同時に言った。

「家族や友人の証言なら、そういうものかな?と思うが・・・。」

 大曲先輩が言いかけると、会議室の電話が鳴った。

 管理官が電話に出た。

「タレコミの電話?」

 管理官はスピーカーをオンにした。

「あなたの名前は?情報がある、とのことですが。」

「松前と言います。今朝、施設から車が発進するのを見ました。飲み過ぎて朝帰りして・・・でも酔っ払ってません。朝から騒がしいから近所の人に尋ねたら、転落事件があったって。」

「何時のことです?あなたが車を見たのは。」

「午前5時頃です。」

「お疲れのところを申し訳ないが、捜査員を向かわせますので、詳しいお話を聞かせて貰えませんか?」

「分かりました。寝ないで待ってます。」

 俺と大曲先輩は、蘭子に指示されるまでもなく出発した。


 午後2時。松前家。

 洗濯物を干してあるので、すぐ判った。

 施設の屋上は見えないが、洗濯物の隙間から駐車場が見える。

 ナンバーは判らなかった、と言っていたが、駐車場に街灯はない。

「ドライバーの顔も見えなかったんですね。」

「はい。でも、服装は黄色いパーカーだったと思います。あ、それで顔が見えなかったんだ。メーカーは判らないです。」

 学生である松前だから目撃出来たのかも知れない。

 俺は、蘭子に連絡をした。

「ついでに現場、見てこいって言ってました。」

「言われなくても、そうするよ。」

 現場は三階建ての上で、中からはエレベーター、内階段、外からは、棟続きの建物の外階段からも上がれる。

 貯水槽がぽつんとあるが、現場は、そこから離れている。

 「自殺と思われた理由は何だっけ?」

「遺書です。ワープロやPCで書いたものでなく、肉筆です。」

「・・・よし。」

 大曲先輩は、現場は松前家から見えないことを確認した後、事務所に戻った。

「ああ、施設長さん、申し訳ない。添付資料として必要なので、葛城さんの直筆の書類のコピーを1部でいいので、お願い出来ますでしょうか?ウチの上司は細かくてねえ。」

 大曲先輩の説得術は大したものだ。

 施設長は、気前よく、業務日誌の下書き用メモ帳をコピーしてくれた。

「葛城さんは若いが・・・若かったが、ベテラン職員にはPCが苦手な者もいますのでねえ、公平にするため、メモに書いたモノを私が入力しているんです。」

「大変ですねえ。じゃ、お手数かけました。」


 午後3時。帰るとすぐ、鑑識に書類を回した。

 捜査一課。『介護施設落下事件』本部。

「どうだ、感触は?」と蘭子は大曲先輩に尋ねた。

「1つ、嘘をつきました。メモ帳の日付は、今日になっています。業務日誌のアプリのタイムスタンプは今日です。内容は、メモ帳と同じ。因みに、PCのシステム時計は狂っていません。」

 継いで、蒔さんが耳寄りな情報をもたらした。

「給与や待遇の問題で、人の移動が激しい業界のようで、10キロ離れた介護施設に以前いたことが判りました。ガイシャと施設長が。社長に確認しました。どうやら、引き抜き、ヘッドハンティングがあったようです。」

「繋がったな。」


 午後5時。取り調べ室から、蘭子と大曲先輩が出てきた。

「管理官。令状、お願いします。」


 午後6時。松前家。

「君は、葛城さんと知り合いだったね。君が夜明けまで飲んだスナックに確認したら、当日は休みだった。君が行ったのは、前日だった。施設長の家から黄色いパーカーは見つかったが、クリーニングから返ったばかりだった。返ったのは5日前だ。施設長は逮捕した。告別式に出て、別れの挨拶をしなさい。」

 松前は、蘭子の言葉に、ただ涙を流して頷いていた。


 午後8時。眩目家。

「早く発見して欲しかったんだろうね。恐らく、落ちた瞬間も見ていた筈だ。早朝勤務の者が見付けなかったら、何らかの手を打っただろう。ねえ、真吉ぃ。パーカー買ってぇ。黄色い奴じゃないのを。」

 大曲先輩は、このツンデレについて行けなかったに違い無い。

「了解しました・・・あ、判ったよ、ハニー。」

 今夜も眠るのは遅くなるな。


 ―完―










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