7つ星の剣
一本道の通路をしばらく進むとまた広間が見えてきた。
「感知には反応はないな」
セッターが頷いて返し、それならばと広間に入り込んだ。
中は体育館ぐらいの空間で、空気は澄んでいて何ていうか創造神の神殿を思わせる。
そして一番奥に1人の人影が見えた。
「感知に反応してないです!」
「大丈夫だ。たぶんアレは神だと思う」
「神をアレ呼ばわりはないのではないですかサハラ?」
「え⁉︎神!」
「ようこそセッター、私は【旅と平和の神ルキャドナハ】。サハラと貴方がここに来るかは運に任せるしかなかったのですが、どうやら定めだったようですね」
【旅と平和の神ルキャドナハ】と言った神は外見は端正な顔立ちをした男だった。
武装も旅を司るだけに旅衣装をしていて、戦士というイメージはない。
「それで、ここで待ち伏せしていた理由を聞かせてもらえるんですよね?」
「サハラはせっかちですね。私は代理でここに来ています。騎士魔法について聞きたいのでしょう?
まずはサハラ、貴方は騎士魔法を一体なんだと思っていますか?」
「はっきり言って騎士魔法に騎士道とかは一切関係ないと思ってます。ただこの力は非常に強力で悪用されたくない想いも感じられます」
「正解であり正解ではないです」
そう言うと騎士魔法について話してくれた。
騎士魔法と呼んでいるが、実際には瞬時にイモータル、つまり神クラスの力を扱う能力を授かるもので、定命では不可能な力を行使する能力の事だった。
一番最初に授かったレドナクセラ1世はこの力を持って平和を作り出したが、2世以降は平和の為ではなく権力と守りの為に使った。
この能力は一応騎士道にある程度順ずるため、騎士道を重んじる者には扱えるようになっていったが、正式には意味合いが違ったようだった。
「セッター、貴方には分かりますか?」
「強大な力は平和の為に使うべきという事ですか?」
「では、どのようにしてでしょう」
セッターは俺を一度見て、そして懐からギャレットに貰った手紙を握りしめると考えを纏めているようだ。
「最初は私の仕えていたギャレット様の言うように騎士道を重んじ、国に仕えて国を守る事だと思っていました。
ですが、ギャレット様の手紙にはマスターから学べとありました。
最初はまったく理解できませんでしたが、マスターといて色々と学び、力は誰かのためではなく、誰にも仕えることなく困っている者がいたら助けに向かう。
平和の為だけに振るうものだと思うようになりました」
パチパチパチパチ
【旅と平和の神ルキャドナハ】が拍手をする。その顔は満足そうで笑顔だった。
「サハラ、立派な青年に育ててくれてありがとう。彼なら騎士魔法…を任せられそうです」
「どういう意味ですか?」
「この力は7つの美徳に準じています。騎士道にはそれに近いものがあった為、神々が力を貸していました。
セッター、貴方にこの剣を授けます。もしレフィクルを倒した後に今の貴方の志が変わらなければ、平和の為に尽くしてください」
指差す方に剣が石に刺さっている。
セッターは俺を見て迷ったような顔を見せるが、俺が頷くと剣の刺さったところまで行くと一気に引き抜いた。
石から抜き取られた剣は刃は白銀で輝き刃に光り輝く点が7つ並んでいる。
「7つ星の剣です。
節制、純潔、救恤、慈悲、勤勉、忍耐、謙譲
7つの美徳とされているもの全てを司っています。貴方がこれを守って平和のために尽くす限り、剣は貴方に力を貸し続けるでしょう」
うわ、重そうな剣だな。いや重量じゃなく願いの込められた重さ的にね。
「本来ならサハラ、貴方にと思っていたのですが……そんな嫌そうな顔をしないでください」
「俺はそんな想いの重そうな剣は使いたくないですよ。それに剣は使えないですからね」
「なら万事良い方向に向かっているのでしょうね。
私も元は人でした。レフィクルを倒し平和な世界を取り戻して、旅をする楽しさを人々に感じさせてあげたい。
よろしく頼みますね」
それだけ最後に言うと【旅と平和の神ルキャドナハ】は消えていった。
とりあえず厄介ごとが1つ他人に押し付けられて良かった。本気で俺はそう思った。
セッターを見ると剣を握りしめ、想いの込められた剣をジッと見つめていた。
「マスター、私はこれからもマスターから色々学んで立派な騎士になってみせます。
そしていつかきっと、世界の平和の為になれるような事を成し遂げてみせたいです」
「そうか。大変な道程を選んだもんだな」
剣を引き抜いた場所には鞘が置いてあり、それに剣を納めると今まで使っていた剣と鞘を置いて新しく得た7つ星の剣を腰に吊るしていた。
「あの、マスター?」
「どうした?」
「この7つの美徳にある、純潔と言うのは恋愛禁止を意味しているんでしょうか?」
セッターが照れながら尋ねてきた。
一般的に純潔を守るという事は、一生独り身という意味合いなのかもしれないが、そんな事を守る意味が全くわからない。
「たぶんだけど、節制が態度などを現してると見た場合、純潔は精神面の節度という意味じゃないかな?」
肯定とも否定とも取れる答えを出しておいたほうが良いだろう。決めるのはセッターだ。
「なるほど…精神面ですか。難しいですね」
「その道を選んだのはセッターだろ」
それにしても騎士魔法が7つの美徳が関係するらしいが、俺にそんなのあったっけかな?
腕輪の力で得れたけどそんな崇高な考えはないはずなんだけどな。
まぁ自然均衡の代行者だからって事にでもしておけばいいか。
「セッター、みんなが待ってるから戻ろう」
「そうですね」
来た道を歩いて戻り、皆んなが待つ元へと戻っていった。
扉をくぐり広間へ出ると仲間たちが安堵の顔を浮かべエラウェラリエルは俺の元に飛び込んできた。
「お帰りなさい。無事で良かった」
「ああ」
「中は一体何だったんですか?」
「ん?うん。騎士魔法の意味が分かったってところかな?」
キリシュは首をかしげ意味が分からないといった感じだった。
「ここにはもう用は無くなったし街へ戻ろう」
「まだ早いかもしれないけれど、ズィーから何か連絡あるかもしれないものね」
「エンセキの方からも何か連絡があるかもしれないな」
その後8日かけて遺跡の入口まで戻り、半日歩いて旧帝都まで戻った。
道中魔物に当然襲われたが、気がつけばここまで来て経験を積んでいった俺たちの相手にならなくなっていた。




