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怪魔のいる世界で生きている  作者: さち
夜の月に照らされる影法師の子

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※本作には虐待や暴力など、心身に負担を感じる可能性のある描写が含まれます。物語上必要な表現として描写していますので、苦手な方はご注意ください。

 恭介の体は海の中を漂うクラゲのように、ふわふわと心もとない空間のなかにいた。たまに目を開けると、若菜が心配そうに見えていたので、おそらくこれは夢の中なのだろう。

 仰向けになって漂っていると、恭介は自分の頭上に星が輝いているのが見えた。

 それは現実で見える星ではなく、アニメや漫画で表現される、頂点が五つある、あの星だ。

 それが愉快そうに三つ、キラキラと輝いていた。

 どこかで見たことがある。

 恭介が思いを巡らせる。そして気がついた。

 それは祖母の二の腕にあるあざと同じ形だった。

 まだ祖母に抱かれていたぐらい幼いころ、その星形が不思議で、同じものが自分にも欲しいと言っては祖母を困らせていた。

 そんな時祖母は、恭介の二の腕にマジックで書いてくれるのだ。

 しかし、本人はそのあざをずいぶんと嫌っていた。だから、祖母が半袖を着ていた記憶は全くない。

 そう言えば、しばらく家にも帰っていないけど、入所してしまった祖母は元気だろうか。

 祖母と過ごしたあの家はどうなっているだろう。

 恭介が心配すると、体が直立になり地上に降り立った。その目の前には懐かしい我が家がある。

 恭介は迷わずドアを開く。光が満ちて、恭介の体は吸い込まれて行った。






「恭介、今日は一緒に宿題しない?

 若菜、数学よくわかんないのよ」

 その声にはっとして、恭介は辺りを見回した。そんな恭介を若菜は不思議そうな顔で見る。

「どうかした?」

「何でもないけど、なんだろう。変な感じ」

「ぼーっとしてるのはいつものことだけど、今日は特にへんね」

「そんなことないよ。それに、いつもぼーっとはしてないし」

 恭介は眼鏡を持ち上げながら、ムキになって反論するが、若菜はコロコロ笑うばかりで相手にしてくれない。そんな若菜をまぶしそうに見ながら、恭介はふてくされたように口をとがらす。

「どっちにしても、今日はだめ。ばあちゃんとこに、着替えを届ける日だから」

「幸も来るよ」

 クラスメイトで若菜の親友の名前が出てきて、恭介はますます顔をしかめる。

「女子二人に男子一人って、もっと嫌。いつまで女子と遊んでんだって、友だちにバカにされる」

「恭介って、そういうの気にするんだ」

「それに若菜と幸の話って、だいたい恋愛でしょ。そういうのも興味ないし」

 若菜は思いきり不平を漏らす。

「なんで。楽しいじゃない。

 そう言えば知ってる? クラスの川上さん、2年の男子に告白されたんだって」

「そうなの?」

「付き合うと思う? 年下だよ」

「どっちでもいいんじゃない」

「若菜も告白されてみたいな。できれば年上がいいけど、高校生と出会いないしな」

「若菜みたいなうるさいやつ。相手にされるわけないじゃん」

「そんなのわかんないよ」

「わかるよ。絶対に無理」

 二人が学校から他愛のない話をしていると、あっという間に若菜の家についた。

「ご飯は食べに来るんだよね」

 若菜はくるりと振り返り、恭介を見つめた。

 恭介は目をそらしながら、頷く。

「ばあちゃんのとこから帰ったら」

「お父さんのにも言っとくね。じゃあ、また後でね!」

 若菜はセーラーの裾をなびかせながら、元気いっぱい家へと入っていった。

 恭介の家は、そこから数十メートル先の平屋建ての家だ。

 若菜の家が、今風の明るい洋風家屋なら、恭介の家は少し古びた日本家屋である。

 恭介はポケットから鍵を取り出すと、家の中へ入って行った。


「ただいま」

 と誰もいない部屋に向かって、いつもの癖で挨拶をする。かばんを置いて、手洗いうがいをする。朝干した洗濯物を取り込んで、たたむと、入院している祖母の着替えを用意する。

 3日ほど前、突然不調を訴えた祖母は、近くの病院に入院中だ。幸い病状はたいしたことないらしく、学校帰りに寄るたびに、早く帰りたいと不平を言っている。

 母親はおらず、父親は東京で研究者として働いている恭介には、祖母だけが頼りである。

 だから早く帰ってきてほしいとは思うものの、悪いところがあればしっかりと治してほしいとも思っていた。

 祖母の用意ができると、恭介は自転車に荷物を入れて、病院へと出発した。


 岡山県の西にある小さな町に、恭介は住んでいた。電車が止まる駅はあるものの、公共交通機関はほぼ一時間に一本という、利便性の悪い町だ。

 車がないと生きていけないが、恭介の家は辛うじて、病院や駅、スーパーも歩いて行ける場所にある。

 恭介は前を通りながら、何気なく駅の方を見る。学生が乗り降りするとき以外は人気がないそこには、珍しく帽子を目深に被った人が、大きな棒を抱えてベンチに座っていた。

 それを横目に見ながら、恭介は自転車のスピードをさらに上げた。



本作品は個人創作です。

一部の表現や設定の整理にAI(ChatGPT)を補助的に使用しています。


「さち」名義で「pixiv」「小説家になろう」「カクヨム」にて同時掲載しています。

無断転載・無断使用・AI学習への利用は禁止しています。


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