悪い予感
ヴァリュームに戻った俺はすぐにノーマの館に向かった。
「そのような連絡は受けてないのである」
俺が創造神の神殿で聞いた事を話すとノーマは驚きから次第に怒りへと変わっていく。
完全に遠ざけられたとしか思えない場所を任された挙句、完全に連絡を絶たれていればガウシアン王国の侯爵という地位の貴族であるノーマが怒らないはずはなかった。
「許せぬ。そんなに儂が信用ならなかったか!」
まぁ現に裏切ってるからな。
ノーマ侯爵はもし今更使いが来ても許さないし、すぐに連絡をすると約束してくれた。
その足でセッターやセーラムの元へ向かう。
「無事か⁉︎」
「マスター?」
「サハラ?」
「サハラさん?」
良かった無事だったか。
「何事ですか一体」
「無事ならいいんだ」
「あれ?帝都行ったんじゃないの?」
「ああ、行ってきたよ。行って急いで帰ってきたんだ」
「マスター転移魔法使えましたっけ?」
「走った」
「はえ?だって今朝向かったばかりでしょ?」
ホッとした俺は2人と1匹に修道士の高速移動を説明した。虚身は使えなかった為説明だけで済ませ、縮地法は使って見せて説明する。
「よくわかんないけど、人間離れしたのはわかったぁ」
「マスター、人間辞めたんですか?」
ひどい言われようだ。でもまぁ転移系の魔法も使わないでこの速度はありえないことだろうからな。
創造神の神殿で聞いた事も話し、あの時いた仲間に危険があるかもしれないことを話しておく。
「んー、じゃああっちにいる人たちは大丈夫かな?」
「キャスがついてるからたぶん大丈夫だと思う。それに明日には使い魔が戻るから、すぐに知らせに飛ばすさ」
まずはこの2人の安全が優先だ。
頼ってみるかーーー
2人と1匹を連れて俺はバルロッサ王のいる場所へ向かうことにした。
「ここには人が近寄れぬように魔術を施しておいたはずだが…と、お前かサハラ。
ん?誰だそいつらは」
「俺の仲間です。申し訳ありませんが訳あってしばらくここでかくまってもらいたいのですが頼めますか?」
即答でバルロッサは断ってきた。厄介ごとはもう沢山だと…
「マスター、そいつはリッチじゃないですか!」
「マナよ私の武具となれ!」
2人も戦闘態勢を取る。
「おいサハラ。あれはまさか儂の!」
「そうです。リングオブマナを使いこなしてます。
2人も少し待て」
「なるほどーーー」
セーラムがリングオブマナを使ったことでバルロッサも考えが変わったようだ。
2人は信用せず未だ戦闘体勢のままだが、俺の説明で納得してもらう。
そして経緯を話してしばらくの間何とかお願いしてみた。
「1つ条件がある」
「マジックアイテムの実験に協力ですか?」
「…うむ」
「命の危険が無い範囲でお願いしますよ」
分かっておるわと言うと2人と1匹に説明し、少しの間ここにいてくれるようにお願いした。
「こんなホネホネと一緒なんてやだよぉ〜」
「マスターの魔法の師であるのなら…」
「ヒドイ言い様だな。だがそこがお前の仲間らしいな」
そんなわけで何とか請け負ってもらえ、もし敵が現れたら久しぶりに暴れさせてもらうと心強い言葉も貰え一安心する。
さて、次はキャスの方か。急いでヴァリュームに1人戻る。既に夜もふけっていて、町にはギャレットを通して中へ入れてもらい、何故か妙な胸騒ぎがするなか、朝を迎えることにした。
翌朝使い魔が戻り、すぐにもう一度キャスの元に飛んでもらう。
自分でもよく分からないが妙に嫌な予感がする。落ち着かないまま昼が過ぎた頃だ。キャスが慌てた様子で転移魔法ですっ飛んできた。
「キャス⁉︎」
「サハラ帝都行ったんじゃなかったの?それはいいや。それより使い魔の連絡は届いて伝えておいたよ」
「そうか良かった。助かったよ」
「違うんだ!ウェラさんが!エラウェラリエルさんが1人であの後帝都に行っちゃったんだよ」
その瞬間俺の意識が飛びそうになった。
「サハラ!サハラ!まだ何かあったわけじゃないからさ。すぐに帝都に行こう」
「あ、ああ」
キャスのゲートの魔法で直ぐに帝都の側に移動する事にした。
頼む、何もないでくれーーー
帝都のなかに入り町を探し回るが、広い帝都で探し人は無理がある。
「サハラこっち!」
「え?」
「探知の魔法で方角だけ分かるんだ。そんな事より急がなきゃ!」
帝都をキャスの速度に合わせて走り回る。徐々に帝都を覆う壁に近づいていき、そこで行き止まってしまう。
「キャスここじゃないのか?」
「もっとこの先みたい。帝都の中じゃなかったんだ」
「でも入り口まで戻ってられないぞ」
「僕1人ならテレポートで抜けれるんだけど…」
「それなら問題ない」
それだけ言うと虚身を試す。エーテル化する事が出来た為そのまま壁を抜けた。
「驚いた。イセルアルネス(エーテル化)の魔法使えたの?」
「話は後だ。今は」
「そうだね。方角はこのまま真っ直ぐだよ」




