第17話 初ダンジョンは監獄跡!? 篠崎のホーリーマジックが光る!
初めてのダンジョン探索ということで、俺たちは王都近郊にある低レベル帯のダンジョン──『旧ラゼロ監獄跡』に向かっていた。
「まさか初陣が、元監獄とは……」
高野一朗こと俺は、肩に背負ったバックパックを直しながら、ぼやいた。
「ここ、昔は死刑囚が入れられてたって噂ですよ。一朗さん、ビビってるんですか?」
にやりと笑ったのは、篠崎さん。今や俺の正式なパーティメンバーであり、異世界においてはプリースト職のヒーラー兼聖魔法使いだ。
かつて会社で受付嬢だった彼女が、いまローブ姿で杖を構えているとは、俺も人生がRPGになるとは思ってなかった。
「ビビってるわけじゃない。ただこう……現実味がないというか……いや、あるな。監獄って響きだけで胃が痛い」
篠崎さんは笑っていたが、その手つきは慣れたもので、足元の罠を確認しながら進んでいた。
ダンジョンの内部は、ひんやりと冷たい空気と湿気が混じり、耳鳴りのような残響が絶えず漂っていた。壁には苔と血のようなシミ、そして錆びた鉄格子。
「ホラーだな、ここ」
「ですよね。夜中に一人で来たら、泣きます」
篠崎さんは冗談めかして言ったが、その声には緊張も含まれていた。
モンスターの気配──いや、間違いなく近い。
ガシャン。
何かが鉄格子を叩く音がした。
「来ますよ、一朗さん」
「了解……っと。俺は《記録》で相手を調べる!」
スキル《万能記録》を発動。目の前の敵影に意識を向けると、情報が流れ込んできた。
【監獄の亡者 Lv12】
・腐敗した元看守の亡霊。暗闇での視認性が高い。
・聖属性が有効。物理は50%軽減。
「物理効きにくいタイプだ、篠崎さん!」
「じゃあ、出番ですね……行きます!」
篠崎さんが一歩前に出て、杖を掲げる。
「《ホーリーフラッシュ》!」
光が迸った。監獄の薄暗い廊下が、一瞬昼間のように明るくなり──アンデッドたちが悲鳴を上げながら崩れ落ちていく。
彼女のホーリーマジックは、ただのヒーラースキルじゃなかった。
「……すごいな、篠崎さん」
「うふふ。元・受付嬢、やればできるんです」
笑う彼女のローブの裾が、戦闘後の風にふわりと揺れる。正直、惚れ直した。
その後も小規模な戦闘が続いたが、篠崎さんの《ホーリーミサイル》《キュアライト》によって、俺たちの進行は順調だった。
中層に辿り着いたとき、かつての囚人の怨霊がまとめて襲ってくる場面があった。
俺はすかさず《記録》スキルで情報を引き出し、弱点である“名前を呼ばれると動きが止まる”という特性を発見。
「篠崎さん、名前を呼べば止まるって!」
「え、どういう……名前って何?」
「看板見て! 牢名札に名前書いてある!」
「わ、わかりました! ……えっと、フランク! カルメロ! ドミニク!」
怨霊がぴたりと動きを止める。
「すごっ! マジで止まった!」
「この記録スキル、地味だけどチートですよね」
俺は照れながら頷く。
最深部では、亡霊のボスが待ち構えていた。
しかし、篠崎さんのホーリーマジックと、俺の《記録》コンボによって、戦闘は驚くほどスムーズに終わった。
「……これで、ダンジョン初陣、クリアですか」
「うん。上出来だよ、一朗さん」
篠崎さんが、初めて名前で呼んだ。
俺はその瞬間、別の意味でも心臓が跳ねたのだった。




