第45話 影の塔、起動──三国連合と潜入作戦
選ばれたのは“影”だった。
夜明け前、王都を出発する俺たちは、三国共同軍の偵察部隊に加わる形で、例の“塔”に向かっていた。
「で、ここが……」
篠崎さんと一緒に馬車を降り、俺は仰ぎ見る。そこにそびえるのは黒曜石のような漆黒の塔。
周囲の空間が歪み、遠近感すら狂わせる奇妙な建築──それが“影の塔”と呼ばれる新たな脅威だった。
「なんか……すごく“RPGのラスボス前のダンジョン”感ありますね」
「なんでそんなテンション高いんだよ……!」
「えっ、だって怖い時こそテンション上げないと、一朗さん、倒れますよ?」
「俺そんなにヤワじゃないからな!?」
──でも内心、ちょっと心折れそうだった。
クラヴィスからの任務はこうだ。
「影の塔の内部構造を記録し、転移装置があるか調査せよ。必要があれば“影の竜使い”の再接触を試みること」
どんだけ無茶振りだよ……。
俺たちのパーティは、高野(俺)、篠崎さん(プリースト)、ガルダイン(飛行役)、そして護衛兼通訳(謎)でクラヴィスの部下・リューシャの四人。
「さ、行きましょう。一朗さん」
「うん、行こう。絶対生きて帰るぞ」
「そっちより、帰ったらご飯何にします?」
「それ今考える!? ……いや、オムライスとかいいな」
「了解です」
こうして、俺たちは“影の塔”の第1層へと足を踏み入れた。
──暗い。
塔の中はまるで異空間だった。光が届かない。
けれど《記録》スキルを通して見ると、わずかな“情報の揺れ”が感知できる。
「……いるな」
俺の記録ウィンドウには、ぼんやりと浮かぶ人影。
それも、人間ではない。
「こいつ……“影の模倣体”だ」
リューシャが剣を抜く。次の瞬間、影が一気にこちらへ跳びかかってきた!
「《ホーリーレイ》!」
篠崎さんの光魔法が炸裂し、影を吹き飛ばす──が、それはすぐに復元するように形を戻す。
「やっぱり、こいつら“本体”じゃない……!」
俺はすぐさま《記録》スキルを展開。
魔素構造、エネルギー波形、再生条件……全部、メモる!!
「一朗さん、どうします!?」
「“再生条件”を逆手に取る! いったん分解して、再生途中に“無”をぶつける!」
「は? 無ってなに!?」
「わからん! でもノートに“絶対記録不能領域”ってあっただろ! あそこに誘導すれば──!」
「了解! 誘導、いきます!」
ガルダインが俺を背に乗せ、塔の空間を一気に翔ける。
空中戦──というか、謎の重力反転エリアだ。酔う。
影の模倣体が追ってくる。
「今だ、記録不能エリアへ突っ込むぞ!!」
俺たちは飛び込み、影は──崩壊した。
「やった……! 録れなきゃ、消せる……」
「新理論ですね。録れなきゃ、消せる」
「“記録の逆理論”と名付けよう……」
塔の最奥に、なにかが待っている気がした。
そして、再び影の中に“誰か”の視線を感じる。
「高野一朗……やはり来たか」




