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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 霊峰竜角山への道程
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つかれちゃった

今俺は見てはいけないものと見つめ合っている。こういう世界なのだから居ても当たり前なんだろうが、いざ出くわすと体は固まり何も考えられなくなる。


実体がなく半透明で地面より少しだけ浮いた人型をした姿で、死んでも死に切れず憎悪に満ち溢れているであろうゴーストとなったのだろうその顔は、非常に整った顔立ちの美女だ…


って、あれ、美女?


今更改めて二度見した瞬間、いつの間にか目の前までゴーストは音もなく近づいていて、ジッと俺を見つめていた。


「あ…」


逃げる間もなく、俺の両頬をゾッとするほど冷たい手でしかし優しく触れてくると、微笑みながら顔が近づいてきてそのまま口づけを…





「ふー、すっきりしたぜ。

もうね、あれだ気分爽快。てんこ盛りだよてんこ盛り。

……。

って、無反応かよ」


(マルス)は無反応でぼーっとしているサハラの前まで行き、顔の目の前で手を振ってみるが、まばたきすらせず突っ立ったままだ。


「まさか目開けて立ったまま寝てるのか?器用な奴だな」


まぁ正直なとこビビって邪魔だったし、何も出てくる気配もないから寝かしといてやることにするか。

それにしてもセレヴェリヴェンはここを死の町と言ったが、糞しに外出たがスペクターどころかゾンビすらいないときた。

だが、ヒルジャイアント達はここまで追ってこなかったんだから、ここには何かあるのは間違いなさそうだな。



…ん?


サハラの奴どこ行くんだ?つうか寝てなかったのか。


(マルス)が見ているのも気がついてないかのように奥の小部屋に向かって静かに歩いていく。違和感はないかと言われれば気持ち悪いぐらいにある。

まずなんというか歩き方が変だ。


あいつ内股歩きだったか?まるで女だ。

加えてまるで僧侶がやるように手を組んでいる。


さすがにおかしいと感じた(マルス)は下手に刺激しないように後をつける。

小部屋に入るとサハラの奴は何かを探し出し始めた。

さっきこの部屋は調べ尽くしたはずだ。しかも廃墟となって相当な年月が経っているからほとんどのものが脆くなっているか、崩れてしまっているはずなのだが…


何かを手にすると俺を避けて通り過ぎ、そのまま外へ出ようとする。


さすがにこれはもう放ってはおけないな。

全員起こす…必要はないな。セッターとセーラム…いや、セーラムは寝かせておくか。エラウェラリエルは寝かす必要があるし、となるとレイチェルは必須としてセレヴェリヴェンも何かを知っているかもしれない。


素早く3人を起こし、セッターに理由も言わず押し切るように2人の見張りを頼むと、寝ぼけているレイチェルとセレヴェリヴェンを連れて急いでサハラの後を追った。


「どういう事ですか?」

「ねぇサハラは?」

「俺が用を足して戻ったらなんか変になっていて勝手に外へ出て行った」


外へ出ると先ほどと変わらない女みたいな歩き方でサハラがどこかへ向かって歩いていた。


「うわ…本当だ…なんか後ろ姿見ると女の人みたい」

「あ…あ、あれは憑依されてるんじゃないんですか?」

「憑依⁉︎つまり体を乗っ取られてるって事か?」

「そうです。早く救い出さないと…」

「どうなるっていうんだ?」

「…乗っ取っているゴーストが何をしたいのかが分からないと…」


ゴーストはそのゴーストの背景、ゴーストにまでなる程の恨み辛みや心残りそういった事を成し遂げようとするそうだ。


今現段階で分かることは、このゴーストは老いた歩き方ではなく、また落ち着いた足取りから歳は成人した女性。

争った形跡などはなかったところからゴーストは襲ってきたわけではないところから、侵入者を排除するなどの様な恨みごとではないようだ。

となると憑依してまでやりたい事があるという事か。


「力ずくで止めたらどうなる?」

「怒らせる事になるだけなので、ここはサハラ殿に害が及ばない限りはゴーストの動向を見張り、成仏させる方法を探るのがいいでしょう。

それに、間もなく日が昇ります」


ゴーストは例外無く太陽の光は苦手だ。


セレヴェリヴェンの意見に従いサハラを追跡するがどうにもおかしい。ただフラフラとこの死の町をうろついているだけなのだ。


そうこうしていると一筋の太陽の光が入り込むとサハラはその場にパタッと倒れる。


「サハラ!」


レイチェルが駆け寄り抱え起すとサハラはすぐに目を覚ました。




「あれ?俺いつの間に寝ちゃった…って、ここどこだー!!

俺なんでこんな所にいるんだよ」

「何も覚えてないのか?意識がなくなる前を思い出せないか?」


寝る前…自分で寝た記憶ないな。

確かマルスが用を足しに外に行って…


「あ」

「思い出したか!」

「小部屋の方にゴーストがいて近づいてきて顔を掴まれた…それで顔が近づいてきてキスされたと思ったら意識がなくなって、気がついたらレイチェルに抱えられてた…」

「何よ!その最後の不満そうな言い方は!」

「レイチェル、それは後だ。

サハラはゴーストに今憑依されている。あんたが意識がない間フラフラと彷徨いていたんだ」

「サハラ殿、覚えている範囲だけでもいいので思い出してください。

もしかしたらゴーストの遺恨の理由が分かるかもしれません」


思い返してみる。実際にはキスをされたわけではない。そのまますり抜けるように俺の中に入ってきたような気がしたと思ったら意識がなくなっていた。

その後は寝ている状態と同じようだったが…


「ゴーストは女だった。体を乗っ取られている間は夢を見ている感じだったな」

「ど、どんな夢ですか!」

「ん、えーと、見知らぬ女性…いや、憑依してきた女性かな?一緒に町を歩いている夢だった」



マルスがそこまでで分かった情報をまとめ出した。

まずゴーストは成人女性。そして恨み辛みでゴーストになったわけではなさそうで、そうなるとやり残した事があるのではと推測している。

また彷徨いた場所と夢が一致しているがその理由は分からない。つまり目的は不明。



「うーん、それって居合わせたサハラに憑依して、この町を紹介でもしたかっただけなのかしら?」

「それなら既に成仏しているはずだ。他にサハラは何か気になる所とかはないのか?」


他にと言われてもなぁ、夢って大雑把にしか覚えていないもんだろ。だからと言って憑依されっぱなしというわけにもいかない。



「そう言えば、歩き回った場所はなんていうか…まるでデートで行くような場所ばかりだったような気がする。で、確か俺の事をアレスだかアレクとか呼んでいたような…」

「まさか!アレクス!」


普段大声を出さないセレヴェリヴェンが叫ぶように言った。




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