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【01】異世界にきちゃった

初投稿です、よろしくお願いします。


(ここは……どこ?)


目を覚ました真理愛まりあの視界に入ったのは、空をさえぎる枝と葉から漏れるわずかな光。

視線を横にそらすと太い幹とうっそうとした草

――これは森の中だ、と真理愛はそう思う。

思う……が、なぜ自分はこんなところにいるのだろう。


(……くさい……)

森林浴どころではない、生臭い草と土のにおい。

獣臭ささえ漂っていて真理愛は眉を顰めた。


確かに、布団の中で寝ていたはずだ。

自分の部屋で。

それなのになぜ外に……しかも森の中に。


起きたばかりで思考が衝撃に追いついてこない。

心臓はこんなにもばくばくと激しく鼓動し、呼吸も乱れ始めているのに。


とりあえず自分の体をあちこちとさすり、無事かどうか確かめる。


――なんか、おかしい――


さわった感触や、視界に入る体の造形は記憶の中にある自分の姿と一致しない。

サラリと胸元に落ちてきた毛先を見て息をのむ。

それは輝くような金の色をしていた。


(金髪――!? え? なんで? なんでなんでなんで?)


ひとしきり混乱し、グルグルと周囲を見渡し、呆然とし、

やがて力尽きたようにしゃがみこんだ。


(これってドッキリ? 薬つかって拉致られた? 

え、でも金髪にして森の中に放置って、素人にそこまでやる? 

それ普通に犯罪だよね? てか、痩せてるし! 数時間でダイエットって無理だから! 

夢? 夢なのか、これは? でも感覚が全部妙に生々しい……)


そして、自分がよく読む小説の中で、無責任に憧れていた展開に思い至る。


「……これってもしかして……異世界トリップ?」


その問いかけに応える者はいなかった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



――少し前――


男は部屋の中でいつものように机にむかい、頬杖をつきながら思考にふけっていた。


カーテンの隙間から漏れる光で外は明るくいい天気だと想像できるが、

閉まっているせいで部屋の中は薄暗く、空気は淀んでいる。

山と積まれた書籍、書き損じたのかクシャクシャに丸められた書類、

よくわからない液体が入ってる瓶、よくわからない物質が入ってる瓶。


「ん~~~~~~」


その部屋の主である男は、ボサボサの黒髪を両手でかきむしり、

黒ぶちの眼鏡をはずし、眉間の下をもみ眼鏡をかけなおして

不機嫌そうに、ため息を吐く。


整った顔立ちなのにその表情に生気は感じられず、

褐色のその肌の色は本来健康的であるはずなのに、

彼の場合それはなぜか退廃的に見える。


身なりも気にしてないのか制服である魔導ローブが

ところどころ煤けたように汚れていて、

それがいっそうくたびれた印象を周囲にあたえていた。


視界の片隅で何かが光り、男はその方向を向く。


「……?」


発光する水晶体に気付き、そこに映し出された光景に目を見開いた。


「これは……」


酷薄そうな笑顔をたたえながら席を立ち、水晶体に近づいた。


「ああ、やっぱり」


(水晶魔法陣が発動してますね……)


子供の背丈ほどある立方体の水晶に、刻まれている紋様が発光している。


「やっと……堕ちてきましたか……天使が」


ククク、と男は楽しそうにのどを鳴らした。





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