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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 霊峰竜角山への道程
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吟遊詩人の詩

「セレヴェリヴェン、知ってるのか?」

「知ってるのかって…貴方はトラキアル王国の貴族の子息なのに知らないのですか?

エルフでも知っている有名な吟遊詩人の詩ですよ」

「知らん。詩に興味などない」

「吟遊詩人はうちの宿屋の食堂にもよく来て詩を歌っていたけれど、種類多いから覚えきれないわ」



吟遊詩人の詩か…ん、なんだ…これ?

今更ながら指に見知らぬ指輪をはめている事に気がついた。

かなりボロいが宝石がはまるはずの場所にはイニシャルだか印のようにも見え、所謂国王とかが手紙の封に使う様な指輪に見える。


「なんか知らないボロい指輪がはまってる」

「そういや憑依したゴーストが小部屋からなんか持ってったな。見せてみろ」


マルスとレイチェル、セレヴェリヴェンに見せようと外そうとしたが…


「と、取れない」


これが元凶臭いが憑依されてる影響なのか、どうにも外せる気配がない。ゴースト絡みだし呪いの指輪みたいなものか。

マルスはそれを見て「指切るか?」とかぬかしやがり、一瞬だけ殺意を覚えた。


仕方なく指にはめたまま指輪を見せると、セレヴェリヴェンが「これは!」とブツブツ独り言を言い始めた。


「確証はありません。ですが、ほぼ間違いなくアレクスの指輪でしょう。

ここが詩の場所でしたか」


セレヴェリヴェンが先ほど言っていた人物のようで、アレクスがどう言った人物かなどの知っている限りを話してくれた。



まぁあれだ、おとぎ話によくありそうなの話で、トラキアル王国の王子が自国領各地を訪問している時に、1人の町娘に一目惚れをしてしまう。

当然同行している世話役には身分の違いを説明され国王が認めるはずがないと諦めるように説き伏せられるが、王子は諦めきれず、城に戻るなり王である父親を説き伏せようと娘の話をしたが、貴族でも無ければ豪商や由緒ある者でもなく、本当にただの貧しい町娘に対して王が首を縦に振る事はなかった。出来なかった。

王子は王子で諦めきれず、身分を隠して町娘に逢いに行くようになった。

国王は息子である王子の気持ちを思い、知ってはいたが会う事を禁じる事まではしなかった。

ところがある日から王子が戻らなくなり、心配した国王はすぐに王子を呼び戻すために配下を遣わせたのだが、町に着いた配下はとんでもないものを目にする事になる。

町の広場に王子はいたのだが、既に息耐え素っ裸で亡骸になった姿が放置されていた。

すぐに国王に報告と調査を行うと、町の町長の息子が王子と町娘を疎ましく思い、王子はなぶり殺しにし、町娘を毒殺した事が分かった。

町長はと言うと突然現れた素性の分からない者が、町の人気を得ている事が気に入らなかった為、息子がなぶり殺しにした王子の骸を広場で晒しものにした。

王子が身分を隠していたが故に処罰する事が出来なかった国王は町娘に会う事を許した自分自身を恨み、王子の死とその報告に悲しみに暮れた。

しばらくしてその町で異変が起こり始め、最初は町長の息子が変死し、次いで町長が亡くなった。

王子と町娘に関わった者全てが変死を遂げると、今度はその町に住む者達まで変死し始め、恐れた町の民は早々に逃げ出そうとするが時既に遅く、逃げだせた者はごく僅かで、そのほとんどが気が触れていたそうだ。

まともだった者から話を聞いた国王は王子と町娘の呪いという事にし、その町の存在をなくした。

やがてその悲劇の物語は吟遊詩人の詩となったそうだ。



「それ私知ってるわ!王子と町娘の悲哀の物語よね。私が聞いたのは前半だけだったけどなんでかしら?」

「後半は最初は歌われていたそうですが、美しくないということで歌われなくなったそうです」


なるほどねぇ。ってそうじゃないだろ。


「じゃあ俺たちはどうなるんだ⁉︎」

「俺たちじゃなくて、サハラ、あんただけじゃないのか?」


頼むから今はそういう冗談やめてくれ。

つまるところ、この町に入ったことで王子と町娘の呪いで殺されるってことだろ。


「取り敢えずセッター達のところへ戻らない?離れ離れで何も知らないままって危ないと思うの」

「そうですね!」


俺たちは急いで廃屋に戻り、セッターとセーラム、エラウェラリエルにも事情を話した。


なんかさ、本格的にファンタジーからホラーに変わったよな。つうか、倒せばお終いになってくれたらどれだけ楽なんだか。

さて、俺の知っているゴーストの知識なんだが…



ゴースト、アンデッドの中でも特殊な存在で、死んでも死に切れない程の恨み辛みなどにより【死の神ルクリム】の元に行かずその場に止まってしまった存在。

強さはそのゴーストの強烈で詳細な背景によって恩恵を受けるため、今回の場合吟遊詩人に歌われ続けることで相当な恩恵を得てしまっているだろう。

厄介なのがゴーストを殺すことは不可能に近く、傷つけるためにはゴーストタッチという魔法付与がなされていない限り、魔法の武器であってもほとんどダメージを与えられない。仮にゴーストタッチの施された武器を所持していて、倒せたとしても成仏しない限りいくらでも黄泉帰る。

他の方法としては生前の肉体又は骨を燃やす事で強制的に【死の神ルクリム】の元に連れて行く事で倒すことは可能だが、今回の場合情報がなさ過ぎて探し出すのは非常に困難だ。

欠点としては他のアンデッド同様、日の光に弱いため日中は現れることはないが、日の光さえなければ日中でも現れることは可能となる。


長くなったが、こんなところだったはずだ。

唯一助かったのが、俺が自然均衡の代行者として圧倒的に強力な力により、天候を支配できているため、日中は安全だということだろうか。



「話を聞いていて気になったことが1つあります。マスターに憑依したゴーストは恐らく町娘だと思いますが、なぜマスターに指輪を渡したのでしょう?」

「そりゃあゴーストじゃあ持てないからじゃないのか?」



そうか、1つ忘れていた。

ゴーストは生前大切にしていたアイテムの非実体版の“複製品”を保持する。

元のアイテムは、ゴーストの肉体と同様、物質界に残されている。もしも他の誰かが元のアイテムを奪ってしまえば、非実体の複製品は消えうせる。これは間違いなくゴーストを怒らせ、ゴーストはそのアイテムを元の場所に取り戻すまで止まらない。

もし俺の知識通りならそれをゴーストがわざわざ渡すはずはない。



「セレヴェリヴェンさん、そのアレクスとい王子の容姿を…あまり聞きたくないけど知っていたら教えて欲しいんですけど…」

「マルクス王子の容姿ですか。私も聞いた話で見たことはありませんが、あまり見ない珍しい黒目黒か…み……」

「何それ、もしかしてサハラのことマルクス王子と勘違いでもしてるって事なのかしら?」


イヤーーーーーー!

やだそれ。おれは、マルクスじゃないしゴーストの恋人なんて要らない。というかエラウェラリエルという恋人がいる…ん…だ……

エラウェラリエルがヤバいかも…


「ウェラ、お願いがある」

「はい?」

「今すぐこの町を離れてくれ」

「ん?おー、そっかそっか。ゴーストにエラウェラリエルがサハラの恋人だなんふぇふぁふぇふぁふぁ」

「マルスの鈍感バカーーー!」




パシッ!



あ…もう、マルスのせいで遅そう。





読んでくれてありがとうございます。

今回3話分と短くなってしまい申し訳有りません。

脇道にそれたらサラッと終わらせるのもどうかと思い、長くなってしまいました。


この先1話しか進んでおらず、終わりにくくなっていまして必死な状況に…




おまけ


データ的にはD&Dとウルティマが混ざっていて、そこにオリジナルを加えています。

HPとかMPという概念はゲーム的になるため、それを如何に見せないようにさせるかで書いているので表現が難しくなっています。

ゲーム的にすればHPあるからまだ生きてるとかあるんでしょうが、どれだけ強くても状況によっては一撃で死ぬべきだろうと思っているので…

という事でサハラは設定としては相当強力な力をもたせていますが、脆さもあるんだと結構死にかける機会を書いています。


あとセーラムがあまり会話に参加してきていないのは、知識面がまだまだ未熟なため聞いているだけになっています。

エラウェラリエルは描いていませんが、常にサハラの側に居られる時は隣にいて張り付いています。

この2人ちょっと影が薄くなっちゃってますね。


取り敢えず早く死の町終わらせて霊峰竜角山行かせないと…



次回更新は来週です。

なんとか死の町から霊峰に行かせたいな。


それでは

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