巣立ち
もう1話だけ更新です。
「それではオルを頼みます。事が起こった際にはオルが私に教えるのですぐに駆けつけましょう」
あの後オルを紹介された。小型のゴールドドラゴンの姿は10歳ぐらいの金髪でおとなしそうな少年の姿に変わり俺たちの前に素っ裸で頭を下げてきた。
「今日から、その…宜しくお願いします」
「オルくん服は着た方がいいと思うの」
「服?あぁ、人が身につけている布切れですね。えーっとぉ、母様?」
ゴールドドラゴンが箱を出す。俺たちからすればダンボールほどの大きさのもので、中には装備が一式入っている。
「母様これは?」
「これは貴方のお父様が身につけていたものです。今の貴方に必要でしょう」
初めて身につける為どうしていいかわからないで困っているとセーラムが世話を焼いていてまるで兄弟のように見える。
かなりぶかぶかだが装備し終えると満足そうな顔をオルが見せる。
「ありがとうお姉ちゃん」
「いいよいいよ。いつでも任せてー」
頼られたセーラムも嬉しそうだ。
ふーん、息子がいるって事は父親がいるのは当たり前だが、まさか人だったとわ思いもしなかったよ。
俺がチラッとゴールドドラゴンを見れば顔をそらした。
それじゃあと俺たちはオルが加わり下山する事にする。アイボールのいた広間まで戻ると、治療が施されたアイボールがやってきた。
「オル様そいつらとどちらへビホ?」
「えっと、巣立ちだよアイボ」
犬ロボか!と思わず叫びそうになった。
「お、おでは…。ビホ?」
「アイボは母様を守ってあげて」
「い、嫌ビホー!おでも一緒に行くビホ」
なんだかんだでアイボール改めアイボはオルが好きなようで、もはやペット同然のように見えた。これがついさっきまで死闘を繰り広げた魔物なのか?
まぁ何とか宥めて出発する。アイボは大きな主眼から涙をボロボロこぼしながら俺たちに脅迫じみたお守りをお願いをした。
下山しながらオルの能力を聞いてみたが、人でいうところのソーサラーだった。そして…
「オルくん、これからは人に紛れて行動するんだから攻撃で噛み付いたらダメよ。後食べちゃダメ」
初めてルースミアの戦いを見た時と同じように戦っていた。もちろん初めて見る仲間はその戦いに引いていた。
セーラムよ、お前もかなりズレた指摘をしているぞ。
ルースミアで経験している俺は、オルに人との暮らし方を特に注意しないといけないことを教えておいた。オルはそれを素直にウンウン聞いていた。
誰かさんと違って素直ないい子だな。
竜角山の入り口に戻った俺たちは、入り口に溜まっていた他の冒険者の注目を浴びながら食事にいつもの酒場へ向かった。
「よぅ戻ったんさね。とりあえず料理と飲み物持ってくるから待ってな」
空いている席に着いて待っているがなかなか料理はおろか飲み物も来ない。
それどころか客が減ってきているように思う。
「これはまた閉店か?」
「そのようだな」
「う〜、こ、こわいよぉ」
「お姉ちゃんどうしたの?」
「オル君は平常心でね」
「はい…?」
バタンとやはり戸締りされた。そして次々と料理が山のように運ばれ、あっという間にテーブルが料理で埋め尽くされた。
「待たせちゃったね。
それで?登頂したんだろ?」
「ええ、まぁ一応」
「嬉しそうじゃないねぇ。っとそれよりあんたらいない間に毎日のように来たよ。アイツ。まぁ来るたびに追っ払っておいたさね」
「あは、あは、あはははは。ありがとうございます。ご迷惑をおかけしました」
なんでも俺たちが霊峰に入った翌日朝に現れ、俺たちを出すように言ってきたそうだ。今日はいない事を伝えると「それでは来るまで待たせていただく事にさせて頂きます」と。
そこまでは良かったのだが、鉄貨1枚(100円相当)で飲めるお茶を一杯頼み、それだけで延々夜までいたそうだ。いい加減金にもならず場所だけ取るその男がうざったくなり追い返したそうだ。
だが男は懲りずにまた現れ、旦那さんもついにはブチ切れ、愛の夫婦クロスボンバーで追っ払った。
「だけど来るんさ。それもあたいらにやられた以上にボロボロになってね」
「はい?」
「だから、あたいらの攻撃は打撃だから傷がつくようなことはないんさ。それが日に日に傷だらけになってくるんだよ」
「それは…その男の御主人様と言っていた人にと?」
「おそらくそうだろうねぇ」
うーむ、それはそれでその男が憐れに思えるな。
そこでとりあえずその男の話が終わり、霊峰の話に変わった。当然見たことのないオルの話から聞かれ、あらかじめ打ち合わせていた通り、ゴールドドラゴンが救った少年を任されたと話した。疑いの目で見られた気はしたが追及されることもなく納得してくれた。
「待たせたなぁ」
「ヒィッ!」
「あうあう…」
片付けが終わったのか旦那さんが加わった。俺はすぐにオルに目をやるが、全く気にしてる素振りは見えずいつもと変わらずぽやーんとしている。やはり幼竜と言えどドラゴンというところなんだろうか。
マルスがアイボールの事は言わず登頂までの話をする。そして目的も達成できた事も伝えた。
「じゃあ明日にでも町を出るのかい?」
「どうする?今はセッターがリーダーだ。あんたが決めろ」
「では…長旅の準備もありますし、3日だけ体を休めたら戻る事にしましょう」
「じゃああたいの方もそう伝えておくさ」
頷き返して立ち上がろうとしたところで、エラウェラリエルが俺のローブの袖を引っ張った。
「伝えるって誰でしょうね?」
「あ…サンキュ、ウェラ。
で、えっと…」
「さすがエルフと言うところだねぇ。
あんた」
今まで口を挟むことこそ無かったが、怖がらせまいと必死に歯を剥き出し、口角を上げて笑顔を作ろうとしていたのだろうが、それがむしろ逆効果で先ほどからレイチェルとセーラムは半ば意識が飛んでいる。
「信用のおける冒険者によぉ声掛けしておいてやったぜぇ」
「というわけさね。結構いるから道中は出会った魔物が憐れだねぇ」
女将さんと旦那さんの気配りに感謝し俺たちはいつもの宿屋へ向かった。
読んでくれてありがとう。
もし読んでいて意味がわからないことなどがあったら、報告ください。設定はたぶんしっかりしているのでお答えできると思います。
あと少しづつ読んでくれている方が増えているようなので、改めてお知らせしておきます。
この物語では仲間の死があります。守りきれなかったり、病気や寿命が来てしまったり。そういった重い部分もあります。
最終的にはハッピーエンドにはしたいつもりですが…当分先になりそうです。
頑張って書いていきますので宜しくお願いします。




