第10話「王都デビュー!でも農業服のままパレード参加はちょっと恥ずかしい件」
人生で「王都デビュー」なんて単語を使う日が来るとは思わなかった。
それも、職種:農民。服装:麦わら帽子とツナギ。
まさかの“農業服”のまま、俺は王都のど真ん中でパレードに参加させられていた。
「こっちです、英雄さま!あ、麦わらの角度を少しだけ右に……!」
「え、これ本当に必要? てか俺、英雄ってより“収穫祭のおっさん”じゃね?」
俺のとなりには、例の美人プリースト──元・受付嬢の篠崎さん。
異世界では“奇跡の聖女”として知られ、今日も美しさ全開で俺の隣に立っている。
彼女は白と金の聖装に、風になびく銀髪、まばゆいオーラ。
──それに対し、俺は土まみれのツナギと麦わら帽子。
「でも……似合ってますよ?」
なんて笑顔で言われても、羞恥心は消えない。
「おっさんが農業服のまま馬車乗ってパレードとか、拷問レベルなんだが……」
ちなみに馬車の前には横断幕。
《農業革命の英雄・高野ユウジ殿 歓迎パレード》
……目立ちすぎやろ。
王都の民衆もざわざわしている。
「彼が農業革命を起こしたという……」「なぜその服装……」「いや逆に好感持てる」「聖女様とペア!? 嘘でしょ!?」
──なんという羞恥プレイ。
でもこの国では《青煌草》の流通が国策になり始めていて、
「栽培者=国の英雄」としての扱いが避けられないらしい。
俺がそれを拒否すると「国を挙げた裏切り行為」とか言い出されそうな勢いだった。
「……高野さん、私、ちょっと嬉しいんです」
となりの篠崎さんが、ぽつりと呟く。
「転生してから、何度も孤独で。でも、あなたが来てくれて、本当によかった」
「いや、俺もマジで心強いっす……心折れそうな時にいつも篠崎さんが現れるんで……もはや運命かなって」
そう言った瞬間、なぜか花びらが舞った。演出か?
それとも聖女補正か?
「ふふっ……このパレード、恥ずかしいけど……2人でなら、悪くないですね?」
──キマった。なんか今日の俺、キマってる。
だが、その瞬間。
「……高野ユウジか! あの者が“英雄”だと!? 笑わせるな!」
馬車の前をふさぐように立ちはだかったのは──
見覚えのある顔。そう、かつて俺を「スキル無し無職」と笑い、
即追放してきたあの男、元・正社員のエース金田(聖騎士)。
「おまえごときが国の象徴とは……ふざけるなァ!」
「ちょっ……せっかくのパレードに水差すなや……!」
俺はため息をつき、麦わら帽子をちょっと上げる。
「金田、あんた……まだ現実見れてねえの?」
「黙れぇぇぇぇえええ!」
あー、来る。
やっちゃう。
──そんな予感と同時に、俺は背中からスコップを抜いた。
「なら農民らしく、畑道具で対応しますか……」
会場がどよめく。
「ス、スコップ!?」「いや、あれはまさか伝説の……」「“土の神器”って言われてるらしいぞ……」
「観察、記録、解析──完了。さぁ、“土に還って”もらうぜ、課長……!」
ヒュンッ!
俺のスコップが空を切り──その瞬間、地面が隆起して課長を強制で持ち上げた。
農地操作スキル《土壌応用・肥沃結界》、通称:「バケモノ畑」。
「うわああああああああああッ!!」
ドシャァン!
金田は空高く舞い、そのまま市場の干し草にダイブした。
「……高野さん、かっこいい……!」
「篠崎さんのためです」
──こうして、パレードは無事再開。
俺の農業服も、王都の風に少しだけ誇らしげに揺れていた。
(第11話へつづく)




