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論外魔力の魔法使い  作者: 宮地拓海


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28話 仲間に加わる

「は、はりぃー! はりはりー! ……ねずっ」


 ……と、ネコっ毛ハリネズミが泣いている。

「がぁぁあっ!」とかじゃ、ないんだな、普段は。


「ほれ。そんなに興奮せんでもえぇ。落ち着け、ハリっ子よ」


 ニコがネコっ毛ハリネズミの前に立ち、落ち着かせようと声をかける。

 しかし、ネコっ毛ハリネズミは怯えたような目で俺を凝視している。


 ……魔獣に怖がられちまってるな、俺。まぁ、口内炎は痛いからな。


「はりっ子ちゃ~ん、大丈夫ですよ~。怖い人はわたしが退治してあげますから。このっ、このっ!」


 と、調子に乗って俺を殴るエルセ。

 ふふ……全然痛くないよ? 全っ然痛くないだけどさ……


「……あとで覚えとけ?」

「ごめんなさいですっ! 可愛い動物の前でちょっといいカッコしたかっただけなんですっ!」


 エルセが土下座したのを見て、ネコっ毛ハリネズミが「ぴゅいっ!」と鳴く。……逆効果じゃねぇか。


「ワシの魔力が枯渇しておらねば、もっと早く救ってやれたんじゃが……悪かったの」


 そう言って、ニコが何かの魔法を発動させる。

 ニコの両手が青い光に包まれ、俺たちを青く照らす。


「これは、相応の器を持たない者が分不相応な力を有してしまった時に使う救済の魔法なのじゃ……」


 そう言いながら、また自嘲気味な笑みを漏らすニコ。

 数時間で魔力が枯渇してしまうほどの魔法を習得した自分を笑ったのだろうが……


「ワシは、自分を救うことは出来んが、他人を救うことは出来るのじゃ……さぁ、ネコっ毛ハリネズミよ。その身に余る魔力をワシに寄越すのじゃ」


 ニコがネコっ毛ハリネズミの鼻先に手を差し伸べる。

 青い光がネコっ毛ハリネズミを包み込み、のみ込んでいく。


 そして、ニコが魔法の名を唱える。


「ドレイン魔法――『お前の物は俺の物』っ」


 って、おい!

 あるの、それ!? こっちの世界でも放送してるの!?


 眩いまでの青い光が収まると、ニコの手に黒っぽい、たっぷんとした、巨大な水風船のような物が握られていた。バスケットボールくらいの大きさか。


「これは対魔法神経毒の素じゃ」

「神経毒!? 触って大丈夫なのかよ!?」

「この袋に入っている間は平気じゃ」


 ニコが言うには、それは毒蛇の毒腺のように毒を溜めておく場所のようなものであり、中に溜まっている毒に触れなければ問題ないのだと言う。

 ……あのたっぷんってしたもんが全部毒…………怖っ。


「これで、ネコっ毛ハリネズミに触っても、もう毒をもらうことはなくなったのじゃ」

「ホントですか!? ぅぅうう…………にゃぁぁああ!」


 エルセがネコっ毛ハリネズミに飛びつく。


「もふーっ!」


 そして、盛大にそのもふもふの針の感触を堪能する

 ……あれ、針なのか、本当に。


「ホントです! 全然しびれないです! 凄いですニコさん!」


 もふもふ好きを公言するエルセは、ここぞとばかりにネコっ毛ハリネズミをもふもふしまくっている。…………また怒らせたりしないだろうな?


「…………もふもふ」


 もふり魔神エルセの脇で、スティナもさり気なくもふっている。


 それが気持ちよかったのか……ネコっ毛ハリネズミが「みゅ~ん!」と、可愛らしい声で鳴いた。

 そればかりか、ころんと腹を見せて寝転がったのだ。


「こ、これは! もっともふれってことですねっ!」

「そういう要望なのであるならば、これは仕方のないことね」

「はい! 仕方ないです!」

「やりましょう」

「やらいでかです!」


 腹を見せるネコっ毛ハリネズミに、エルセとスティナが飛びつき、これでもかともふりまくる。


 体長4メートルの巨大ハリネズミだ。

 腹に乗って大暴れしても、ごろんごろん転がっても、まだまだ撫で足りない。

 やりたい放題だ。


「みゅぃ~! みゅ~ん!」


 ネコっ毛ハリネズミは、それはそれは嬉しそうな声で鳴いている。


「ずっと寂しかったんじゃろうのぅ。本当は、あぁやって撫でてほしかったのじゃ」

「まぁ、強力な毒を持ってたら、あぁは出来ないもんな」

「怖いと思われて……触れ合ってももらえないのは、寂しいもんなのじゃ」


 ニコが発したその言葉は、大魔法使いと呼ばれ一目置かれているニコ自身の寂しさが滲んでいるように思えて……


「撫でるくらい、いくらでもしてやるさ」

「ふゎ……っ!?」


 俺はニコの頭をぽんぽんと撫でた。


「ワ…………ワシじゃ、ないのじゃ……」


 ウソつきめ。


「くふ……っ。けど、嬉しいのじゃ」


 毒袋を持ちにっこりと微笑むニコ。

 こいつの自嘲を完全になくすのは骨が折れそうだ。……なら、とことんまで付き合ってやろうじゃねぇか。


「コーシさん、この子飼いましょう!」

「無理だー!」

「こんなに大人しくて可愛いくてもふもふなのに!?」

「そんなデカい生き物、どこで飼うんだよ!?」

「冒険に連れて行けばいいわ。野宿の時に大変重宝するでしょうね」


 都合のいい解釈をするスティナ。


「そいつ連れてると街に入れねぇぞ」

「あら、大丈夫よ」


 自信たっぷりにスティナが言う。


「逆らう者はすべて薙ぎ払うわ、ニコが」

「他力本願で大犯罪を宣言するな!」

「まぁ、きちんと躾ければ、なるようになるじゃろうて。のぅ、コーしゃま?」


 またお前はそうやってアホの娘二人を甘やかす……全然躾けられてねぇじゃねぇか。


「コーシさん」


 ネコっ毛ハリネズミの腹から降り、俺の前まで駆けてくるエルセ。

 目の前まで来て、不安を滲ませた必死な表情で俺を見上げる。


「ダメ……でしょうか? さっきの話を聞いたら、あの子が可哀想で…………あの、ちゃんと面倒見ますから! なんなら、わたしの食費からあの子のエサ代も出しますからっ!」


 …………お前、俺の性格忘れてないか?


 そんな目でお願いされたら…………断れなくなるだろうが。


「分かったよ」

「コーシさん!」

「ただし、トラブルを起こすことがないよう、しっかり躾けろよ」

「はいっ!」


 こういう時ばっかり、いい顔をして笑いやがる。

 天界の人間の特性なのか……こういう時のエルセの笑顔はまるで天使のように見える。


「とにかく、名前でも付けてやれよ」

「それなら、もう考えてあります!」


 待ってましたと言わんばかりに胸を張り、エルセが高らかに声を張り上げる。


「あの子の名前は――『もふら』です!」

「怪獣じゃねぇか!?」


 こうして、ウチのパーティに、魔獣『もふら』が加わった……ってことで、いいのか?






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