大戦
大戦が始まる。
マルボロ王国がまず攻撃を開始し、ガウシアン王国に攻め入る。
呼応するように北の蛮族、キャビン魔道王国が進軍を開始し始める。
最早神としての力をほとんど失ったレフィクルと、神が味方をしないガウシアン王国の兵達に対して、神の代行者2人に加え神の寵愛を受けているレイチェルの神聖魔法の前では敵ではなかった。
ゴールドドラゴンが大空を舞い、ブレスを吐いて大地を薙ぎ払い次々と焼き殺し、キャビン魔道王国の止むことのない範囲攻撃魔法、蛮族達による猛る攻撃、そしてマルス率いるマルボロ兵と冒険者達の猛攻で完全に押していた。
「セッター、セーラム、サハ…サーラ3人は機を見てガウシアンに潜入してレフィクルを頼む」
「マルス様は来ないんですか?」
「行きたいが、行けそうに無いな」
「王さまだもんねー」
ということで、俺たちはガウシアン王都に潜入していた。王都は既に住民達は避難したのか人影が見えない。
「逃げたんでしょうか?」
「感知にも全く反応無いですね」
「オルくん良い子にしてるかなぁ」
セーラム、それは今はどうでもいいだろう。
城へ向かう。
俺は世界樹のエルフに貰ったローブのサイズがダボつくのを紐で縛って着ていて、杖を手にしている。一応サーラという設定で言葉使いに注意をしている。
セッターは7つ星の剣を手に俺が使っていた黒いエルフの外套姿で、セーラムはマナで紡いだ全てが金色に輝いた槍に盾、鎧姿だ。
城の門には王を護るようにライレーブが立っていた。
「来たか、王のもとへは行かせん」
「わぁ、まだ生きてたんだぁ」
「2人は隙を見て先に行ってください。今度こそあいつは私が仕留めます」
頷く2人を確認すると俺が1人でライレーブに呼吸を整え気を蓄え近寄る。
「ふん、たった1人で私に挑もうとは愚かだな。隙を作れるとでも思っているのか?女」
「思っていますよ」
瞬時に縮地法で真正面まで来るとライレーブはやっと俺のことを思い出したのか慌てて距離をとる。
「ほら、隙ができました」
「貴様あの時の!」
「覚えていましたか?貴方だけは絶対に許さない!」
「ふん、今回は遅れはとらん!」
どういう仕掛けか分からないが、こいつはしっかり止めを刺さないと死んでくれないらしい。
縮地法で背後に回り攻撃をと思ったらライレーブの姿が消えてしまう。感知でライレーブが背後に回ったのが分かり、更に俺がその背後へと回る。
ライレーブは取ったとばかりに剣を振り下ろすが、既に俺の姿はそこにはいない。
「何ぃ!」
「私の真似事で倒せると思っていましたか」
「だが、このライレーブ侮るな!」
炎の鞭のようになった剣がしなり俺の方にまるで生き物のように向かってきた。回避は流石に間に合いそうも無く、勝利を確信したライレーブの顔が口元が緩んでいる。だが、炎の鞭は空を切るとライレーブが驚きの声を上げる。
「ちょこまかと逃げてばかりどこへ行った!」
虚身を使った俺の姿は消え、エーテル化させてライレーブの攻撃を回避し、即座に虚身を解除すると思い切り蹴り上げた。
気を杖に込め神鉄アダマンティン化させると思い切り胸の肺の辺りを打っ叩いた。
メキメキメキィと骨が折れまくる音が聞こえ、杖が当たった位置がグニャグニャになっている。
ガッハッと声を上げてライレーブが地面に転げ落ち肺に酸素を送ろうとするが、既に肺は潰れて空気を取り込むことは不可能になっていた。
「今度こそ、終わりです」
ライレーブはポケットを漁り、魔法効果のあるアイテムと思われるものを取り出すが、コマンドワードを言いたくても肺が潰され言葉が出ず、苦しみ喉を掻きむしりながら酸欠で息絶えた。
苦しむ姿を見る趣味は無いが、こいつだけは苦しみ死ぬ姿を最後まで見届ける。
「いくら敵とは言っても人が息を引き取る瞬間を見るのは嫌なもんだな…
ウェラ、今度こそ仇はとったよ…」
ライレーブが死んだのを確認すると、俺はセッター達の後を追って城に入り込んで走って追いかけた。
うう、胸、結構邪魔だ……
城の中にも人影は無く、とりあえず城の1番高い場所を目指して進んでいく。
1番上に近づくと争う音が聞こえてきた為一気に高速移動で向かう。
広い一室にセッターとセーラム、そしてレフィクルがそこにいた。セッターが肩で息をしていて、セーラムがレフィクルの攻撃を必死に躱していた。
「セッター、セーラム下がって!」
「む? 新手か」
「レフィクル、年貢の納め時です!」
「余に勝てるとでも思っているのか?」
レフィクルがぶれた様に見えた瞬間に俺の後ろに現れ黒いダガーを突き出してきたが、手首に杖を当てて逸らし、手を持ち替えて逆に打ち込んだがレフィクルもその攻撃を逆の手に持った小剣で受けてきた。
二刀流か、ならばーーー
小剣で止めてきた杖を引き、持ち替えをしながら連続で攻撃をいれる。レフィクルはダガーと小剣で受けるが、数撃目で距離を取った。
「貴様、何者だ?」
「マルボロ王国レイチェル王妃様の侍女、サーラと申します」
俺は両手を前に揃えてお辞儀をしながら、今の自分の素性で答える。
「侍女、だと?」
そう言いながら視線だけで俺を頭から足まで見つめ、すぐに俺の方に視線をレフィクルが戻した。
「余の速度についてくる、そんなふざけた侍女がどの世界にいるか!」
「マルボロ王国レイチェル王妃様の侍女ですから」
ぷっとセーラムの吹き出す声が聞こえたが無視する。
逆手で杖を構えにじり寄ると、驚いたことにレフィクルが下がっていく。
「ならば此方から参らせていただきます! (アホっぽいな俺)」
飛びかかる様に一気に間合いを詰め、まずは利き腕だろうと思う、小剣を持った手の方の手首を牽制し、躱そうとした動作を確認すると、即座に手をスライドして持ち替えて黒いダガーを持つ手を狙い攻撃を繰り出す。当然レフィクルが受けるか避ける事は予想済みで、ダガーを持つ手が動くのと同時に更に俺はスライドさせて頭部を狙った一撃を打ち込む、様に見せかけて突きを出した。
「ぐぬぅ」
もろに喉元に杖が突き立てられレフィクルはよろつきながら後ろに下がった。
弱い、弱すぎる。以前戦った時は今とは違ってもっと、眼光で見つめられただけで死んだと思う様な強さがあったはずだ。これは修道士を習得したからと言う理由だけでは無さそうだ。
「貴方…本当にレフィクルですか?」
レフィクルが答えない。
俺は必死に頭を働かせ考える。高速移動を使っているのは間違いない。高速移動と二刀流と変装と来れば思いつくのは1つしかない。
「偽物ですね、貴方」
「な!」
「え!」
セッターとセーラムが声を上げる。まさかレフィクルと思い、しかも2人で掛かって苦戦していたにも関わらず偽物とは思いもしなかったのだろう。
「お見事とだけ言っておきましょう。そう、私はレフィクル様の側近の1人、スエドムッサ! 今頃レフィクル様がマルボロの王を殺しに向かっているでしょうね」
素性を知っている俺は驚き、偽物と知ったセッターとセーラムは俺と違った意味で驚いていた様だった。
「すっかりサーラで馴染んできてるわね」
「まぁ正体隠せるから利用させてもらってる」
「その割にはノリノリに見えるんだけど、私の気のせいかしら?」
「気のせいだろ」
「でもさ、次回なんかパンツ覗かれて焦ってるもんね?」
「うわあぁぁ!セーラム、だから先の話はしないの!」
「マジか?」
さぁどうなんでしょうね。
さて、次回更新は明日から夏休みを頂きまして、16日に更新させて頂きます。
少し間が空いてしまいますがご了承ください。
「誤魔化しやがった」
「サハラよりサーラの方が人気あったら、そのままでいればいいんじゃないかしら?」
「それだけは断固として断る」
まぁ前作の最後ルースミアに再開したシーンでは元に戻ってますからね。
「なら一安心かな」
でもまぁ、再開までの話だけノクターンでしてもいいんですよ?
「それ、たぶん俺の精神崩壊しそうだから絶対に止めてくれ」
「ノクターン?」
「セーラムは知らなくていい」
まぁ冗談は置いときましょう。
真面目な話で、始原の魔術師はたぶんもうそろそろ終わりになります。
更にその後のストーリーも構想は出来ていますが、1度ストップして思いっきりダークな殺伐とした話を短編で書いてみようかなぁと思っています。
とは言っても、まだ先になると思いますが……
それでは16日更新までお待ちください。




