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論外魔力の魔法使い  作者: 宮地拓海


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24話 巨大ハリネズミの猛撃

「コ、コココ、コーシさささん…………な、なんか、あのハリネズミ、鋭い目つきで何かを探してませんか?」

「そりゃお前……癇に障る騒音の元だろう……」


 声を潜め、エルセと話す。

 らぐなろフォン……絶対音を鳴らすんじゃねぇぞ……怒らせなきゃ大人しいって話だからな。


「ぐるるる……」


 巨大ハリネズミの鼻がぴくぴくと動く。

 ……デカい……怖い……


 ここは、争いを避けるために、物音を立てずに撤退した方が……


♪ぴろりろり~んっ!♪

『レベルが、あがったよぉ~!』


 エルセェ!?


「ぐぁぁああああっ!」


 とりあえず逃げた!

 ハリネズミは逃げ出した俺とエルセを追いかけてくる。

 デカいデカいデカいデカいデカいっ!


「お前、なにこの切迫した状態でプレイしてんだよ!?」

「ちちち、違うんです! 切ろうとしたら、指が間違って! いつもの癖で『プレイ』を押しちゃってっ! ホントなんです! プレイするだけで100ポイント勝手に入っちゃうんですっ!」

「あぁ、もう! お前は本当にしょーもねぇなぁ!」


 とにかく、ニコたちから引き離して、その間にニコが魔法を使ってくれれば…………なんてことを考えていた矢先。


「――ッカッ!」


 ゴォウッ! ――と、ハリネズミが口から炎を吐きやがった。

 ほゎいっ!?

 なんでハリネズミが炎!?

 お前の両親、どっちかがドラゴンだったりするの!?


「熱っ! 熱っ!」

「エルセ、大丈夫か!?」


 かろうじて炎の直撃は避けたものの、すぐそばを業火が通過していき、肌がビリビリと焼けるような感覚に襲われる。


「……わたしだって、好きでこんなことやってるわけじゃないのに……」

「やるせない表情を見せてる場合か!?」


 だだヘコミしているエルセに向かって、ハリネズミが大きなモーションを取る。

 前足を振り上げ、そして、着地と同時に背中を丸める。

 巨大なハリネズミがアルマジロのように丸くなって、全身棘だらけの玉のようになる。

 というか、ウニだ!


 そのウニが、エルセに向かって高速回転しながら突進していく。

 進行方向にある墓をことごとくなぎ倒し、高速回転するウニがエルセに迫る。


「ウニィー!?」


 らぐなろフォンのアプリを起動している暇はない。


「エルセッ!」


 策もなく駆け出した俺の横を、猛スピードで通過していく者がいた。

 ニコだ。


 ニコが光る風を全身に纏ってエルセに向かって飛んでいく。

 すげぇ!? ドラゴンボールだっ!?


「エルセ、危ないのじゃっ!」


 そして、エルセの体を側面から突き飛ばす。


「きゃっ!」


 おかげでエルセの体は迫りくるハリネズミの棘を回避出来た。

 その代わりに……


「ニコッ!?」


 今度はニコにハリネズミの棘が迫る。

 もはや回避は不可能。

 棘がニコに触れる……


「ニコォーッ!」


 無数の棘に貫かれ切り刻まれるニコの姿が脳裏をよぎり全身からイヤな汗が噴き出す。

 無駄だと知りながらも、俺の足は駆け出し、ニコのもとへと向かっていた。


「ニコォォオオッ!」


 助けたい! 絶対に!

 だが、間に合わない……っ!


 ニコが一瞬、こちらへ視線を向けた。

 その直後――棘がニコの肌に触れて……………………ふぁっさ~っと肌を撫でた。


「ニコォ!?」


 ふわっふわの綿毛にうずまるように、ニコの体が毛玉の中に消えていく。


「なんか気持ちよさそうですねっ!?」

「それは同感だが、今はそれどころじゃないだろ!? ニコッ、大丈夫か!?」


 ふわっふわの毛玉は回転を止め、再びハリネズミのような姿へと戻っていた。

 ……ニコはどこだ?


「コーシさん! いました、ハリネズミの背中に!」


 エルセの指さす先に、確かにニコがいた。

 ふわふわの針に絡まったのか、ハリネズミの背中に引っかかっている。


「わたしがもふもふついでに救出してきます!」

「優先順位が逆だろ!?」


 小鼻を膨らませてエルセが駆け出す。

 ハリネズミの背後から、そっと、しかし俊敏に。


 ハリネズミは、おのれの回転で目でも回しているのか、どこかボーとした表情をさらしている。

 ……自分で回ったんだろうが、お前。


「……コーシ」


 スティナが墓標に隠れるようにして、俺に近付いてくる。

 俺も身を隠すようにしてスティナに近付き、身を屈める。

 墓標の裏にしゃがんで顔を寄せ合う。


「やめさせてちょうだい」

「何を?」

「あのハリネズミは魔獣『ネコっ毛ハリネズミ』よ」

「なんかややこしい名前だな!?」

「ネコっ毛で、毎朝スタイリングでツンツンにとがらせている魔獣なのよ。今日みたいな寝起きの場合、あぁいう感じでふわっふわなの」

「それもうハリネズミじゃねぇよ……」


 何も、種族名に合わせて無理しなくてもいいのに……スタイリングって……


「なんか、害がなさそうだな」

「ところがどっこい」

「なぁ……過去の引きこもりは仕方ないとして、もう少し女子力高めてくんないかな?」


 最近、オッサンでも言わねぇぞ『ところがどっこい』とか。


「あの針…………針? 針なのかしら…………毛?」

「もう針でいいから! 話を先に進めてくれ! 何が危険なんだよ?」

「あの針には神経系の猛毒があるから触れると身動きが出来なくなって、最終的に呼吸困難で死ぬわ」

「エルセ逃げろぉ!」


 だが……


「…………ぅ……ごけ…………ません…………」


 エルセは「よぉ~っし! 思いっきりモフっちゃうぞ~!」感満載で飛びついたようで、面白い格好でネコっ毛ハリネズミの背中に張りついていた。

 ……おぉう、じーざす。


 ネコっ毛ハリネズミに捕らわれた二人。

 あいつらを見捨てるなんてもってのほかだ……なんとかしてネコっ毛ハリネズミを大人しくさせて二人を救出しなければ…………


「くそっ! 何か手はないのか!?」


 ポケットをまさぐると、冒険者カードが指に触れた。

 引き抜いてみると、画面にこんな文字が表示されていた。



『冒険に出る前には、きちんと準備をしようね!』



 だから、悪かったよ! 何回も同じ失敗しちゃってさぁ!



 くそっ、待ってろよ二人とも。

 なんとしても、俺が助けてやるからな!


 巨大なハリネズミを睨んで、俺はそう決意した。






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