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論外魔力の魔法使い  作者: 宮地拓海


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45話 反撃に反撃

「ちょっとあんた! 私の冒険者カードで何やってんのさ!?」


 俺たちの背後に、例の女――冒険者カードの情報によればエーミルという名前らしい――が、鬼の形相で立っていた。

 冒険者カードを抜き取ったことがバレたらしい。


「あら? 何かいけなかったかしら?」

「ふざけんじゃないよ! この盗人…………って、あんた、あの時の!?」


 エーミルが俺の顔を見て顔色を変える。

 これで、自分の悪事を反省して謝罪の一つでもしてくれれば可愛げもあったのだが……


「そういうことかい。やられた腹いせに意趣返しってとこかい? 器の小さい男だね! 恥を知りな!」


 いやいや……恥知らずにそんなこと言われても。


「マスター! ……私の金に手ぇ付けたら、この店、潰すよ?」

「ひぃっ!?」


 エーミルの背後に、連れの男どもがずらりと居並ぶ。

 親衛隊だな、まるで。


「あんたたち。ちょ~っとはしゃぎ過ぎたこいつらに、世間の恐ろしさ教えてやんな!」

「へへっ。お安い御用だぜ」


 ガッチガチの筋肉をこれ見よがしに見せつける強面の男がゆっくりと俺たちに近付いてくる。

 それに追随するようにもう二人、後に続く。


「コーシ」


 そっと手を伸ばし、スティナが俺の肩に手を載せる。


「あとは任せたわ」

「タッチ!? この手、交代の合図か!?」


 引っかき回すだけ回しといて、尻拭いを丸投げしてんじゃねぇよ。


「あなたたち、気を付けることね。このコーシが怒ると……巨乳が揺れるわよ?」


 なんつう脅し文句だ!? で、揺れねぇわ!

 だから一斉にエーミルの胸に視線注いでんじゃねぇよ、男ども!


「おもしれぇな」


 エーミルに睨まれて、慌てて顔をこちらに向けたガチムチ男が、不遜な笑みを浮かべている。取り繕うの下手だな、お前。


「この俺とやり合おうなんて、命知らずなヤツだぜ」


 ガハハと、バカみたいにデカい声で笑う。すげぇ耳障りだ。


「俺のレベルを見たら震え上がっちまうぜ……くくく。見やがれっ!」


 自慢げに、おのれの冒険者カードを見せつけてくるガチムチ男。

 そこにはこんなことが書かれていた。



『 名前 :オーグ・ラアン

  職業:ウォーリア

  レベル:ちょー強い

  HP:すんごい

  MP:ない

  力:もりもり

  体力:パねぇ

  知能:お察し

  素早さ:どすどす

  幸運:日による     』



「「ぷぷーっ!」」


 スティナと二人で、同時に吹き出してしまった。

『ちょー強い』って!? 弱そう! つか、可愛い!


「テメェら!? 舐めてんのか!?」

「どうしましょう、コーシ。ちょー強い人がこちらを睨んでいるわ……ぷっくく」

「ちょ、おま……今、笑わせるなよ! 睨まれてんだろ!?」

「ちょーごめん」

「ぶふぅー!」


 ダメだ。「ちょー」って言われるだけで面白くなってきた。


「じゃあ、テメーらのステータス見せろよ、コラァ!? 人のを笑えるほどいいステータスなんだろうな!?」


 いや。そんなことはないが。


「見なさい」


 そう言って、スティナが冒険者カードを見せつけるように掲げる。

 こいつ、自信満々だな。


 だが、ステータスを見た男たちは一斉に腹を抱えて笑い出した。


「ぷぷー! MPが『論外』だってよ!」

「俺のじゃねぇか!?」


 いつの間に抜き取りやがった!?

 怖ぇわ、マジで! お前のスリテクニック!


「こっちが私のステータスよ。存分に見なさい」


 言ってから、ぽ~んと、オーグとかいうガチムチ男に自身の冒険者カードを放って渡すスティナ。おい、いいのか、渡しちまって?


「ひぃっ!?」


 だが、スティナの冒険者カードはすぐに投げ返されてきた。

 ……あぁ。『腐』ばっかりだもんな、こいつのステータス。みんな同じ反応するんだな。


「だが、どちらもレベルは大したことがなさそうだな?」


 と、『ちょー強い』オーグが指の骨を鳴らす。

 ……お前のレベルも、冒険者カードにバカにされてるようにしか思えないけどな。


「さぁて。骨、何本まで意識を保っていられるかな?」


 極悪人丸出しな笑みを浮かべるオーグ。


「くそ……なんで人間同士で」


 魔獣が跋扈するこの世界において、人間同士は手を取り合って魔王に対抗するべきだろうに。


「バカね。冒険者同士のいざこざなんて、日常茶飯事よ」

「けど……」


 俺のイビル・クレバスは、もふらの頬を貫通するほどの威力があるのだ……魔力のコントロールを間違えば、こいつらの首から上が吹っ飛んじまうかもしれない。


 人殺しなんか、したくねぇじゃねぇか。


「やらないと、やられるわよ」

「分かってる……けど…………」


 やるしか、ないのか?

 どこまでコントロール出来るか、分からないけれど……


 オーグたちが手斧を装備する。

 殺人鬼然とした風貌に、背筋がゾクリと冷える。

 ……あっちはマジか。


 腹を決めるしかない。

 そう思った時――


「これこれ。店内で暴れてはいかんのじゃ」


 この状況を打開してくれそうな、頼もしい声が聞こえてきた。


「マスターが可哀想なのじゃ。のぅ、コーしゃま?」


 酒場の入口に、にっこりと微笑むニコがいた。

 その後ろで、エルセが「やってやりますよ!」とばかりにふんぞり返っていたが……うん、お前はいいや。






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