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28.期日前投票殺人事件

高齢者だ。口に選挙通知を咥えて亡くなっていた。発見者は、たまたま訪れた孫娘さやか。110番し、警察官が到着したが、さやかが発見する前に亡くなっていた。井関さん。

 ========== フィクションです ===========

 === 主な登場人物 ===

 眩目くらめ真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。

 大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。

 開光かいこう蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。

 志摩敏夫・・・警視庁管理官。

 井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。

 秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。

 井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。


 辻・・・捜査一課辻班班長。

 蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。

 神道助六・・・捜査二課課長。

 新垣舞・・・捜査四課課長。



 =================================


 午後1時。捜査一課。『胸部殴打殺人事件』本部。

 昼食の後、捜査会議が始まった。

 そして、志摩管理官が説明を始めた。

「ガイシャは、瀬川新子。高齢者だ。口に選挙通知を咥えて亡くなっていた。発見者は、たまたま訪れた孫娘さやか。110番し、警察官が到着したが、さやかが発見する前に亡くなっていた。井関さん。」

「死亡推定時刻は前日の午後9時から10時頃。賊はピッキングして侵入。留守宅と思って侵入したら、ガイシャに騒がれて居直ったパターンかと。目立ったゲソコンなし、指紋なし。通話履歴は確認中です。尚、肋骨が折れていますので、腹を殴打され、骨が折れて死亡、かと。」

「盗品は?開光君。」

「見当たりませんでした。買物用の財布は小銭のみ残っています。通帳・判子は娘が管理していたようです。辻さん、近所の評判は?」

「よくないですね。有名な新興宗教の信者ですから。連携している政党の活動に熱心で嫌われていました。選挙の時だけ猫なで声だとか。」

「怨恨の線も捨てがたいな。交友関係を徹底的に洗う必要があるかな?開光課長。」

「おっしゃる通りです。大曲、PCやタブレットは無かったんだな。スマホは?」

「孫娘の話だと、通話のみ出来るスマホが無くなっています。」

「ガイシャはスマホは使えたんだな?・・・眩目。孫娘のところに行って、盗難届を出させろ。必要手順だと言えばいい。」

 俺は、急いで、孫娘のところに行った。

 捜査会議が気になったが、命令だ。

 最近では、大曲先輩のことは「元カレ」と呼ばず、俺の名前も「真吉」とは呼ばなくなった。

 大曲先輩が管理官に泣きついたのだ。


 午後2時。オフィスキスミー。

 ガイシャは80歳、娘は55歳、孫娘と言っても30歳だ。

 孫娘の勤務先は化粧品会社だった。

 交通課から貰った盗難届を持って受付に行くと、先ず社長が出てきた。そして、会議室に案内された。

「さやかちゃん、いえ、持田さんのことを聞いて驚いていますの。強盗ですって?可哀想に。あの子も母子家庭で苦労して、あの子のお母さんも母子家庭で苦労して・・・親を見て育つんですね。よく働いてくれますのよ。」

「じゃあ、同僚とも上手くお付き合いしているんですね。」

「ええ。亡くなった方の悪口は言いたくないんだけど、お婆さんが宗教活動や政治活動に熱心でね。ここにいらして・・・あら、やだ。」

 そこへ、ノックの音がして、女社長は話を止めた。

「失礼します。」

「あ。お電話差し上げた眩目と言います。暗い目じゃないんですよ。」と、俺は警察手帳を見せた。

「葬儀の手配とか大変な所を申し訳ない。『強盗犯人』が、どこかに捨てて、誰かが拾うかも知れないでしょ。そこで、手続きが必要なんです。」と、俺は我ながらアドリブが上手いなと思いながら力説し、彼女に書き込まれた書類を見た。

「ああ。D社のですか。私はS社です。事件解決したら、出てくるかも知れないし、第三者が拾うかも知れません。連絡先は、貴方のスマホでいいですね?」

「ええ。でも、何故母でないんですか?」

「さあ。担当が違うので。お母さんには多分、お祖母さんの交遊関係を尋ねに他の刑事が行っていると思います。『単なる強盗』の可能性もありますが、お祖母さんに怨みを持つ人間の可能性もありますからね。いや、世の中には『逆恨み』ってのもありますし。守秘義務あるから詳しい事は話せないんですが、先日も、逆恨みによる事件がありました。では、間違いなく記入頂いた様なので、私は、これで。社長さん、お忙しいところ、ご協力ありがとうございました。」

 俺は、孫娘と社長に礼を言い、会議室を出た。

 給湯室を通り過ぎ、そうっと、後戻りして耳を澄ませた。

 同僚の『本音』が聞けた。

 午後3時。捜査一課。『胸部殴打殺人事件』本部。

 辻さんが、聞き込みの感触を報告していた。

「ガイシャは、近所の奥さんが言っていたように、熱心な信者でした。教団の方は、褒めちぎっていました。選挙活動もです。」

 今度は、蒔が報告した。

「娘ですが、以前勤務していた会社は、退職していたからか、正直に話してくれました。親がトラブルを起こして会社を去るのは可哀想だった、と社長も同僚も言っていました。」

「教団自体、問題を抱えている、と聞いたがそうなのか?神道君、新垣君。」と理事官は言った。

「強引な勧誘は有名ですね。詐欺まがいの商品売りつけもあったようですし。入信入党すると狂うんですね。」と神道が言い、「今度の補欠選挙が絡んでいると思います。証拠はなかなか掴めないが、『いばらき明日の会』と繋がっている可能性もあります。期日前投票で、押している候補者に入れさせるイカサマもある、という話で、そこに反社が「絡んで来る、と。」と新垣は言った。

「で、眩目はそうだった?」

「報告が2つあります。1つは、スマホは通話だけのものじゃありませんでした。アプリかメールの痕跡を隠す為ではないかと。それと、もう1つ。孫娘と娘は、親子以上の関係だった、と同僚が噂しています。」

「大曲。何か言いたそうだな。」と今度は蘭子は大曲先輩に話を振った。

「告別式・お通夜は、娘の亭主が葬儀社社員ですが、教団から教団のやり方で葬儀を行うように指示があったそうですが、娘は断って、標準的な葬儀を行うようです。あ。日程は、司法解剖が終ってからですが。」と、大曲先輩は言った。


 翌日。午後3時。『胸部殴打殺人事件』本部。

 捜査会議は、蘭子の指定で、遅めに行われた。

 取り調べ室から蘭子が出てきた。

「やっと、吐いた。ホシは、持田さやか。幇助はガイシャの娘大手前蘭、そして、蘭の夫である、葬儀社社員大手前太郎。さやかは、所謂『宗教3世』。補欠選挙の期日前投票運動をガイシャに指示されたが拒否。カッとなった、ガイシャは、蘭とさやかの『特殊な関係』を詰った。その関係は、宗教や政治に狂い、家族親族の『女王』であるガイシャに虐げられる生活に『肩寄せ合って』生きて来た結果だった。口論の末、『おばあちゃんなんか嫌いだ』と、ガイシャに突進した、さやか。はっとして呼吸を確認したが、息をしていない。母親に相談し、母と再婚相手である義父が駆けつけた。このままだと、さやかが疑われる可能性もある。大手前は、傷ついた胸に更に突進。殺害の工作をした。悲劇としか言いようがない。」

 蘭子の言葉に、「呼吸停止は、一時的なものだったかも知れない。骨が折れたのは、2度目の頭突きだろう。」と井関は言った。


 午後7時。眩目家。

「蘭子の言う通り、隠していた。ショックだった。」

「スマホは、さやかの会社のゴミに混じってた。手配しておいて良かったよ。」


「蘭子は、今日も僕を虐めるの?」

「うん。イジメを止めるのは、妊娠してから。覚悟は出来てるな。」


 今夜も睡眠不足だな。


 ―完―









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