逃走
今週はここまでです。
俺は覚悟を決め立ち上がった時だった。
「サハラ、砂嵐だ。出来るか?」
頷く。
「じゃあ決まりだ。砂嵐を俺らの前に出して見えにくくしたら逃げるぞ!」
セレヴェリヴェンが反論しようとしたが、マルスは無視するように俺に視線を送ってきた。
砂漠じゃないから砂嵐はキツイか。
“俺は自然均衡の代行者”
“あるゆる自然現象を想像し”
“具現化する”
“想像するは砂塵の嵐”
“俺らの姿を見えなくするほどの砂塵を巻き上げろ!”
「砂塵嵐!」
俺が想像した瞬間、ドーンと音が聞こえたかと思えば爆弾でも落ちて巻い上がった煙のように砂煙のようなものが舞い上がった。
…なんか砂嵐や砂塵嵐と違う気がするな。
まぁ本物の砂嵐とか見た事ないから、とっさに思い描いたのがミサイルが落ちて黒煙を巻き上げているのを思い描いたから、想像通りといえば想像通りだな。それに見えなくなったんだからオッケーでしょ。
振り返るとマルス達の顔が引きつっているように見えたが…きっと気のせいだ。
「ほら!今のうちに逃げるんだろ!」
「お、おう。よし!皆んな走れ!できる限り距離を取るんだ」
何か言いたげな表情を浮かべているレイチェルは放っておき、皆んな一斉に逃げ出す。
いや、撤退する。
息が切れようがひたすら走り続け、やがて小走りになっていき最初に俺が根を上げた…
「もう無理…」
「相変わらず体力ないわね」
以前もこんな事があった。ちょうど5年前にヴィロームに強行軍した時だ。あの時も冒険もした事がないレイチェルより早くばてたのを思い出す。
「でもここまで来れば大丈夫なんじゃないですか?」
「いや、ダイアウルフを使って追跡してくるはずだ。彼奴らって夜行性か?」
「そう…考えておいたほうが…いいと思う…」
「それよりもサハラ、さっきの一体何よ」
「さっきの…って?」
「始原の魔術よ」
なんであれだけ走って皆んな平然としてんだよ…
皆んなも気になっていたのか視線が集中するが、なんかおかしかったんだろうか。
砂嵐ってあんなのじゃなかったっけ?
「砂塵嵐だけど…変だったか?」
「どう見ても砂嵐でも砂塵嵐でもないわ。あんなの見た事ないもの」
「見た事無かろうが俺が想像したのは間違いなく砂塵嵐だ。それに怒る事じゃないだろ?」
違った?まぁとりあえず逃げ切れたわけだし万事オッケーだろ。
「そんな事よりこの後どうするんだ?早く対策考えないといつ追いつくかわからないぞ」
「う…また、そうやってごまかす…」
「いや、確かに今はサハラの言う通りだ」
マルスが一人一人確認していくと、エラウェラリエルは使えそうな魔法はもうないらしく、セレヴェリヴェンもいざという時用に3本だけ残してあるだけだった。
セーラムはソーサラーで、魔力内包量が異常な量のため問題なく魔法が使えるようだが、未だに火球や雷撃などは使えないそうだ。
つまりセーラムは現状2レベル魔法までしか使えないって事か。俺が1レベル魔法3回しか記憶出来ないままだな。エラウェラリエルは3レベル1回に2レベル魔法2〜3回に1レベル魔法が4〜5回ってとこか?最も俺の知ってるゲームと同じならだが。
「つまり現状大ピンチって事だな」
このままだともう間もなく日が落ちて夜になる。もしヒルジャイアントが夜行性であれば休んでいる暇はない。かと言え交戦するとなると白兵戦になるまであいつらは岩や投げられるものを投げ続けるだろう。
そうなると白兵戦が主体のマルスとセッターと俺の3人はさっきと同じ結果になりかねない。しかも次はエラウェラリエルも魔法の記憶分がないし、セレヴェリヴェンも矢がない。セーラムだけじゃ魔法も頼れそうもなく、レイチェルには回復の為控えていて貰わないと困るわけだ。
「マルス様、よろしいでしょうか?」
「よろしくない。まずその様はやめてくれ。セッターは俺の配下でも部下でもなく、仲間なんだから堅っ苦しいのは勘弁だ」
「分かりましたマルス。ですがずっと従者として育ったので口調は治せそうにないです」
「なら仕方ないな。
で、アイデアでもあるのか?」
頷くセッターをも見つめながら、2人のやり取りを見ていてなんとなく俺はホッとする。今までは何かあればマスター、マスターと俺にしか話してこない。それがここにきて俺ではなくマルスに声をかけるようになり、なんとなくだけど自立してきたように見えた。
「そこはダメです!」
隠れ家を出るときに見た地図を覚えていたセッターが、ここからルートはズレるが少し行ったところに遺跡があったのを覚えていたようで、遺跡なら投擲も避けられるのではと言ったところで、セレヴェリヴェンが突然反対の声をあげる。
「そこは不死者が彷徨く廃墟で、死者の町と言われています。噂では不死者の王がいるから決して近づいてはならないと言われている呪われた場所です」
不死者の王?リッチ…じゃないな。となるとヴァンパイア辺りか?どっちにしても近寄りたくないもんだ。
「よ〜し、そこ行こう」
「なっ…人の話を聞いていたんですか!」
「他に方法あるか?このまま走って距離を取ったとしても、サハラが持ちそうにない」
ニヤッとマルスが俺を見てくる。
皆んなの視線も痛い…
「私も魔法を記憶し直したいので賛成です」
エラウェラリエルが一瞬女神に見えたが、死者の町に行くのは嫌だ。だけどこれ以上走り続けるのはもっと嫌だ。
「決まりだな」
マジか!
読んでくれてありがとうございます。
今週は話数稼げなくてすみませんでした。
来週はもう少し話数を稼げればと思いますが、想定外の方向に話が進んでしまいまして、今更変更も出来ず思案しながら書き進めています。
早く竜角山に到着させないといけないんですけどね…
次回更新は日曜の夜を予定していますが、今回のように遅れたら申し訳有りません。




