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始原の魔術師〜時を旅する者〜  作者: 小さな枝切れ
第4章 霊峰竜角山への道程
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ビビラー

1週間ぶりです。

今回は3話分になってしまいました。すみません。

「ここが死者の町か。もっといきなりウヨウヨ出てくるのかと思っていたよ」


今俺たちは死者の町に来ている。

と言っても奥地まで入り込んだわけではなく、廃墟に入って少し行ったところで見つかった休めそうな廃屋に入り込んだ。


「もしそうなら近場までにしていたさ。

とりあえず安全そうだからここで休もう」


魔法の記憶の必要なエラウェラリエルには早めに休んでもらい、俺とセッターは騎士魔法の感知(センス)が使えるため別々に見張りをすることになる。


やっぱ時間的に真夜中辺りがヤバいのかな。不死者…アンデッドだから幽霊とは違うと思うけどさ。


まだ時間も日が落ちてきた頃で、皆んなでエルフの携帯食をかじる。

うん、味も美味しいとまでは言わないけど悪くもない。けど一口だけでお腹は満たしたけど食った感は感じられないなこれ。


ヒルジャイアントから撤退してここに辿り着いてから2時間以上経つが死者の町に来る気配は感じられない。やはりあいつらもここには来たくない場所なんだろうか。


「追ってきているのならもう追いついてるはずだよな?追跡して来なかった可能性もあるんじゃないか?」

「その可能性もあるが、だとしたらどうする?ここを出て今から野営地探すのか?

もしかしたら何処かで町を出てくるのを待ってるかもしれないぜ?」

「そうですよマスター、今日はここで一晩明かしてエラウェラリエルさんの魔法を回復させないと。それにセレヴェリヴェンさんの矢だって残り少ないんですから」

「ここに来てしまった以上仕方がありませんね。それに一晩明ける頃には矢も補給し終えるでしょう」


セレヴェリヴェンの持つ矢筒は魔法の品で、時間と共に矢が補給されるらしい。ただし条件があって、補給するためには矢が残っていないといけないそうだ。

だから3本残していたのか。


「とりあえず見張りの順番だが、最初はセッターとセーラム、次が俺とサハラで最後にエラウェラリエルとセレヴェリヴェンで頼む」

「あれ?私は?」

「レイチェルは何かが出たら毎回起こすことになるから休めるだけ休んでいてくれ。エラウェラリエルは魔法の記憶をしながら見張りして貰って、明けたらすぐにここを出る」


説明を聞くとレイチェルはもちろん皆んな納得して、この廃屋で休めそうな場所を探し始める。


「ここいいな。こっちで見張りして、こっちの小部屋で休むとしよう」

「待て待て待てー!それフラグだ。こういう時は2手に分かれるようなことしたらだめだ」

「サハラさっきからビビりすぎだろ」

「びびってんじゃない。ホラーの基本だろ!うおっつ!」


即座に隣にいたレイチェルが俺の腰をつねりあげてきた。


「ほらー?意味がよく分からんが、小部屋にはここを通らないと来れないから大丈夫だろ」

「壁を通り抜けてきたりしたらどうするんだ!」

「確かにスペクターとか…出会いたくないけどゴーストだったらありえなくはないですね」


博識なエラウェラリエルが可能性のあるアンデッドの名前を挙げた。

スペクターなら俺らで十分対応できるが、ゴーストはそうはいかない。ゴーストの場合相当な強い恨みを持っていて、成仏させない限り何度でも黄泉帰るからだ。

情報も何も残っていない廃墟になった町で成仏しない理由を探すのは困難だろう。


「なら一度この廃屋だけでも隅々まで調べておきましょう。マスターもそれなら安心できるでしょう?」

「隅々まで調べるのはいいが、部屋分けは絶対にダメだぞ」


マルスとセッターが顔を見合わせやれやれといった表情をする。

セレヴェリヴェンはと言うと俺が言うたびに大きく頷いて『賛成です』と言っていた。


それからの行動は迅速に行い、壁はもちろん床も叩いて調べ、テーブルの上にあるものも全てチェックしていく。

俺とセレヴェリヴェンは率先してやり残しがないようにチェックしていった。


さすがに他の仲間に呆れたように見ていたが、俺はスプラッター映画は観れるが霊系のホラーは苦手だ。

別に元の世界にいた頃に霊感が強くて見えていたとかいうわけではなく、幼少期の俺に見せないように両親がコッソリ何かのテレビを見ていた。好奇心でそっと近寄りテレビを見るとホラー映画だった。しかもちょうど出てきたシーンだった。

情けないがその日から俺は霊関係全般がトラウマとなり苦手になってしまった。


「塩が欲しい…」

「塩が何か役に立つのですか?」

「ゴーストは塩が苦手だったと思う」

「そういう話は聞いたこと無いですが、サハラ殿が言うのなら間違い無いでしょうな」


たぶん効果があるはずだ。何しろズィーが前にヴァンパイア除けにニンニクを持っていたんだ。その時その他にも流れる川を渡れないとか鏡に映らない、招かれないと人の家に入り込めないなど、映画で見たのと設定が同じだったことも聞いた。そして俺の知っているTRPGでもそうだった。



「それで満足できたのか?」

「あぁ、一応思いつく限り調べた」


部屋分けは俺とセレヴェリヴェンの強い希望でやめることになり、なんとか見張りと同じ広い部屋になった。


日も完全に落ちきると不気味なほどあたりは静まり返り、時折フクロウのホーホーという鳴き声が聞こえる。


「それにしてもサハラが怖がるものがあるなんて意外だったわ」

「トラウマっていうのは仕方が無いだろう。それにゴキブリだってダメだ」

「あれはねぇ…」

「あんなもんジャイアントコックローチじゃなければ手でバシッといけるだろ?」


一同一斉にマルスを見る。

特に手のあたりを。


「「「「「ありえない!」」」」」



くだらない話で気も紛れ夜も更けていく。

しかし、俺とセレヴェリヴェンはくだらない話をしている時も時折思い出したように辺りをキョロキョロとして落ち着くことはなかった。


「そろそろ見張り以外は寝るか」


マルスが切り出すと、セッターとセーラム以外が横になりだした。


会話もなくなり、早速眠りについたと思われる寝息が聞こえたが、俺は眠れなくて目だけを動かして様子を伺うようにしていた。


セッターとセーラムが時折小さな声で話をしたり、歩く音が聞こえその度に俺は寝返るフリをしながら様子を見ていた。


「そろそろ交代ですね」

「なの」

「マスターをお願いします。私はマルスを起こします」


体を揺すられ結局寝れていないまま俺は見張りの交代となってしまった。

マルスも目覚め見張りにつくと、セッターとセーラムはさっさと横になってしまう。


「おい、ちょっくら用を足してくる」

「!!!!!」

「なんも無いって」

「我慢してくれ」

「サハラ、あんたなぁ…今何かあって戦いでも起きたら俺は漏らしかねないんだぞ。

怖いのは分かったから少しだけ我慢しろよ」


しぶしぶ俺は了解し、マルスは用を足すためにどこかへ行ってしまう。仲間が居るはずなのに部屋に1人取り残された気分になる。

寝息だけが聞こえる静まり返った部屋に1人マルスの帰りを待っている時間が異常に長く感じられた。



気配を感じてマルスが戻ったと思い振り返ろうとしたが、瞬間的にマルスが出て行った方角と違う事に気がつく。

そっちの方向は確か最初に見張り以外が休む小部屋があった所で行き止まりのはずだ。


ギギギ…と音がなりそうな感じで顔を音のした方へゆっくりと動かす。



奥の小部屋に白くぼんやりとした何かがコッチを見つめていた…




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