大ピンチ
ヒルジャイアント達が走り寄る俺たち3人に向かって岩を投げつけてきた。大きさで言えばおそらくバレーボールの2倍はあると思う。そんなもんが直撃したら間違いなく死ぬんだろうな。
しかも恐ろしいのはかなり正確に岩が飛んでくることだ。
「防壁!」
走るのを止め、手を前にかざして飛来してくる岩を防ぐ。横を見ればセッターも同じく防壁を使って飛来する岩から身を守っていた。
「あっら〜、それズルくね〜?ウワッと!」
「だけどこれをやっているときは身動きが取れないんだ」
「なるほどねっと!」
転がるようにしてマルスが俺の後ろに来るとフウとため息をついている。
ちゃっかりしてるな。
「どうする?このままじゃラチが明かないぞ?」
「だけど彼方さんも近寄っては来ない…わけでも無いな」
ヒルジャイアントからすれば大型犬ぐらいにしか見えないダイアウルフ5匹が走って来る。
「サハラ、あのワンちゃん達を追っ払ってくれ」
「あのダイアウルフはヒルジャイアントに飼われていて、自然界に生息しているのと違うから無理だ」
「仕方ねぇな。
セッター!俺が犬っころ殺るからサハラと一緒に岩を防いでくれ!」
セッターが近づくと的が絞られた為、岩の飛来が増すが2人の防壁で防ぐ。
ダイアウルフ5匹が接近しようとした時、1匹に矢が刺さりよろけた所にヒルジャイアントの投げた岩が当たり絶命した。
残る4匹のうち2匹もエラウェラリエルとセーラムの魔法矢に撃ち抜かれたが、怯むことなく襲いかかってくる。
「っらぁ!」
マルスがその1匹を切り裂き残り3匹になると、ヒルジャイアントが慌てたようにダイアウルフを引き返させた。
「チッ!随分と狡猾じゃねぇか!」
「けれど投げる岩は無限にあるわけではないです」
どうやらヒルジャイアント近辺の岩が無くなったのか、飛来する岩が小さな石や適当な物になったりといい加減なものが投げつけられてくる。
岩よりも小さくなったがその分先程よりも飛来速度が速くなっている。当たれば相当痛いだろう。
「キリが無いな。確か魔法に飛び道具防ぐのってなかったか?」
「俺はまだ使えないし、ウェラも用意していないかもしれない」
「じゃあ仕方ないな。奥の手を使うか?」
「あるんですか?」
「ああ、とっておきだ。
いいか?よく聞け、そして迅速に行動するんだ」
マルスの重々しい口調に俺とセッターはゆっくり頷く。
「逃げんだよ!」
そう言うとマルスは後方に控えているセーラム達の方へ猛ダッシュしはじめた。
……さすがにこれには驚き俺もセッターも呆気にとられ、その場に固まってしまい取り残されてしまう。
「ええっと…」
「マスター…」
「取り敢えず、俺たちも退がるか」
「はい」
防壁を解除して俺とセッターも一気に後方へ走り出す。
あと少しという所でセッターの足に石が当たって倒れ、それを救いに行こうとした俺は頭部にすざましい衝撃を感じて倒れてしまい、すぐに体を起こすと視界がなぜか真っ赤、痛む頭を手で押さえるとヌルッとした感触で初めて頭部に投擲された何かが命中したことに気がつく。
「マスター!」
セッターの声が薄っすらと聞こえる。
ボーッとしてくる中、バリバリバリっと電撃の音が聞こえたかと思うと、誰かに引きずられていく感覚が感じられた直後に意識を失った。
「……様…いします…を癒して!」
目が醒めると泣き顔のレイチェルが最初に映り、ゆっくり周りを見るとセッターが未だ物を投げつけてくるヒルジャイアントの攻撃を防壁で防いでいて、その隣にマナで紡いだと思われる大盾で防いでいるセーラム、盾の魔法で防ぐエラウェラリエルの姿が見え、そして牽制射撃をしているセレヴェリヴェンがいた。
「サハラ!」
「よかった!目ぇ覚ましたか!」
そして俺の体を支えていたのが姿の見えなかったマルスだった。
男にかよ…
「状況は…どうなってる?」
「大丈夫?痛いところはない?」
「…いや、今どうなってるんだ?」
「し…死んだかと思った…うわあぁぁぁぁ」
レイチェルが抱きついてきて大泣きし始める。
心配させたのは悪いけど俺が知りたいのは現状だ。どうみたって安全な状況じゃないだろ。
「正直かなりマズい。
エラウェラリエルが雷撃を使ったら彼奴ら距離を取り合って投擲してくるようになった。
とはいえお陰でサハラを助け出せたがな」
なるほど、意識を失う前に微かに雷撃の音が聞こえた気がする。
「拡散したのなら個別撃破できるんじゃないのか?」
「やろうとしたんだが…
彼奴ら躊躇なく仲間無関係に投擲してきやがるんだ」
…この調子じゃ身の危険を感じたら平然と仲間を盾にしかねないな。
しかしそうなるとやっかいだな…
「もう矢が無くなります!」
「こっちも盾がもう切れるわ!」
全滅、一瞬そんなことが脳裏に浮かんだ。
いや、まだだ。マルスには悪いがここは始原の魔術を使えば何とかできるはずだ。
ヒルジャイアントの位置を視認してみると、最低でも3メートル以上距離を取っているのが分かる。
あれだけ距離をとり合われると相当規模の大きい魔術が必要になるか。
「見事なもんだろ。オーガ程度に思っていた俺がバカだったよ。
今更だが…始原の魔術なら何とかできそうか?」
「あれだけ離れていると相当規模のでかい魔術になるぞ」
そう言うとマルスは顎に手を当てて考え出した。
「盾の効果時間が切れたわ」
エラウェラリエルが退がり、残ったセーラムとセッターが必死に四方から飛来するものを防いでいて、セレヴェリヴェンも矢が残り3本だけ残した状態で射撃を止めていた。
躊躇してる暇はないか…




