旧トラキアル王都
結局マルスが3匹倒し、セッターが2匹にセーラムが1匹倒して魔法で4匹にとどめを刺した。
「俺、始原の魔術使わないと役に立たないな…すまない」
「な〜に、人間得手不得手はあるさ。それに対人じゃアホみたいに強いだろ」
「うーん…」
この時ばかりは本気でルースミアに貰った腕輪の最後の1つで他の武器を習得したくなったが、マルスの言葉もありグッと我慢する。
でも、無駄に残していてもしょうがないんだよなぁ…
その後は旧トラキアルの王都まで無事に辿り着き、入り口にはガウシアンの兵が立ち入りチェックをしていた。その光景に脳裏にヴィロームの事が思い出されたのは俺だけではないだろう。
「身バレしないで何とか入り込めたな」
そう言う今のマルスの姿は、本当に貴族の息子なのか?と問いただしたい姿をしている。
「ねぇマルス、いくら身バレしない為とは言え、そこまでしなくても良かったんじゃないかしら?」
「ん?別にまたほっときゃ伸びてくるからいいだろ」
そう、マルスは身バレしない為に変装ではなく、髪の毛と眉毛を剃り落としたのだ。しかもご丁寧に顔にススまで付けて端正な顔立ちだった面影はすっかりなくなっている。
髪の毛と眉毛無くなると別人にしか見えなくなるもんだな…
「と、とりあえず王族の墓地に向かいたいところですが、マルスは場所を分かりますか?」
「あぁもちろんだ。一応貴族の息子だからな」
マルスがセッターの横を歩き道案内をしていく。旧トラキアルの王都は旧レドナクセラ帝都とは違い、華やかさはないが城を中心とした円形に広がってできている。
墓地は一般の人と同じ場所にあって、王都のように王家の墓を中心に広がってできていた。
「民の中心に王家あり、民なくして王は存在せず。これがトラキアルの王のあり方とされている。そのせいか大抵のものは円形に広がって出来ている」
そう説明され確かに地図を見れば分かるが、トラキアル領は旧王都を中心に東西南北にそれぞれ大きい町があって、その近隣に小さな町が点在している。その中の1つに過去には死の町が含まれていたのだろう。
ん、そういえば日が出てると出てこれないんだよな。
俺は精霊に呼びかけ天候を曇り空で、今にも雨が降りそうな状態に変えた。魔法にも天候を操るものがあるが、ここまで微調整は効かない自然均衡の代行者の特権だ。
「あれ?サハラ天候変えたの?」
「憑依されたままも嫌だし、これで成仏するなら短い間だったけど最後を見届けたかったからな」
「へ〜」
「何だよ」
「べっつに〜」
町娘のゴーストが俺の横に現れると頭を下げてきた。これって感謝されたってことなのかな?
墓地の中心地近くまで来ると、なんとな〜く俺に似ているゴーストがこちらを見ていて、町娘は飛びつくように王子の元へ向かう。
俺たちには聞き取りにくい途切れ途切れの会話をしていて、少しすると王子のゴーストが俺たちに頭を下げ、俺の元に町娘が何かを伝えようと口を動かすがやっぱり聞き取れない。
町娘はジェスチャーで伝えようと、俺の手を指差し指を引っ張るような仕草をする。
うん、これなら分かる。指輪を外せってことだな。
でも外せないんだよな〜…っと、取れた。
渡そうとしたら王子の墓を指差す。
言われるまま2人のゴーストがいる王子の墓の前まで来ると、指輪を指差して墓の前を指差す。
これは墓に指輪を置けということか?
そっと指輪を墓の前の地面に置くと、2人は笑顔で俺たちに頭をさげると徐々に姿が消えていった。
「これで詩も綺麗に終わりを迎えられましたね」
「なんか終わってみるとあっけなかったな」
「最後ぐらい会話できたらよかったのにね」
本当に何事もなかったように終わり、拍子抜けな感じだ。そう、ゲームならここで消えた後、何かを残していったりするのが定番なんだけどなぁ。
まぁこれが現実ってことか。
「マスター何か不満がありそうですね」
「べ、別に何か見返りを求めたりしたわけじゃないぞ」
「へ〜?そんな事考えていたんだ」
…何も言えねぇ。
その日はリーダーになったセッターの意向で、王都で一晩明かして霊峰に向かう事になった。とはいえ時間的にはまだ昼前で宿屋を決めた後は各自自由となり、俺は久しぶりにエラウェラリエルと2人で、禿げマルスはレイチェルと、セーラムは護衛としてセレヴェリヴェンとあぶれたセッターが3人で王都散策する事で決まった。
「まだ王都の状況が分かってないので、十分気をつけ目立つ行動は控えてください。また日が落ちる前までに宿屋へ戻ってください」
なんだかリーダーと言うよりも先生だな。まぁ何はともあれ久しぶりにエラウェラリエルとデートだな。
俺はエラウェラリエルの手を握って引っ張るように早速王都散策し始める。
「2人きりは久しぶりですね」
「うん、2人きりの時はもう少し砕けてくれると嬉しいけどね」
「あ…はい」
変わってね〜。これが素なのかな?
「あの、何処に行きます?」
「うーん、とりあえずはブラブラ見て回ろうか」
俺とエラウェラリエルは王都の商店が多く揃っているお店などを見て回りながら久しぶりに2人きりの会話を楽しんだ。
「サハラさん、そう言えばローブを貰ってからずっとフードを下ろしたままなんですね」
「ん、あぁ、一応ね。もしかしたらレフィクルに顔バレてると思うと怖くてね」
「怖いって…」
そう、フードに慣れるのもあるが、最大の理由はヴェニデでの影響が大きい。
あの時もし見えていたのなら、次に出くわしでもしたらどうなるか考えただけでゾッとする。
そして話題はヒルジャイアントの話へ変わっていき、俺が役に立たなかった事を話していた。
「サハラさんはちょっと特殊ですけど、人は万能ではなく役割があります。
私の場合はウィザードとして、その時記憶している魔法で出来る事をしますが、接近戦に持ち込まれたらどうにもなりません」
エラウェラリエルが言うには、俺は今のままで十分だと言う。戦士には戦士の僧侶には僧侶のそれぞれ役割があって、更に戦士でも戦闘スタイルによっては戦いにくい相手はいるものなんだそうだ。
「ウォーレンは戦斧を扱うので小型で素早い相手は苦手なんですよ。
サハラさんの場合は始原の魔術に杖と騎士魔法で戦えて、魔法まで扱えるのだから異常なぐらいです」
そう言うものらしい。
でも魔法はまだまだショボいからな。それに実際に使ってみるといちいち記憶が面倒くさいし、詠唱中の無防備状態にも不安が残る。
そして杖術は対人用で、大型の魔物を相手にした場合、騎士魔法を使ったとしても有効性はないだろう。そうなると大型の魔物は始原の魔術を使うしかなくなる。
役割かぁ。
その後はゲームなんかでは格好のイベント発生ポイントだと思うが、特にそう言う事も起こらず、夕方になるまでエラウェラリエルとゆっくりと過ごし宿屋へ戻っていった。
いつも読んでくれてありがとうございます。
今週はここまでで申し訳ありません。
次回更新は来週のこのぐらいの時間になります。
この後は霊峰攻略になっていくんですが、霊峰攻略を細かく書くか端折るか迷ってます。
ストーリー的には無駄になるサイドストーリーに近いのですが、強くなっていく場所なんですが…
もし感想欄に見てみたいとい声があれば書いてみます。特になさそうならすっ飛ばさせて貰う方向で検討します。
それでは次回更新をお楽しみに
それでは!




