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12 復讐者と魔王、ふたたびの対峙2

『では、ここで消えると? 汝だけではない。汝が愛する女たちも同時に消えることになるぞ?』


 ヴィルガロドムスの視線がシアとユリンに向く。


『そう、汝は今やただの復讐者ではない。愛する女たちがいる。その愛こそが人間の弱点! そのような弱点を持つ存在が【闇】を極めることなどできん』

「愛が弱点……か」


 俺の苦笑は、嘲笑に変わった。


『何がおかしい、クロム・ウォーカー』

「お前は一つ、勘違いをしている」


 巨大な髑髏に向かって踏み出す俺。


 同時に、俺の全身から黒い鱗粉が大量に噴出した。

 固定ダメージの映像効果──【闇】の発露だ。


『な、なんだ、これは……!?』


 ヴィルガロドムスがうろたえる。


「魔王である我が、【闇】の力でなぜ──』

「【闇】には『深度』がある」


 俺は魔王を見据えた。

 冷ややかな気持ちのまま。


「俺はそれを【奈落】から教わった。同じ【闇】同士で戦った場合、より深い【闇】を持つ者が相手を傷つけ、あるいは消滅させることもできる、と」

『ま、まさか汝は──』

「俺を甘く見たな、魔王。すでに俺が抱える【闇】は──」


 黒い鱗粉が魔王の全身を侵食していく。


 再生も防御も追いつかない。

 俺の真の【固定ダメージ】には、魔王さえも抗えない。


「お前を、はるかに超えている」

『馬鹿な……馬鹿な……!?』

「愛が人間の弱点だと、お前は言った」


 俺はさらに踏み出した。


 ヴィルガロドムスが──巨大な髑髏がボロボロと崩れ始める。


「だが、その愛があるからこそ──愛が深ければ深いほど、憎しみも大きくなる。愛を知らない魔族こそ、本物の【闇】からもっとも遠い存在だ」

『我の【闇】は……人間よりも浅い、と……?』


 ヴィルガロドムスの声は愕然とした響きを帯びていた。


「人の抱える【闇】を──その深淵を味わい、消えろ」


 俺は最後の一歩を踏み出した。

 黒い鱗粉が巨大な髑髏を包みこむ。


 さらに俺は黒い鎖を放って、奴を縛りつけた。


「じゃあな、魔王様」


 そして。

 断末魔をあげることさえできずに、魔王ヴィルガロドムスが地上に残した最後の想いは消滅した。


    ※


 SIDE ユーノ


 ルーファス帝国にほど近い小国。

 そこでは魔族軍の大攻勢により、王国騎士団が劣勢に立たされていた。


「くっ、強い──」

「魔王軍の残党が……おのれぇ」


 騎士たちが次々と倒されていく。


 さすがに魔族の中でも選りすぐりの軍勢だ。

 しかも指揮しているのは、かつての十三幹部と同レベルの魔族ガヴェラ。


「ははははは! 我ら魔王様の遺志を継ぎし者! 貴様ら人間どもを根絶やしにしてくれる──ぐ、ぎゃぁっ!?」


 そのガヴェラが口上の途中で、跡形もなく消し飛んだ。

 ユーノが放った斬撃波によって。


 先ほどから丘の上で、この戦いをずっと見ていたのだ。

 そして待っていた。


 自分がもっとも映えるであろう、登場のタイミングを。


 もちろん、そんなことは彼らには言わないが。


(僕は歴史上に並ぶものがない勇者で英雄──その伝説を永遠に語り継いでもらうためには、こういう演出も大事にしないとね)


 内心でほくそ笑みつつ、騎士たちに向かって叫ぶ。


「勇猛なる王国の騎士たちよ、よく戦った! 確かに魔族軍は強い! だが、この僕が来たからにはもう恐れることはない! この勇者ユーノに続け! 世界にふたたび平和を!」

「おお、ユーノ様だ!」

「最強の勇者様!」

「みんな、ユーノ様が来てくれれば、もう安心だぞ!」


 たちまち騎士団の士気が高まった。


 ユーノは馬に乗って先頭を駆け、目についた魔族を手当たり次第に斬り伏せる。

 さらに斬撃波を飛ばし、剣が届かない範囲の敵もまとめて消し飛ばす。


 ユーノ一人で魔族の軍勢を全滅させてしまいそうな勢いである。


(他愛もない。この国を攻めてきた魔族軍もすぐに蹴散らせそうだ)


 ユーノは内心でほくそ笑む。


 これで僕の名声はますます高まることだろう。

 残る人と魔族の戦線は、あと七つ程度。


 この調子なら、二週間もしないうちに決着がつきそうだ──。


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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。







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