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異世界喫茶『カフェ de ローズマリー』  作者: 杉崎 朱


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16/30

第16話 *焼き鳥


「うわぁー・・・」

 俺は自分のスケジュールを立て直したら信じられないことが起きた。

 6月までに京都支社への一週間の出張を頼まれていたのだが、一週間出張できるスケジュールを組むことが出来てしまったのだ。しかし、これはイレギュラーが起こらないことが前提だ。そう、普段からシステムが壊れたり、データが破損したりなど色々起こる。

 ・・・これは黙っておこう。しかもこのスケジュールはネット管理だから他の人からも見えてしまう。ダミーのスケジュールを入れておかないといけない。


 京都に行ってしまったら一週間もカフェに行けなくなってしまう。それは避けたい。

 単純に美味しいご飯を安く食べたいのと、みんなとたくさん会いたいからだ。俺がいない間にあの186歳の世界を何度も救った魔法使いのおばあさん!あのおばあさんが来てしまったら・・・!と思ったら行けない。



・・・ーーー



 ——カラン



「こんにちは!!」

「おう!いらっしゃい!!シェフっ!ランチ都合3つな!!」

 ——カンッ!!


 扉を開けて店内を見渡した。


 美男子

「やあ、こんにちは」

 アヒル副隊長

「グワーーッ!!」

 花魁さん

「兄ィじゃないか」

 子供くん

「お兄さん!僕!今日初めてのお給料で食べに来たの!」

 お姫様

「先週振りですわ!お元気でいらして?」

 うさぴょん

「お兄さんなのー!こんにちはー!」


 店にいる人たちがみんな顔見知りで話したことがある人たちだ。もちろん、何度か見かけている人もいるが、話した事ない人や動物もいる中、今日のお客さんは全員喋ったことがある。


 あああ———・・・いいな、こう言う感じ。なんか仲間内でパーティーやってる感じ・・・


 俺が扉を開けて店に入ったら、皆んなが話かけてくれる・・・!

 会社じゃこうはいかないもんな。てか、話かけてほしくない人もいるし。でも、ここの人たちとは沢山話したい!!あぁ!!嬉しいっ・・・!!!



「みんなこんにちは!!子供くん!初めての給料おめでとう!!がんばったね!!お姫様も先週振りです。俺は変わらず元気でしたよ!」

 子供くんとお姫様がにっこりと笑った。



「よぉっ!兄ちゃん、実は今みんなと話してたんだが、この店ちょっと一週間ばかし休むことにしたんだ!」

 マスターが、なんでもない話をするようにとんでもないことを言った。


「はぁっ?!っちょっ?!ええぇっ?!」

「いやー実はよ?キッチンを工事したいって話自体はシェフからされてたんだ。でもな、みんな毎日来てくれるからなかなか店休ませるわけにもいかねぇって話もしててな・・・」

「キッチン何かあったんですか?」

「元々居抜きで使ってたから、まぁ古いっちゃ古いんだよ。コンロも古くて火の点きも悪りぃしなっ!まぁ飲食店て着火ライター使ってつけてるところなんて山ほどあるけど、そもそももう一新しちまおうかって話になったワケさ」


 あああああ!!店を一週間も休むなんて・・・!!ん?一週間?



「マスター!それっていつの予定ですか?」

「5月の第三週」



 ———俺がさっき立てたスケジュールで京都支社に行けちゃう日程と被る・・!!



「ほら、兄ちゃん初めて来てから昼はほとんどウチに来てくれてるだろ?だからよぉ、一週間も休むなんて悪いって・・・んぁ?そういやどっか出張行くとか言ってなかったか?」

「そうです!!京都に出張なんです!ちょうど5月の第三週に行きたくないけど行けそうな感じで!でもここに来れなくなるの嫌だからどうしようかと思ってたんです!!」

「まぁ行きたくねぇ出張に行かせたいワケじゃねぇけど、どのみち行かなくちゃいけねぇんだろ?だったら店の休みの間に行ってきちまえよ!!その方が出張断り続けてるよりも兄ちゃんの株も上がるってもんよ!」

「そうですね・・・行かなくちゃいけないってんですから仕方ないですもんねぇ・・・」

 まさにトホホって感じだけど、店も休みでどのみちご飯も食べれず誰とも会えないなら京都行って適当に仕事して湯葉とか千枚漬けとか(にしん)蕎麦食べてた方が良い。あぁ、昼休みから戻ったら上司に伝えよう・・・


「一週間会えないのは寂しいのっ!でも、キッチンが新しくなれば、シェフがもっと料理の幅が広がるっってマスターと話たみたいなの!!だからうさぴょん我慢するの!!」

 俺も寂しいどころか涸渇してどうにかなりそうだ。でも、料理の幅が広がるなら仕方ないじゃないか!!今でもだいぶ料理の幅は広いと思うけどもっと広がるとは?!

「きっとシェフは、ワタクシがお伝えしたワタクシの世界のお料理をもっと美味しく作ってくださるのだわ!ここのキッチンにはその設備がないと仰ってたの!!」

 お姫様その料理とはっ・・?!?!

「僕、そんなにちょくちょく来れないから、次はその工事が終わってからかな・・・」

 そうだよね!子供くんはたまのご褒美みたいな感じだよね!!あぁ!!この安い金額なら俺が子供くんの分を毎日払ってあげても良いんだけどそう言う事じゃないんだよな!!


「と!いうことでお待たせいたしました!本日のランチの”焼き鳥御膳”です!」


 タイミングよく和服メイドさんが持ってきてくれた!!焼き鳥だって?!うわぁー!!いろんな種類の串と雑穀ご飯、そして味噌汁に漬物・・・めっちゃ美味そう・・・!!!


 もも、ねぎま、ぼんじり、せせり、軟骨、皮、つくね、レバー・・・イヤイヤ、これはご飯っていうより正直お酒だよな。お酒欲しいけどまだ昼だし仕事があるからだめだ!!でも絶対ビールが合うに決まってる・・・!!


「頂きます!!」


 他にも同じタイミングで食べ始める人がいる。

 串にかぶりついて食べる者。串から箸で外してから食べる者。食べ方はそれぞれだ。みんな自由に、好きに食べている。人の食べ方に干渉しない。個人を尊重している。そりゃ、同じ世界じゃなくて異世界だもんな。色々違ってて当たり前だ。もちろん、効率の良い食べ方を教えてあげたりするのも良いだろうけど、でもその人の好きにするのが良いと思う。これ、仕事じゃないからね。

 ・・・本来、国どころか少し離れただけの出身地の違いですら、こういう差があって当たり前なんだよなぁ。確かにマナーやらなんやらっていうのもわかるけど、好きにして他を尊重するっていうのも凄く良い事なん———



「グワー!!グワワッ!グワッ!グワッ!グーワワ・・・」

 アヒル副隊長が鳴き出した。何か俺に向かって言っているような気がする。しかしアヒル副隊長の言葉は今の所は同じ世界の美男子にしかわからない。


「ふむ・・・ふむ・・・あぁ、なるほどね」

「グワッ!グワーグ!」

 美男子が話を聞いてくれている。


「あのね、アヒル副隊長がお兄さんがご飯食べてるのに珍しく難しそうな顔してる。何か悩んでるんじゃないかって言ってるんだ」


「えっ・・・」

 難しい事じゃないけど、でも確かになんか面倒な事は考えてたかもしれない。あぁ、いつも俺がご飯を目の前にしたら飛びついて夢中で食べてる事をアヒル副隊長は知っているだ。それでもって、今日は俺が飛びついて食べないでなんか考え事してたのも見てて気にかけてくれたんだ。


「優しい世界線っ———!!」

 俺は感動して顔を手で覆った。

「うん、とりあえず大丈夫そうだね」

「グワー!!」

「ほら兄ちゃん!冷めないうちに食いな!!」


「頂きますっ!!!」





・・・ーーー



 焼き鳥が信じられないほど美味しかった。絶対炭火だよ。ここのキッチン炭火もあるのか?!てかなんだって作れるでしょ?!それでもシェフがもっと料理の幅が広がるって言うなら黙って一週間くらい出張にでも行ってやるってもんだ。みんなと会えないのは本当に寂しいけど、でもその後の楽しみが増えるから良しとしよう。




———チャリン


———ヴヴヴヴヴ・・・


———ウィーン


———チャリンチャリン・・・



「ほい!!1,000円のお預かりで500円のお返しな!!」

「相変わらずこの安さなんなんですか?ありがとうございます!!」

「あ、そうだ兄ちゃんよ?」

「はい?」

 マスターが丸くて黒い目を俺に向けた。


「兄ちゃん土日はいつも家で寝て過ごしてるんだろ?」

「はい、ほとんど動きません」

「仕事が休みだからこの辺にも来ねぇんだろうとは思ってんだが、来週どうする?来るか?」

「来週ですか?」

「ほら、今週で4月終わりだろ?」

「はい」

 ???なんの話———あぁっ!!!


「「ゴールデンウィーク!!」ってのが5月の頭にあるんだろ?コーヨーが言ってたぜ?」

「お店は営業してますかっ?!」

「してるけど、兄ちゃん休みなんだろ?」

「営業してるなら来ますっ!!毎日かわかりませんけど!!」


「・・・」

 シェフがびっくりした顔をしてる。って言っても、元々目はまん丸なので、口がポカンと開いているだけだが。

「・・・———ったくよぉ!物好きだなぁっ!!」


 そう言ってマスターはニヤッと笑った。

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