12
一度神谷家に戻り、服を着替える。その間、智大は静江に東京での出来事を面白おかしく話をしていた。
静江はその話を楽しそうに聞いている。
そういえば、静江のそんな顔を久しぶりに見たような気がする。
「それでは、武尊君をお借りしま~す」
相変わらず軽い雰囲気で智大は武尊の肩を抱いて連れ出した。
連れて行かれたのは、普通のリーズナブルなファミリーレストランだった。
「本当は居酒屋とかがいいけど、武尊、お酒飲めないし、俺もお金がないんだよね」
「自分が食べたものぐらいは払うから大丈夫だよ」
「あっそう。それ助かる」
奢ってもらいたいと思ったわけでは無いけれど、本当にこいつ何なんだよと、武尊は思った。
二人は自分が食べたいものをタッチパネルで選んだ。
「あんた、本当に殺魔師なの?」
武尊が今まで会った人や、イメージからあまりにもかけ離れていて、信じられない。
「そうだよ。
俺が、歌って踊って、演技もできる殺魔師でーす」
「……」
「何か、本当にノリが悪い」
「あんたのノリについていける人っているのかよ」
話していると、給仕ロボットが食事を運んでくる。
二人はお皿を取ると、それぞれ食べ始めた。智大はしっかりビールを頼んで飲んでいる。
「あんたの家も殺魔師の家系なわけ?」
「ちょっと、俺のほうが歳上なんだから、あんたは止めてよ。
せめて、智さんって呼んでほしいな」
「……じゃあ、智さんも殺魔師の家系なの?」
「いや、俺は違うんだけど、何か昔から感じるものがあって、もしかしたら霊感があるかもしれないってことで、修さんに調べてもらったら、何か持ってそうだから殺魔師の修行をしてみたんだ」
「どうして殺魔師に? 」
「どうしてって、かっこいいじゃん。
それに、儲かるかなって思って」
「危険な仕事とかって、思わなかったの?」
「あんまり思わなかったな。まあ、いざとなれば逃げればいいと思ったし」
武尊は顔をしかめた。
「だってそうだろ。命あっての物種だしね。
そういう武尊はどうして殺魔師に?」
「……俺は、そういう家に引き取られたから……」
「それなら、そもそも殺魔師になるつもりはなかったの?」
「……うん。
それに、なれるなんて思わなかったし」
ふうんと智大はビールを飲み干した。
「だったら、将来どうするの?」
「将来?」
「うん。ずっとその家にいて、殺魔師を続けていくの?」
「……たぶん」
「それってどうなの? 武尊は納得してるの?」
武尊は答えられなかった。
中学生時代はよく家出をしていた。
だけど恭介の協力をするようになってからは、物部家から出て行くことも考えなくなった。
しかし恭介が帰ってこない今、物部家にいる理由もない。
「俺、その家の当主なんだ……。
だから、将来を好きに選べないと思う
「それって、おかしくない?
そりゃ昔はそういう考えで、殺魔師やってた人も多いかもしれないけどさ、今は自分のしたいことを我慢してまで命をかけてする仕事だとは思わないけど」
「……だけど、俺、今までそんなこと考えたことなかったからさ」
いつの間に頼んでいたのか、智大のところに二杯目のビールが届けられる。
「俺さ、有名になりたいんだよ。
そのためだったら、別に芸能人にこだわってるわけじゃないんだ。
だけど、今の時代、若い俺が有名になる近道って、テレビに出ることじゃないかなって思うんだよな。だからそのために頑張ってる。
だけどさ、どこかの家に属して殺魔師やってると、意外と自由が利かないんだよ。
表に顔を売るのを嫌がる家だってあるから、芸能活動なんて厳禁のところもあるしね。
そんなの窮屈だから、俺は家には属さないフリーの殺魔師をしてる」
「フリーの殺魔師?」
そういうと、智大はスマホを取り出してアプリをタップする。
「これね、警察庁対怪魔局特別対策課ってとこの、特別なアプリ。
フリーの殺魔師は一定条件をクリアしたら、警察庁対怪魔局特別対策課に臨時職員って形で契約ができるんだ。
で、近くに怪魔が現れたときには連絡が入って、すぐに駆けつけられる者はすぐに現場に行けるシステムになっているんだ。もちろん少ないけれど、毎月給料も出る」
智大はアプリの画面を見せながら説明してくれた。
「つまり何が言いたいかって言ったら、家っていう組織に属さなくても、殺魔師は続けられるし、殺魔師をしているからって、自分のしたいことを諦めなくてもいいんだよ」
物部家しか知らない武尊にとって、智大の言葉は驚きの連続だった。
「武尊がこのままでいいって思っているのなら別だけどさ、もしも家に縛られて、将来のことを考えられないとしたら、もったいないって思うんだ」
武尊は目をそらして考えた。
武尊の周りの人は、そんなことを言ってくれる人はいなかった。そして、武尊自身が、将来のことを考えて来なかった。
物部家に引き取られる前は、母親を助けるために高校を卒業したらすぐにでも働くつもりだった。
しかし物部家では、できることなら大学に行けと言われる。
葵がそのように進学をしていたからかもしれないからか、それが当たり前の進路のように思っているようだった。
だけど、武尊は大学に魅力を感じないし、そもそも勉強が好きではない。
だったら何か仕事をしながら、物部家で殺魔師をして生きて行くんだろうなと、漠然と思っていた。
「でも、俺、少し特殊だから、たぶん条件はクリアできないと思う」
「特殊って?」
「実は霊力が無いんだよ」
武尊は玉依のことを智大に話した。
智大は興味深く、武尊の話を聞く。
「だったら、俺と組まない?」
「えつ?」
「そもそも、殺魔師って二人一組で動かないと駄目だろ。このアプリの場合は、知らない者同士で組むことが多いんだ。
だけど、俺と武尊とで組んでたら、俺も知らないやつと組む必要はないしさ、なんとなくなんだけどさ、武尊とは気が合うような予感がする」
智大は、ポテトをつまみながら笑った。
「そんな、実力も知らないでよく言えるよな」
「感だよ感。俺、感覚派だから」
やっぱり適当なやつだと、武尊は呆れた。
「まあ、気が向いたら連絡しなよ」
そういうと、自分の連絡先を武尊に強引に教えた。
「武尊はもっと自分に可能性があることを知ったほうがいいと思うな。
俺からしたら、どうしてそんな窮屈に生きてるのか、不思議だよ」
変な奴と思いながらも、武尊は智大の言葉に惹かれてかけている自分がいることも否定できなかった。
武尊を神谷家まで送り届けると、智大は肌寒く感じる夜道を一人帰っていた。
そんなとき、スマホからアラームが鳴る。
アプリを開けると、対怪魔局からの連絡だった。智大のいる場所の比較的近くに、怪魔が現れたらしい。
場所を確認すると、智大はもう片方のポケットからガラケーを取り出し、電話をかける。
「もしもし、俺。
怪魔が出ましたよ。あの子、試してみます?
俺もすぐ行きますね。
あと、今日、俺、また面白そうな子を見つけたんですよ。
また紹介しますね」
そういう、智大はガラケーを閉じて、鼻歌を歌いながら走り出した。
その夜、現れた怪魔を、少女が連れ去ったという不可解な事件が起こった。
そのようすを目撃した警察官によると、少女が歌うと、怪魔はまるで小鳥のように少女に寄り添ったという。
本作品は個人創作です。
一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。
本作はフィクションです。作中には実在する地名や施設名などが登場しますが、物語の演出上、設定や描写には創作・脚色が含まれます。実在の人物・団体・事件とは関係ありません
「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。
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