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異世界喫茶『カフェ de ローズマリー』  作者: 杉崎 朱


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15/30

第15話 04:35*アサイーボウル


「あ!有真さん!!この間はランチありがとうございました!すっごく美味しかったですベーグルサンド!・・あの、井内さんも戻ってきてもう中々会えなくなっちゃいましたね・・・もし良ければ、また一緒にランチしませんか?!今度は会社の外で!!」

「いや、俺ランチは一人で行きたいんだよね」


「なんでですか?一人って寂しく無いですか?!」

「特には・・・あぁ、店に話す人たちたくさんいるし。それ、俺の楽しみだからさ」

「・・・私とランチ苦痛ですか?」



 ・・・俺はなんでこんな質問をされているのだろう。

 先日まで面倒を見ていた女性新入社員になぜか懐かれてしまった。なんでこんなにはっきり言ってるのにまだ懲りずに・・・あれっ?!そういえば花魁さんに言われた!!はっきり断ってもダメな女子もいるって!!のらりくらりとしてれば良いって言われた!そうだ!忘れてた!!



「苦痛じゃ無いけど・・・うーんなんていうかなぁ・・・」

「なんですか?」

「うーん・・・」


 のらりくらりってこんな感じ?よくわかんないんだけど?


「行きたいんですか?!行きたく無いんですか?!」

「行きたいとか行きたくないとかじゃなくてだなぁ・・・」

「・・・〜〜〜っ!!!」


 あれ、なんか彼女段々イライラしてないか?



「もう良いです!!」

 そう言って彼女はカツカツと踵を鳴らしてどこかへ行った。



 あれ?成功?




・・・ーーー


 ーーカラン


「こんにちは!」

「おー兄ちゃん!昨日はお疲れ様なっ!シェフ!!ランチ都合5つ!!」

 ーーカンッ!!


 カウンターの真ん中の席が空いてる。今日は馴染みの顔が多くて安心するなぁ・・・。椅子に向かう途中に美男子とアヒル副隊長もいた。

「お兄さんこんにちは。昨日大変だったんだって?」

「グーーーワワワワワッ!!」

「聞いちゃいました?異世界の王妃様」

「ボウくんが相手してくれたんだってね。本当にボウくんはすごいねぇ」

「グワーグワー!」

「そうなんです!昨日ボウくんがいなかったらもうとんでもないことになってましたよ!!」

 昨日の事なので記憶は鮮明だ!いけない、思い出しただけで腹が立ってきそうだ・・・!!空いてるのは二人の隣だし、立ったまま話すのもなんだと思い俺は席に座ろうとした。



「あー!お兄さんなのー!こんにちはー!」

「うさぴょん!こんにちは!」

 挨拶してくれたうさぴょんの隣には先客がいた。耳が見える。小さい耳だ。誰だ?初めましてか?俺は上からうさぴょんの話し相手の顔を見た。


 ・・・?鹿?にしては小さい。モルモット・・・?にしては足が長い?


 なんだこの子?でもめっちゃくちゃ可愛いっ・・・!!!



「お兄さんを紹介するね!”お兄さん”なのーー!!!」

 雑な紹介だけど確かにそれしか言えなくて。ここは本名禁止だからね。可愛い紹介に頬が緩む。これっ!これだよこの感じだよ!!この平和こそがジャスティス!!昨日は本当にイレギュラーだったんだ!!


「お兄さん初めまして。マメジカです。そのまま、マメジカと呼んで下さい!」

 

 マメジカ・・・?






「《マメジカ》世界最小の有蹄類(ゆうているい)(てい)・・・あっ!馬と一緒の”ヒヅメ”を持つ動物かっ!じゃあ、ヒヅメを持つ種類では最小なのがマメジカって事か・・・まぁあくまで俺の世界の話ですけど」

 ネットですぐに調べた。

「ほぉー、俺も初めて見たわ。うさ吉とちょうど同じようなサイズだな。まぁ俺もだけどよ」

「私とアヒル副隊長は見たことありますよ」

「グワッ!」

「なんでも良いですけど可愛すぎて俺どうにかなりそうです」

「昨日の傷を今日存分に癒していけな」

「はいっ!!」


 隣で二匹の会話が聞こえる。

「ねぇ!お仕事してるの?!」

「してるよ、足がすばしっこいのが売りだから、配達員してるの!」

「飛脚だぁー!!」


 可愛い。


「ねぇ!いつも何食べてるの?!」

「葉っぱとか、木の実だよ」

「ここのご飯食べれる?」

「多分、大丈夫!」


 あ、草食ってことか?確かに・・・あ!!まさかブータンの時みたいに今日のランチが鹿の肉とか・・・!!


「お待たせ致しましたー!今日のランチの”アサイーボウル”です!!」


 ナイスメニュー!!アサイーボウル!!


「アサイーボウルだー!!これならマメジカも食べれるね!!」

「凄い、美味しそう・・・!」

「「頂きまーす!!」」


 俺より先にランチが届いた二匹。一緒に楽しそうにランチを食べている。眼福。何この生き物たち可愛いんだけど。俺今アニメ見てる?アニメの中入っちゃった系?異世界転移みたいなもんだから変わらんかっ!!


「美味しいー!ハチミツ最高ー!」

「んっ!!この木の実美味しいっ!なんて深い味の木の実・・・!!」

 見るからに、くるみの事だろうか。


「いちご美味しい!!すっごく甘いの!全然酸っぱくない!!」

「なんかこのサクサクしたの・・・美味しい・・」

 さくさく・・・なんだろ?あ、グラノーラとか言われるやつか。


「お待たせ致しました!アサイーボウルです!」

「「ありがとうございます!」」

「グワッ!」

 俺たちの分のランチが届いた。綺麗に盛り付けてあるなぁ〜なんか食べるの勿体無いって思っちゃうよ食べるけど。

 隣で楽しそうに食べている二匹をメイドさんも見ている。

「可愛いですね!」

「本当そうですよね!!」

 貴方もとっても可愛いですよっ!!!では、俺も食べますか!


「頂きますっ!!」




・・・ーーー



「あ、マスター!そういえばこの店って”出禁”の制度あるんですよね?どうやるんですか?」

 昨日、王妃に対して出禁措置をとるとマスターは言った。しかし、どのようにするのだろう?入ってきたら断るのだろうか?あの高飛車王妃が『出禁です』と言われて『はいそうですか』と聞くとは思えないが・・・。


「あー・・・これはな、王妃の世界側から扉が開かなくなる仕組みなんだ」

「・・・えっ!ってことはつまり・・・!」

 まさかっ!?

「そう、昨日来た王妃の世界は6:06。つまり、6:06の世界自体がこの喫茶店を”出入り禁止”となるんだ。他に通ってる人には悪いんだけどな。個人だけを閉め出す方法はないから、言っても聞かなさそうな奴に対しては扉自体を開かないようにする以外方法はねぇんだ」

「じゃぁもしですよっ!?俺が出禁対象になって、12:00を出禁措置したら、コーヨーさんも入れなくなっちゃうって事ですよね?!」

「そういうこった!」

 なんて事だ!!つまり・・・!!

「俺と同じ世界からきた人で困った人がいて、どうしても出禁措置となったら・・・俺もコーヨーさんも来れなくなっちゃうって事ですよね?!」

 大問題どころじゃない!!死活問題じゃないかっ?!


「そうなんだよな。でもあの高飛車王妃レベルは珍しいぞ?そもそもああいった奴が()()()()()()()()()()()んだよな・・・危ない奴や怪しい奴とか、疑り深い奴ってのは大体()()()()()去っていくからな?」

 

 そうだったのか・・・。そういえば俺が初めてこの店に入ったあの時は、もう全然寝れてなくて疲れ過ぎててあまり深く考えてなかったからなぁ・・・。

 でも俺の世界は、いくら看板に注意書きがあったとて、この光景見て人に言わないでいられる人間が何人いるかって話だよ。絶対人に言って騒ぎになるって・・・。俺、言わない方だよな・・・?コーヨーさんも多分同じように憩いの場が欲しいんだろうなぁ。芸能人ってなんか忙しそうだし・・・あと、ミュージシャンってなんか独特な感性で生きてそうだから、こういう世界に対して偏見持たなそうっていう俺の偏見。

 でもその他の人に対しては勝手ながら信用ならない。女性の新入社員のあの子だって、悪い子じゃないだろうけどここに呼べるかって言ったら・・・絶対呼べない。口堅そうな井内さんでも俺は一週間考えるだろう。


 隣では楽しそうにうさぴょんとマメジカが話している。二匹が出会うのが昨日でなくて今日で本当によかったと思う。もし初めての来店であの王妃が居たら、マメジカはもう来なかったかも知れない。


「うさぴょんは今日この後も人参収穫に行くのー!」

「人参美味しそうだね〜、マメジカは残りの配達が半分あります。今日中に届けないといけないのです。でも今日は全部お手紙だから軽くて嬉しいです」

「お手紙届けるのー?!」

「はい。マメジカの担当は”速達”です!」

「すごいのー!速達なんて格好良いのー!!」


 俺と美男子はうさぴょんとマメジカのやりとりを見て微笑む。


 あぁ・・・。会社に戻りたくないっ・・・!!!!!

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