36話 新たなクエスト! きゃっ☆
「見てほしいのじゃ、コーしゃま! お肌がぴちぴちなのじゃ!」
「そうかそうか。よかったな、ニコ。分かったから、あんまり飛び跳ねるな。な?」
「あぁ、コーシさんが胸ばっかり見てます」
「見てねぇわ!」
「ねぇギルド長。白菜と土鍋はないかしら?」
「お前はなに柚子ぽんを試そうとしてんだ! ねぇよ、白菜と土鍋なんか!」
「水炊きしか出来ぬが、構わんか?」
「あんのかよ!? なんだここ!? 料亭か!?」
えぇい! 一気に何回もつっこませるな! 誰か半分くらいツッコミ担当しろよ!
「そうカリカリしないでくれるかしら、コーシ? ほら、この辺の白菜もう大丈夫だから、食べなさい。そして落ち着きなさい」
「水炊きを作るな! そして当たり前のような顔をして食うな!」
咥え箸をするスティナ。
その箸を思いっきり「トンッ!」って押してやりたい。喉、「おぇっ!」ってなれ!
「ギルド長さん、ギルド長さん! わたし、お鍋の時は絶対白米必要派なんです! 炊きたてのご飯とかありませんか!?」
「……あるわけがないだろう? そなたはギルド長室をなんだと思っているのだ?」
「めっちゃ怖い顔で睨まれたです、コーシさん!? なんかわたし可哀想じゃないですかね!?」
おかしい……今のグレイスの発言は至極まっとうなのに……なんでツッコミたくなってるんだろう…………くそ、この空間は常識がねじ曲がってしまっているのか!?
「あぁ……お鍋のシメにうどんが食べたくなったわ。ないかしら?」
「ははっ、偶然だな。あるぞ」
「なんでもありか、ここ!?」
「それじゃあ、ギルド長さん! 中華麺とかないですか!?」
「あるわけないだろう。アホなのか、お前は?」
「コーシさぁ~ん!」
偶然の織り成す悪意なき差別にエルセの心がぽきりと折れる。
俺に縋りつきぶにぶに泣いている。
「ぶにー! ぶにー!」
ホントに、ぶにぶに泣いている。……なんだその泣き方?
「んぶしぃー!」
「人の服で鼻をかむな!」
「いいじゃないですか、減るもんじゃなし!」
「ここに留まってるからこそ不愉快なんだよ、お前の鼻水が!」
「まったく、騒がしいわね……コーシ。はい、柚子ぽんよ。使いなさい」
「どうやって!? つか、何に!? ティッシュとかないかなぁ!?」
「あるわけがなかろう。ギルド長室だぞ!?」
「俺もエルセ側なのかよ!? つか、ティッシュくらいあってもいいだろう、ギルド長室!」
ぎゃいぎゃいと騒がしい。もうさっさとクエストを受注してここを出ていきたい。
と、ずっと静かなニコに視線を向けると、何か分厚い本を読んでいた。
「読書か?」
「これはクエストの依頼書なのじゃ」
丈夫そうな紙の束は、現在依頼がかかっており、且つ、まだ完了していないもののようだ。
こんなにあるんだな。張り出されている以外にもありそうだ。
「それって勝手に見てもいいものなのか?」
「ダメなのじゃ☆」
わぁ~お……
「こら、ニコラコプールールー! そなたはまた勝手にクエスト依頼を引っ張り出してきおって!」
グレイスが注意をするも、さほど怒っているようには見えない。
この二人の関係性は、強い信頼で結びついている。そんなことを感じさせるやりとりだった。
「クエストが欲しいのなら、打ってつけのものがあるぞ」
そう言って、グレイスが自身のデスクに座り、何やらごそごそし始める。
「ほら、これだ!」
数分後、グレイスが俺に差し出してきた依頼書にはこんなことが書かれていた。
『捕獲クエスト
恋するワタシのハートを捕まえて!(ラヴ的な意味で、きゃっ☆)
報酬:可愛い花嫁(割れた腹筋ぺろぺろし放題だぞ、コーシ! きゃっ☆) 』
丸めて捨てた。
「おぉーい! 何をするコーシ!? お前のためのクエストだというのに!」
「うん。お金にならないからいらないや」
何が捕獲クエストだ。
「うわぁ……コーシさんって、腹筋好きなんですかぁ……」
「俺の発言じゃないもので、俺に偏見持つのやめてくれる!?」
丸めた依頼書をわざわざ広げて、俺をジトっとした目で見つめてくるエルセ。
こいつは、ホンット毎回毎回……
「コーしゃま! このクエストがいいのじゃ!」
『討伐クエスト
二人の愛の障害をぶち壊せ!(ラヴ的な意味で、きゃっ☆)
報酬:一途な花嫁(コーしゃまのためなら、なんだってしちゃうのじゃ! きゃっ☆) 』
「見たことある、こういうの!?」
「コーシ。このクエストにしましょう」
『飼育クエスト
ワタシを一生養って!(介護的な意味で、きゃっ☆)
報酬:世話の焼ける同居人(そういうのが好きなのでしょう、男なんて☆) 』
丸めてポイー!
「なんてことをするの!? 折角、一生遊んで暮らせるチャンスだったというのに!?」
「お前がな!? こっちは一生分の苦労を背負わされるところだったよ!」
そして、飼育クエストでいいのか、それ!?
「あ、あのコーシさん! い、今考えてますんで、ちょっと待ってもらっていいですか!?」
「無理に参加しなくていいから! 今すぐ筆を置け!」
「寂しいじゃないですか、わたしだけ何もないなんて!?」
「どうせ受けねぇからいいんだよ、そんなクエスト! まともなクエストを受けて、金を稼ぐの!」
「なら、こんなのはどうじゃ」
そう言って、ニコが差し出してきたのは、依頼書の束から抜き出した一枚の依頼書だった。
「少々厄介な魔獣の討伐クエスト、報酬は十万Mb。まぁ、とりあえず冒険を始める準備資金にはもってこいの額じゃと思うのじゃ☆」
にっこりと笑うニコ。
また魔獣討伐クエストか。まぁ、ニコが勧めてくるってことは、勝算があるんだろうし……
「よし、それを受けてみるか」
俺たちは、新たなクエストを受け、魔獣討伐に繰り出すのだった。




