森と竜と住処
俺はヴァリューム北部の森に来ている。ヴァリュームと元帝都を繋ぐ近道となる林道、そこを通る限りは安全は約束してくれている。
その林道から先の森に入り込んでいる。
禍々しさなどはなく、ごく普通の動植物も見られる森でまさかここにグリーンドラゴンが住み着いている。なんて夢にも思わないだろう。最もこの世界では全ての森がどうだかわからないが。
だいぶ奥地に入り込んだだろうか、突然トレントが現れ攻撃仕掛けるそぶりは見せたが、ドルイドとしての力が働いたのかトレントが迷っているようだった。
「グリーンドラゴン!居るなら出てきてくれ!覚えているかわからないが、6年前にルースミアと一緒にいた者だ!」
するとトレントは元の木へと戻り、ガサガサと森を掻き分けてくる音が近づいてくる。
感知に反応してもいいはずの距離だというのに気配を感じ取れない。まるでガウシアン王国で出会ったスエドムッサのようだった。
一応攻撃されてもいいように修道士としての呼吸法をして気をためておく。その瞬間、まるで感知よりもさらに優れたような辺りにいる全ての気配を手に取るように感じ取れるようになった。
真後ろーーー
振り返り、そちらに向きを変える。大型生物には役立たない杖を構えた。いや、正式には杖術だろう。だが修道士を習得した俺には杖術ではなく、それ以外の修道士としての杖の扱い方も可能になっている。
「お前どうやって俺様の位置が分かった?」
まるでプレデターのような背景に溶け込んでいたグリーンドラゴンは徐々に馬鹿でかい姿を現しながら声をかけてきた。その距離は既に5メートルまで迫っていた。
「敵意はない。聞きたいことがあって来たんだ。話す気がないならすぐにでも立ち去ると約束しよう」
俺は利き手で持った杖を背中に回し、逆手を頭より上に上げて敵意がないという姿勢を取って答えた。
すると木々をシュルシュルと蛇のように滑るように移動しながら俺の目と鼻の先までグリーンドラゴンは接近してくる。
「お前の匂い覚えている。あの方と確かに一緒にいた人だ。俺様に一体何の用だ?」
まだ気を許すことなく俺はドルイドがこの森にいるのかを尋ねてみた。残念なことに答えはノーで、気を落としてしまう。
それではと精霊との契約方法を知っているか尋ねるとこちらはイエスだった。
ただ残念なことにグリーンドラゴンが知っているのは精霊がいれば契約する方法を教えられると言う事で、今この森にいる精霊とはこのグリーンドラゴンが既に契約しているためこれ以上の契約はできないと言われてしまった。
だが、精霊が見つかりさえすれば契約する方法は教わることができた。
「お前がこの森のドルイドになれ。そして俺様が森の支配者でお前が森の守護者になればいい。どうだ?」
「色々教えてもらって申し訳ないんだけど、それは出来ない。なぜなら俺はルースミアに会わないといけないんだ」
理由は未だに不明だが竜族はルースミアの名を出せば下手に出てくれる。ここは素直にグリーンドラゴンも首を垂れて諦めてくれた。
俺はグリーンドラゴンに礼を言って森を去ろうとしたが、グリーンドラゴンはどうにも話を終わらせようとしない。
理由を聞けば案外くだらない理由で、たまには喋る相手が欲しいんだとーーー
日にちもまだある事だし、行く当てもなかった俺はここをしばらくの拠点にさせてもらう事にした。
ここならヴァリュームも帝都もすぐだから助けにも動きやすいはずだ。
「お前、俺様に何か隠してないか?何がある?何が起こるんだ?」
勘が鋭いな、別に隠す事は何も無いし、もしかしたら戦力になってくれるかもしれないか?
俺はグリーンドラゴンにこれから起こる大戦の事、大洪水の事を話した。そしてどう出るか伺っていると意外な反応を示した。
「俺様には関係無いな」
「俺たちが負けたら大洪水で住処を追われる事になってもか?」
「そうだ。俺様はこの森と共に生きてこの森と共に死ぬ。それに俺様はグリーンドラゴン、森のドラゴンだ」
ああなるほど、グリーンドラゴンの能力は森にあって本領を発揮する。つまり自分のテリトリー以外で戦うのは全力を出せないのと同じ事になる。
でも意外だな。グリーンドラゴンってのはこんなにも森を大事にするのか。
一応もしこの森で戦闘があった場合を聞いたら、その時は侵入者として遠慮なく敵味方問わず始末するそうだ。
グリーンドラゴンの住処に案内され、そこで来るべき日を待つ事にした。
まぁやはりというか、ドラゴンだけあって住処には財宝が結構あった。もちろん手をつけるつもりはないし、俺が見たところで金以外何が良い物か全くわからない。
「ありがとう、えっと…」
「俺様に人族の言うような名前はない。好きに呼べば良いぞ」
「そうか、そうだな…ヨルムンガンドってどうだ?俺の知っている物語では世界蛇だとか言われていて、毒を吐きかけて神を殺した伝説のドラゴンだ」
本当は殺されたんだけど、死ぬ前に吐いた毒で神を殺して相打ちとなったんだっけか。
「おおお!おま…名前はなんて言った?」
「サハラだ」
「礼を言うぞサハラ。ふむ…
ーーー1度だけだ」
「え?」
「1度だけ、助けが必要になったら俺様が手を貸してやる」
「そうか、ありがとう!ヨルムンガンド」
名前をつけられたのが嬉しかったのか、名前の由来が気に入ったのかは分からないが、ヨルムンガンドは俺に1度だけ力を貸してくれると約束してくれた。
そして精霊との契約はやはり精霊に会う必要があるが、会いたいからといって会えるものではなく、精霊自身からも助力したいと思わなければ姿を現すことはないと言っていた。
天候操作などで精霊を操っていると思っていたのは単に自然均衡の代行者として助力してくれていただけだった。
またドルイドが森に多いのは木々の精霊は守護者を欲しがり契約しやすいためだそうで、ドルイド自身もより強力な精霊との契約をするのはそうたやすくないからだそうだ。
ドルイド魔法は魅力だけど、慌てて必要というわけでもない。今は始原の魔術に騎士魔法と修道士、杖術があれば十分だ。
少し早い時間になりましたが更新です。もしかしたら今晩もう1話更新するかもしれませんが、今日はなんか寝落ちしてそうな予感が…
「ほぉどれどれ…次回はついに神がレフィクルの魂を封印する話か」
「へ〜、ルー姉さまってそういう力もあるんですね」
「さすがはルースミア様です」
「こらこらこらー!ルースミア勝手に次回の内容話してるな」
「主は何を言っているんだ。ほれテレビとか言う奴では最後に次回予告みたいなのをやってるであろう?」
「なんでルースミアがそんな事知っているんだよ!」
「竜の聖域で治療の間出番も無いから暇でな」
「そうでなくて」
「話は最後まで聞くのだ。作者の取り計らいでテレビと言うものを設置してもらい見ているのだ」
「さすがはルースミア様です」
「面白いの? ん?」
「色んな番組というのがあって楽しめる」
「なんか何でもありだなここは…」
えーと、というわけで次回はーーー
「自然均衡の神スネイヴィルスの元についに《魂抜きの籠手》が届く。いよいよ神による魂封印作戦が!
次回『魂抜きの籠手』」
「おおぉ、ルー姉さまなんかかっこいいです」
「さすがはルースミア様です」
「もう、好きにして…」
そんなわけで、今週の更新分です。寝落ちしてなければもう1話更新の可能性ありとさせてください。
また次回更新は定時更新の日曜日ですが、書溜め具合により途中で更新する事があります。
それでは




