19.編み物殺人事件
「あれ?開光君は?」
慌ただしく、俺と蘭子と大曲先輩が帰った。
大曲先輩は、取り調べ室に入った。
編み物殺人事件
========== フィクションです ===========
=== 主な登場人物 ===
眩目真吉・・・警視庁捜査一課刑事。巡査。
大曲尚人・・・警視庁捜査一課刑事。巡査部長。
開光蘭子・・・警視庁捜査一課課長、警部補。
志摩敏夫・・・警視庁管理官。
井関権蔵・・・警視庁鑑識課課長。
秋野治夫・・・警視庁鑑識課課員。
井関智子・・・警視庁鑑識課課員。井関の娘。
辻・・・捜査一課辻班班長。
蒔俊郎・・・警視庁捜査一課課員。辻班。
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午後1時。捜査一課。『編み物殺人事件』本部。
昼食の後、捜査員が帰って来て、捜査会議が始まった。
「あれ?開光君は?」
慌ただしく、俺と蘭子と大曲先輩が帰った。
大曲先輩は、取り調べ室に入った。
妻であり、課長である蘭子は、智子からコップをもらい受けると水を一気に飲み干した。
捜査会議が始まった。
蘭子は言った。
「ホシは、オトコでした。私達は先入観にとらわれていた。」
事件は、古いアパートで起こった。
ガイシャは、文具工場の営業部長だった。
会社での評判は良かった。
男性社員にも女性社員にも。
社長が首を捻っていた。
「コンピュータの会社でプログラマをやってたらしいんですけど、ウチのような小さな会社に何で?って面接の時も、飲み会の時も訪ねたんです。『イジメに遭ってリストラされただけです』って言って。女性関係ですか?浮いた話聞かないですねえ。ウチの女性しゃいんだってね。パワハラって言われても困るけど、不美人ばかりじゃないですよ。まだ40歳になったばかりだし、見合いも、知り合いに頼まれてセッティングしたことがあるんです。そしたら、僕には勿体なくて、って言うし。みんなは仕事一筋なんだな、って言ってたんです。編み物のセーターですか?会社は禁じていないけどなあ。外出時くらい、持ってれば着れば良かったのに。」
殺された現場では、ガイシャは手編みのセーターを着ていた。
そして、胸に編み針が何本も刺さっていた。
去年、心筋梗塞で入院したそうだから、心臓に何本も刺さったら、そりゃあ死ぬよなあ。
編み針は、研がれていて、鋭利な刃物になっていた。
最初、迷宮入りかと思われた。女性関係は、前の会社でも、友人間駅からも聞けなかった。
指紋は丁寧に拭き取られていた。
PCは、復元作業が行われた。まだ見ぬホシが削除作業をした可能性があったからだ。
復元差牛尾が終り、ネットの履歴が判明した時、一気に捜査は進んだ。
「ガイシャは、オンライン編み物教室に参加していました。そして、講師と『恋仲』になった。講師は、あることからガイシャが『浮気』をしたと思い込んだ。今、大曲が取り調べしています。」
5分と立たない内に、ラジカセを持った大曲先輩が戻ってきた。
「ホシは、やはりオンラインの講師でした。存在しない『浮気』に嫉妬したようです。今流行りらしいけど・・・何て言うんだっけ。眩目。」
「おっさんずラブ、ですね。」
「おっさんずラブ?何、それ?」井関が言い、皆ざわざわした。
「とにかく、講師の前田伊智郎は、ガイシャを殺害、工作して逃げた。早朝で、幸い誰にも見られなかった。でも、これ、効果ありましたよ、課長。」
大曲先輩は、ラジカセとのカセットを再生した。
ある歌謡曲が流れ出した。
午後8時。眩目家。
「みんな、お前のお陰だな。ホシがオトコとは思わなかったが、編み物は女性だけのものじゃないって言った時は心底驚いた。部活、もてたか?」
「全然。顧問の先生が亡くなって、解散。中学の時、半年だけだったけど。今度、財布でも作ろうか?」
「お前を手籠めにして良かったー。」
手籠め?
―完―




