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論外魔力の魔法使い  作者: 宮地拓海


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64話 シロアリ駆除

 桐たんすから、もぞもぞとシロアリが這い出してくる。


「なんでこんなのを放置してたんだ?」

「ごめんなさいでしっ! ここ最近風のタリスマンを作ってなかったでしから、開けなかったんでし」


 ウセロに脅され、風のタリスマンの製作を中止していたせいで気付かなかったのか……


「それに、桐はシロアリにやられないと聞いていたでしから」


 確かに、桐たんすは被害に遭っていない。

 凄いね、桐!


 だが、そこから出たシロアリ型魔獣が家を食い荒らしていたのだ。

 駆除しなければ!


 そんなわけで戦闘態勢を取った俺たち、なの、だが……


「どう、戦おうか?」


 正直、俺に出来るのはせいぜい相手に口内炎を作ることくらいだ。


「カチヤ、もう絶対零度の氷とか、灼熱のおでんとかないのか?」

「ごめんなさいでし! もうないでし!」


 くそ。切り札を使いきったか!


「コーシ」


 スティナが俺の肩に手を置き、シロアリ型魔獣が溢れ出してくる桐たんすとは別の方向を鋭い視線で睨みつけている。

 なんだ? 後ろに何かあるのか?


「私、虫、ダメ」

「こんなところで女の子らしいな、お前は!?」

「今回、私、戦う、無理」

「カタコトになってるよ!?」


 相当苦手なのだろう、スティナがぷるぷる震えている。


「一匹なら多少は平気だけれど、こうウジャウジャいる系は……ホント、無理……」

「しょうがねぇな……、カチヤ。スティナと一緒に、ちょっと下がってろ」

「はいでし! えっと、スティナさん、こっちへ来るでし」


 出会う人すべてに介護されようとするスティナ。

 カチヤにギュッと抱きつきながら桐たんすから離れていく。


「エルセ。お前は虫、大丈夫か?」

「はい。こう見えてわたし、ムシキングって呼ばれていた時代があるんです!」

「お前の過去、すげぇ興味深いな!? 何やってたんだよ?」

「いえ。ライオンキングの真似してたら『なんか、虫みたい』って言われまして、それからしばらくの間『ムシキング』って……」

「それイジメられてない!? 大丈夫? つらいこととかなかった!?」

「いえいえ。ただの同僚との悪ふざけですよ」


 にこにこと語るエルセからは負の感情は感じられない。

 友達同士なら変なあだ名とか付けるからなぁ……つか、どんな真似をしたらライオンが虫に見えるんだよ。


「コーシさんって、変なあだ名とか付けられたことないんですか?」

「そんな昔話してる暇ねぇの、分かるよね!?」


 あるとしたら、親子丼呼ばわりされたくらいかな!? お前にな!


「エルセ。攻撃出来るか!?」

「はい! らぐなろフォンもバッテリー満タンですし、いけます!」

「よし、あとで充電してやるから、盛大に使え!」

「では! サンダーアプリをっ!」

「それやったら、この家吹き飛ぶだろうが!」


 そのアプリってあれだろ?

 しびれスライムの時に使った、あたり一面黒焦げにするとんでもない威力のヤツ!


「室内で使えるアプリはないのか!?」

「室内でということでしたら…………あっ! オートでお経を読み上げてくれるアプリがあります!」

「何に使うの、それ!?」

「ホテルとか行って、額縁の裏にお札が貼ってあった時とか、金縛りにあった時に起動するんです!」

「金縛りにあった時には起動出来ないだろ!? そして、今欲しいのそういうんじゃない!」

「では、何もないです!」

「お前は微調整とか一切出来ない生き物か!?」


 くそ!

 カチヤの家となると派手な戦闘も出来ない。

 どうする!?


「……って、考えてるうちに床を食い始めやがったぞ、あのシロアリ!?」


 ヤバい。早くなんとかしなければ、またこの家がスッカスカにされてしまう!


「ここはワシに任せるのじゃ!」


 なんとも頼もしい言葉を発し、ニコが両手の親指と親指、人差し指と人差し指をそれぞれくっつける。

 指で輪を作り、その輪を口の前へと持ってくる。


「虫系魔獣に効果覿面の害虫駆除魔法、とくと食らうのじゃっ! 『バル・ザ・サン!』」


 指で作った輪の中心へふぅ~っと息を吹き込むと、そこから真っ白な煙がもくもくと噴き出し、溢れ出したシロアリ型魔獣を包み込んだ。


「ギャピィッ!」だの「クギャァッ!」だの、短くも耳障りな悲鳴を上げ、シロアリ型魔獣は次々消滅していく。


「おぉ! 凄い威力だな!?」


 大量にいたシロアリ型魔獣が一掃された。

 それも、死骸も残さない、なんともありがたい仕様だ。


「これは、昔この街にやって来た転移者が生み出した魔法なのじゃ」


 たぶんその人、虫嫌いの日本人なんだろうな……だって、魔法の名前が『バル・ザ・サン』だもんな。


「あとは、桐たんすに仕掛けられた魔法陣を破壊すれば……にょにょん!?」


 何かの魔法を使おうとしたニコだったが、桐たんすから新たなシロアリ型魔獣が生まれ出てきていた。

 それも、うじゃうじゃわらわらと……

 あっという間に数十匹になり、振り出しに戻った。


「まいったのじゃ……」


 ニコの頬に汗が伝う。


「魔法を、同時に二つ使うことは出来ないのじゃ……」


 溢れ出てきたシロアリ型魔獣の体で魔法陣が隠される。

 これでは魔法陣を破壊することは出来ない。


 しかし、シロアリ型魔獣は倒しても倒しても次々に生まれ出てくる……


 対処する方法は、駆除魔法と魔法陣破壊魔法を同時に使用するしかない。

 だが、俺はどっちの魔法も覚えてないし…………どうする?


「『バル・ザ・サン』っ!」


 ニコが魔法を唱える横で、俺は打開策を探した。

 何かないか……何か……


 壊せない場所――それが、こんなに戦闘を苦しくするとは思いもしなかった。

 冒険者ってのは、力のコントロールも求められるのだと、俺はこの時初めて知ったのだった。






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