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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第6章 死と薄まる団結
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離れた心

第6章最後です。

日が落ちて暗くなった頃、サハラがウェラさんを抱えながら僕の方を向いた。


「キャス、レジスタンスの隠れ家までお願いできないか?」


一見落ち着いたようには見えるけど、うん、口を開けば目元に涙が浮かぶ様子から相当無理してるんだね。


「うん」







レジスタンスの隠れ家に着くとマルスやレイチェル、キリシュ達がエラウェラリエルの変わり果てた姿を見て怒りに震える者、泣く者様々いた。


「彼女を私たちの森で埋葬させてはもらえないだろうか」


ベジタリアンが世界樹の元で眠らせたいと言ってきた。エラウェラリエルの故郷は遥か北の森で、キャスも行った事がないから魔法による移動もできないと言う。

キリシュ達が賛成したのでお願いする事にして、エラウェラリエルの亡骸を預ける。


キャスの転移魔法の記憶分が今日はもう無い為に、明日に主要メンバー及びワイプオール達で埋葬することが決まった。




「サハラさん、ありがとうございます。仲間を、ウェラさんを埋葬できるのはサハラさんのおかげです」


キリシュがパーティの代表で礼を言ってきたが、エラウェラリエルの遺体がこの手から離れた今の俺にはそんな事はもうどうでも良く、今俺がしたいことは1つだけだった。




「サハラさん?」



ふらふらと力無くレジスタンスの隠れ家を離れソトシェア=ペアハを出る。

心配して付いてきている人もいるのは気がついていた。


「サハラ、どうする気?」


キャスが心配そうな顔で俺をみてくるが、何をそんなに心配そうにしてるのか分からない。


「決まってるだろ?レフィクルに報復するんだよ。誰に喧嘩を売ったのか思い知らせてやる!」

「…そんな事してもウェラさんは喜ばないと思うよ」


俺はエラウェラリエルの指から抜き取ったピンキーリングを見る。


「喜ぶとか喜ばないとかは関係ない。

ただ…仲間に手を出したらどうなるか、これはその警告だ。

ーー誰であろうと叩き潰す!今の俺ならそれが出来る、それだけの力があるんだ!」


それを聞いた付いてきていた人達から緊張のようなものを感じた気がしたが、今はそんなことはもうどうでも良い。





「方角は…こっちだったな」




“俺は自然均衡の代行者”


“あるゆる自然現象を想像し”


“具現化する”


“想像するは…ハリケーン”


“大気よ暴風の女王となって”


“俺に喧嘩を売った愚か者とその城を神殿を破壊し尽くせ!”


「ハリケーンカトリーナ!!」




始原の魔術は自然が起こせることであれば、俺の想像で作り出し、望んだ場所に発生させることも可能だ。

一度も行ったことはないがガウシアン王国の城と神殿を指定したのだから王城中心に今頃暴風で大変なことになっていることだろう。




見た目では何も起こっているように見えない。だがーーー


「…これで、サハラは満足したの?」


頭の良いキャスは当然カトリーナを知っているだろうし、それがガウシアン王国に与える被害も想像出来るんだろう。



「ガウシアン王国に住む無関係な多くの人にも被害でちゃうね」

「神々がやろうとしている大洪水に比べたら可愛いもんだろ?それに被害を与えてこちらに手を出す余裕は無くせたはずだ。これで魂を死極に封じるまで()てばなお言うことないんだけどな」


パーンッ!


思いっきりレイチェルに引っ叩かれた。まぁたいして痛くはないけど。


「今のサハラは最低!大嫌い!

初めて会った頃はすごく優しくて、すごく強いのに強がったりなんてしなかった。

でも、今のサハラは何?無関係の人の命を巻き込んでまで復讐する様な人だったの⁉︎」

「俺も今のあんたの考え方は軽蔑する。

…だが、気持ちもわかる」


なんか勘違いしているレイチェルとマルスはそれだけ言うとアジトの方へ戻っていった。

一緒にいた人達も畏怖の目を向けながら戻っていき、残ったのは俺とキャスだけになった。




「なんか勘違いしちゃってるみたいだね」

「何を言っても今は聞いてはくれないだろ。

神々から連絡が来たら使い魔で連絡するよ」

「それでいいの?」

「ここに俺の居場所はもうなくなったみたいだし、セッターとセーラムに伝えたら俺は俺で行動するよ」

「まさかこのまま投げ出すの?」

「投げ出してなんかいないさ。舞台はもう整ったじゃないか」

「そっか

明日のウェラさんの埋葬はどうするの?」


俺はエラウェラリエルが身につけていたピンキーリングを見る。



「彼女ならここにいる。ここなら誰にも手出しはできないから安全だ」


俺は自分の胸に片手を添えるようにして答えた。俺が彼女との思い出を忘れなければ彼女はずっと俺の心の中にいる。


「ならもう僕は何も言わないよ」

「ありがとう。じゃあなキャス」




すっかり辺りは暗くなっているその夜空を見上げ、その空に向かって縮地法を使う。

一瞬で夜空に投げ出され、落下する前に次の移動先へ目を向けて移動していく。

短距離でいちいち面倒くさいが便利なもんだ。

俺は夜空を転々としながらヴァリューム湖を目指して移動した。








サハラは次元扉(ディメンションドア)のような奇妙な力を使って何処かに行ってしまった。


今はそっとしておいたほうがいいよね…


1人戻った僕に気になった面々が待っていて、ワイプオールさんが代表して話しかけてくる。


「キャス殿、サハラ殿はーーー」

「うんと…今後は1人で行動するって。

後サハラはいいって言ったけど…勘違いしてると思うけど、彼は決して復讐で始原の魔術を使ったりしていないからね」


それを聞いてざわつく一同。中には見捨てただとか、裏切ったと言いたい放題。サハラの言った通り、言い訳なんか聞く耳を持たなかった。これには正直ムカついたな。




僕も少し距離を置くかなーーー




決戦が近づく。

サハラは何処かへと去って行き、その後その所在は不明となる。

人類どころか世界の滅亡を賭けた大戦が目前に控えている時のことだった。




次話より第7章です。


私事ですが、風邪ひきました…

出来れば定時更新の日曜日以外にも更新させたいのですが、今週はダメそうです…


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