第一章 変態X変態=混沌
プロローグ
古今東西で勃発する『巨乳派VS貧乳派論争』と云う奴を俺は心の底から下らないと思っている。
『大きければ大きい方が良い……!』だの、『てめぇ緩やかなのを恥じらっちゃう姿が可愛いとは思わねえのか?』だの、『馬鹿野郎! 形が良ければ大きさは関係ねーだろっ!!』だの、正直低俗過ぎる。
それはおっぱいの大きさだけではない。
脚、腕、くびれ、項、顔、髪型、性格、言動、しぐさ…………
男とは何時の時代又何処の国でも口を開けば各々の女性の好みを熱く語りだし、それは止まる事を知らない。
だが俺——橘輝をそんな低俗で下等な野郎共と同じにされては困る。
女性の価値というのは一体何処で決まるのか。
それは顔の可愛さでも、スタイルの良さでも、性格の良さでも————勿論おっぱいの大きさでも、ない。
——それら全ての——総合だッ!!
例えばバストサイズ90の女の子に最も合う身長の一つが一四四センチであり——これは俗にいう『ロリ巨乳』という奴だが——その程良い低身長が演出するは純朴なるあどけなさ。そしてそれに『90』という何とも絶妙なる巨乳がマッチしたその瞬間生まれるハーモニーはまさにビックバンを巻き起こし、太陽系程度雑作もなく破壊可能だろう。
加えて体重が49キロ——同じ身長の女性と比べほんの少し重い——場合、それは程よい『ムチムチ感』を生み出し、それらの放つ甘美で柔らかい——そう、まるで天使の様なそのお姿に、俺は理性を保っていられる自信が無い。
さらに加えてそんな完璧ロリ巨乳天使に最も適した髪型とは——ミディアムである。色は清楚さを演出する黒も悪くないが明るく巨乳をより引き立たせる金髪も捨てがたい。だが勿論カラーの手入れを怠るようでは話にならない。ミディアムと一口に云っても長さは様々だが今回俺が提唱する最も適切な長さとは————肩上1センチ。乳頭をより引き立たせるその絶妙な長さがロリ巨乳天使を女神に進化させると、乳首を中心としたおっぱい三角錐の中心角を計算すれば直ぐ分かる。
そしてこの容姿に最も適した性格は幾つか考えられるが、今回俺は『頑張り屋さん幼なじみキャラ』を推したい。いつでも傍らに居てくれる安心感と安らぎ、そして彼女の図体にしてはちょっとばかり大きなお胸をゆさゆさしつつも、それを凝視されているとも知らず家事や勉強等に打ち込むその姿を是非とも想像して頂きたい————
……もうお分かり頂けただろう。それは最早この世の全てを超越した存在。それに俺はただただ圧倒され、言葉を失う筈だ。
つまり俺の言いたい事はこうだ。
——フェティシズムなんてものは燃えるゴミの日に捨てるべきであり、フェチ補正など美の本質を揺るがす悪でしかない。
巨乳の女の子がみんな可愛い訳でもないし、貧乳の女の子がみんな可愛くない訳でもないのだ。
本来の女性の美とは謂わば数式の様なもので、何か一つ秀でて素晴らしいからと云って美少女になれる訳ではない。逆に言えばどんな難しい数式であろうと最後に『乗数0』がつけば答えは0であるのと同じ様に、何か一つでも圧倒的に足りなければ美少女にはなれない。美少女への道は険しい。どんなに巨乳だろうと、美形だろうと、美脚だろうと、優しかろうと、萌え声だろうと、バランスが整っていなければそれは美少女とは言わないのだ。
そんな常識を理解せずただ胸の大きさだけで女性の美を語ろうなど低俗にも程がある。『あの子は可愛い。なんにせ胸がある』なんて台詞を聞いた暁にはきっと俺はそいつをぶん殴りその子の前で土下座させるだろう。
『貴女の美を胸の大きさだけで語ってごめんなさい』と。