23 秋の実り
この世界の秋は地球と違って少し期間が長い。それは厳しい冬を越えるための準備があるからだ。実りの秋というように秋は様々な食材や木の実などが豊富に育つ。それはこの世界でも同様のようだ。
ヴァイスたちやソラと話し合った結果、家畜や農園の世話はヴァイスたちが率先してくれることになった。ソラが彼らについて行き、補助をする形になったのだ。ソラはAIなので、私のスマートウォッチを通じて会話が出来るので確認事項の有無や連絡などが可能である。午前と午後で作物などの収納の為に必ず現場に行くことにはなるが、それ以外の時間は料理やお菓子を作り、クラフトアプリでポーションなどを作成している。
新しい農園にはソラと話し合った結果、米と麦を半分ずつ育てることにした。米はこの世界の物を、麦は地球の物を選んだ。1度収穫をして食べてみたが、米の味は地球の物とさほど変わらなかった。麦は品種改良されたものを栽培したため、この世界の物よりも品質が良く量も多かった。
「さてと、今日は鍋を購入してスープを作ろうかな」
私はネットショップを開いて大ぶりの両手鍋を購入した。今日はスープ系を作ろうと思っている。クリームシチューやビーフシチューなどのおかず系から、コンソメスープやクラムチャウダー、ミネストローネなど順番に作っていく。こちらの世界では乳製品は高級品のようで、一般的には馴染みがないものが多いらしい。反対に主流はコンソメスープらしく、さらに野菜や肉などが入っていればご馳走らしい。
私もそんなに料理が得意という訳ではないけれど、困らない程度に作ることは出来る。母が再婚して義妹と義父の4人で暮らすようになったけど、何だか息苦しく感じて家を出て一人暮らしをしていたおかげだ。
農園で採れた野菜をふんだんに使ってコンソメスープ、というよりはポトフに近い物を作っていく。食事に出す時は、粉末のスープをお湯で溶いて出すことが多い。
「よし、完成ね!」
出来上がったスープに蓋をして鍋ごとインベントリに収納する。お昼までもう少し時間があるので、ソファに座ってひと休みする。テーブルに置かれた料理の本をひとまとめにして隅に置き、ホットココアを入れたマグカップを置く。この国にはチョコレートにそっくりなショコラというモノがあるらしいが、砂糖を大量に使用するため王族や裕福な貴族しか口にすることは出来ないらしい。初めてヴァイスたちにチョコクッキーを作って食べさせたときは、目を見開いて固まっていた。ソラからこの世界の実情を学び、最近はなるべく驚かせないような料理とお菓子を出している。
「そう言えばこの領地って全体でどのくらいの大きさなのかしら?」
ふとそう思い、スマートウォッチの地図アプリを開いてみる。
私は基本的にログハウスや農園には行くけれど、それ以外の場所に行ったことがない。せっかくの異世界スローライフ。他の人を見てみたいし、町がどんな状態なのかも気になる。
「ここが私のログハウスのある孤島でしょ…」
地図見て確認すると、まず自分のログハウスのある場所が出る。そこから南に行くと最初に開拓した農園がある。ここは季節の野菜と常備菜を作っている。大きさ的にはログハウスの6倍ほどだ。その農園から左右に繋がる土地があり、東に果樹園、西に家畜エリアがある。大きさは農園の2倍ほどである。最初の農園からさらに南に行くと、新たに開拓した農園がある。米と麦を作っている農園で、最初の農園と同じくらいの大きさである。さらに南に進むと東西に2つずつ、全部で4つの大きなエリアがあることが分かる。今は自分の領地じゃないので不透明でよく分からないが、おそらく森林のような状態になっているのだろう。4つのエリアの大きさは農園の4倍ほどある。さらにその奥には道のようなものが伸びていることから、おそらくここまでが領地可能区域なのだろう。
「この道はどこに続いているのかしら…」
画面をタップしたりスクロールしたりするが、自分の領地区域まで強制的に戻される。
「これって自分の領地もしくは領地可能区域は確認出来るけど、他は表示されないってこと?もしくは、行ってみないと表示できないってことかな…」
自分のインベントリの中を見てみるとかなりの量の原木があるから、この未開拓の4つのエリアに橋を架けることは可能だろう。だが、管理できるかと言えばそれは厳しいと感じる。ただ、把握しておくことは必要だと思う。
「サエ、家畜の世話と畑の手入れ終わったよー!」
「収穫物を収納してくれ」
「あ、はい」
ヴァイスたちの声掛けにソファから立ち上がり、外に出る。ヴァイスたちは日中には作業着を着用するが、作業が終わればジーンズとシャツを着用するようになった。以前人型を取って群れで生活していた頃は、ごわごわした生地のズボンとシャツを着用していた為、似たようなデザインの洋服を着るようになった。地球産の衣服なので、肌触りや着心地は比べ物にならないくらい快適らしいが…。
私は農園、家畜の順番でインベントリに収納していく。話し合いで決定した通り農作業などに参加する機会がほぼなくなったので、この世界の女性が着るようなシャツにロングのワンピースを着るようになった。下にはレギンスを着用し、靴はショートブーツを履いている。
「さつまいもや里芋もたくさんできたよ!」
「本当ね!やっぱり肥料を混ぜると作物にいいのかも!」
積み重なったコンテナを回収し、空のコンテナを畑の隅に置いていく。
「ぶーぶの様子はどう?」
「こっこと住み分け柵があるから特に問題なく過ごしているぞ。あの2匹は妊娠中だ。2週間ほどで出産するぞ」
「え、そうなの?お産とか立ち会ったことないけどどうしたらいいのかしら…」
「出産が近くなるとぶーぶは行動しなくなる。だから、動かなくなった場所に牧草と水を置いて柵で囲ってそっとしておいてやると自力で出産する」
「そう、なの…」
「ああ、誰かが接触するとストレスなるから、そっとしておいた方がぶーぶの為だ。もうもうも一緒だぞ」
「分かったわ」
「出産が近くなったら俺が柵で囲うから、大丈夫だ」
「そう。じゃあ、柵をそこの隅に置いておくわね」
「ああ、頼む」
ヴァイスの言うとおりに、柵のクラフトで作り小屋の隅に置いておく。
「ねえねえ、最近こっこの数増えてない?」
「ああ、すまない。卵の取りこぼしがあったようで、雛が孵ってしまったんだ…」
「こっこの卵、たまに凄いところに産み落としてあるんだよね…。まあ、でも増やしてお肉にしたいから丁度いいと思うわ。卵は1日に10個から20個くらいあれば大丈夫だから」
「ああ、こっこの飼育数については後で相談したい。牧草の兼ね合いもあるからな」
「料理に使ったあとの野菜くずもあるから、それも使ってくれる?」
「ああ、わかった。家畜のエサにする分は、外に置いておいてくれ。俺が朝から回収して、こっこたちのエサにする。牧草よりも野菜の方が食いつきが良いだろう」
「分かった。ありがとう」
そう言ってヴァイスから卵の入ったカゴを受け取る。今日は20個ほどの収穫だ。夜にケーキでも焼こうかなと思い収納する。
家畜の方も順調な様子に、ほっとする。この秋で冬支度の準備をするのだ。まだ慣れない環境に不安もあるが、おおむね順調な毎日に自然と笑みがこぼれた。




