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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第6章 死と薄まる団結
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潜伏

ゲートを潜るとキャスの言っていた通り、ヴァリュームの町から少し離れた人気がない場所に出た。

町を囲う城壁が懐かしさを感じる。入り口まで行くと奥で何かを書いていた兵士に身分証の提示を求められ、俺たちは[商人ギルド証]を出した。

軽装な上売り荷もなかったが、[商人ギルド証]の効果は絶大で、提示した瞬間に「行け」とさっさと行けと言わんばかりに俺の肩を押された。


「凄いなこりゃ」

「エンセキさんに感謝しないとダメね」


オルのほうは10歳ぐらいの男の子にしか見えないため通行証が無くても問題無く素通りできた。

久しぶりのヴァリューム、と言っても1年ちょっとぶりだが、活気が戻りつつあるようだ。冒険者ギルドの活動が許されたといったところなのか、あれだけ見なくなっていた冒険者達が前よりは劣るが結構見受けられる。


「まずは…レイチェルの実家だな」

「お父さんお母さん、きっと驚くわね」

「そうだな、いきなり帰ってきた事とレイチェルがレドナクセラの姫だったなんて聞いたらショック死するかもな」

「うえ、それは困るわよ」

「冗談だよ冗談」


久しぶりに見るレッドエンペラードラゴンインは朝から冒険者達で賑わっていた。

きっとこれから向かう先、または冒険者ギルドの新規依頼掲示待ちとかなんだろう。


宿屋に入ると俺たち…正確にはレイチェルの姿を見ると大慌てで主人がレイチェルの母親を呼び出し、その後はてんやわんやの騒ぎになった。

レイチェルがレドナクセラ帝国の姫だと知った時は驚きのあまり両親揃って卒倒しかけたりもした。


「さっきから気になったんですが…」


チラッとレイチェルの両親に連れ添うようにいる女性に目をやる。

金髪の綺麗な女性で優しげな微笑みを浮かべながら俺たちの会話をただずっと口も挟まずのほほんと見ている。

ただ先ほどから俺をやたらと見る視線が気になっていた。


「あぁ、そうでした。こちらはシャリーさん、うちの仕事を手伝ってもらっているんですよ」

「初めましてシャリーですわ。皆様のお話常々伺っておりまして、お会いできて光栄ですわ」


歳は20ぐらいだろうか?いや、見方によって40ぐらいにも見えなくない。服装が若々しいものではないからだろうか?それと口調からどこかのお偉いさんの出何だろうか。


「へぇ〜そうなのね、お父さんとお母さんを手伝ってくれてありがとう」

「えっと、シャリーさんはどこか由緒あるところの方なんですか?その…口調が…」

「実は教えてくれんのですよ。ただここで働かせて欲しいと言うので、ちょうどレイチェルが旅に出て人手が足りなくなったところに現れたものだからそのままお願いすることになりましてねぇ」

「秘密ですわぁ」


ーーーをい。素性も分からないでよく雇ったな。もしガウシアンの関係者ならどうするんだよ。


「ガウシアン王国とは無関係なので心配いりませんわ」


心を読んだのか⁉︎いや、会話の流れで読み取って安心させるために先に言っただけ、だよな。


「サハラ様!」


バターン!と勢いよく扉が開かれるとカイが姿を見せ、俺に飛びついてきた。


「カイ姉さん!」

「カイお姉ちゃんただいまー」

「久しぶりです」

「うわぁ!カイはもう人妻だろ!少しは控えろよ!」


それぞれ挨拶をしたがそれよりも俺に抱きついて頭をこすりつけてくる。

うわ、ローブに鼻水ついたーーー


「ってあれ?どうして俺たちがいるって知ってるんだ?」


シャリーが今朝カイに話していたそうだ。なぜ分かったのか聞くとお決まりの「それは、秘密ですわぁ」で流された。


ますますもって怪しいじゃないか。


「そう気になさらないでくださいませ、サハラ王さま…はまだ早すぎましたわね」

「はぁ?さっきから何言ってるんですか?俺が王?ふざけるのも大概にしてください」


シャリーは微笑み返すと「お仕事してきますわ」とそそくさとではなく、ごく普通に出て行った。


「サハラさん申し訳ない。悪い子ではないんですが…少し変わっていましてね」


いやあれは十分変わってるだろ。それよりいい加減カイは離れて欲しいのだが…

うお汚ねぇ!ローブで鼻をかむなーーー




「それでヴァリュームに戻った理由をお聞きしても?」


今いる人達なら大丈夫だろうと、ノーマ侯爵に寝返ってもらえないかを話しにきたことを言う。

レイチェルの両親もカイもそれを聞くとなんとも言えない顔をした。


まぁそりゃそうだよな。下手すりゃ即打ち首もんだからな。

そこで俺はレイチェルとセーラム、オルはここに残し無関係を装ってもらうことをお願いした。もちろんレイチェルもセーラムも拒絶してきたが、これが作戦であることと両親にまで迷惑がかかるだろと言うと黙った。


「じゃ、じゃあその作戦を聞かせてよ。どうせサハラのことだから作戦なんて嘘なんでしょう?」

「む、馬鹿にするなよ。ちゃんと作戦はあるけど言えない」

「アヤシイ」

「セーラムまで…信じろ。勝算はあるんだ」

「ーーーはぁ…

もおぉしょぉぉがないなぁぁ。絶対に大丈夫なんだよね?」


よし、セーラムは折れた。


セーラムが折れるとレイチェルもしぶしぶながら了承してくれた。



「と言うわけで、俺とセッターはどこか別の場所で活動する。何かあれば使い魔を送るよ」

「お気をつけて。サハラ様」




そんなわけで俺は鞄ごと、セッターは7つ星の剣をレイチェル達に預け、杖と普通の小袋(スモールサック)にエルフの携帯食と水筒とセッターは普通のどこにでもある剣を持って町をうろついているわけだが…


「マスター、

ーー作戦なんて無いんですよね」

「あぁ、無い」

「だと思いました…」


そうだよ、俺は行き当たりばったりだよ。そんな作戦を立てられるほど頭良くない。


ではとセッターがどうするつもりかを聞いてきたため、簡単に考えを話す。

まず、ギャレットを探し出す。そしてギャレットに名を伏せてレドナクセラ帝国の姫を保護していることを話し、ノーマ侯爵が寝返る可能性を聞いてみる。無理であってもギャレットを引き込めるかもしれない。と。


「無理ですね」


こいつ俺の渾身の策をたった一言で切り捨てやがったーー!


「でも、まずはそうしてみますか」


どっちなんだよ。


とりあえずセッターと話し合った結果、いきなりノーマ侯爵に持ちかけるのは自殺行為だが、ギャレットを通せば内情も分かるだろうし、ダメであっても秘密は守ってくれるだろうと。


「問題はどうやってギャレット様を見つけ出すかですが…」

「それを考えるためにもまずは俺たちの潜む場所は必要だろう」



セッターにあてがあるということでついて行くとーーー


「ここってギャレットの家じゃないか」

「だった…ですね」


家は誰も住んでいる気配はなく、草は生え放題で廃屋状態になっている。確かに身をひそめるにはまさにうってつけの場所だ。だが中に入ろうとした時違和感を感じた。


「なぁ、ここ人が入った形跡があるぞ」

「足跡がありますね。しかも真新しい」

「良い方に考えれば、ギャレットがここに来ている。悪い方に考えれば空き巣とかの類か?」

「足跡を見る限り、家の内部に熟知していそうなのでギャレット様以外考えられません」


と言うことはここで待ってればギャレットに会えるかもしれないということを意味する。

ここに潜むことに決め、情報を集めたりすることにした。


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