【お試し】結
明後日に何をさせられるのやら。『フラ・アンブロシオ』が小声で話し合っているが、声が低過ぎて聞き取れない。俺は舌打ちの1つや9つしたい心境であった。でも、それを表に出す心づもりは、無い。
「あァ、そうだ。試し忘れてた。」
光羅謝が手を打ったのは、彼の作った夕飯を食べ終わった頃だった。
「試すって、何をですか?」
ちょっと待ってろと言って、自室からペッドボトルを持って戻って来る。小さめのサイズで、中に黒色の布が入っていた。見覚えがある。確か複製の<使者>との交戦後、割とすぐだった。光羅謝はいつもの緑の上着を絞って、そこに染み付いた複製の<使者>の血_そのときは腐敗の<使者>を"コピー"中だった訳だが_を取っておいてたのだ。
「そー言えば何に使うのか聞いてませんでした。…てか、あれ、なんでペッドボトル腐らないんですか?」
「プラスチックは腐りづらい方だし、何より、このハンカチ入れてるからな。完璧な防腐剤が織り込まれてるんだよ。」
「へぇ〜、完璧な防腐剤ってなんですか?」
「聞いちゃ駄目。」
「俺の髪。」
メッシュ入りの髪を摘んで光羅謝。腐敗の<使者>の体が腐らないのは道理だが。なるほど、聞かなくて良かったかもしれない。ラオメに俺は頷きかけた。
「ちょっと酷くなアーい、そのカンジ。別にちゃんと洗ってるし…。」
拗ねる前にと、ラオメが爽やかな笑顔で、
「それで、試すって?」
「あーそうだ。ごめん、2人のどっちか……いや、結は短過ぎるか。」
「なんの話すか。」
「ラオメさァ、髪ィ1本くれない?」
ラオメは暫く自分の髪をいじっていたが、やがて1本の毛を引っ張り出した。
「これ枝毛だから、あげてもいいよ。」
そんなスンナリあげられるものか?とは思った。




