表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤松天翔物語①  作者: 姫笠
第二章 西国の覇者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/106

第三話 播磨の盗賊②

翌朝、まだ薄暗い空の下、一行は丹波の国へ向けて出発の準備を整える。

「宇喜多家より援軍として派遣されました、明石全登と申します。よろしくお願いします。」

「あ、あの時の……!」

先日、城下で再開した西洋甲冑の少女―

全登は凛とした表情で深く一礼する。その姿に、一同は頼もしさを感じた。

「では出発しましょう。丹波ともなると、先は長いです。」

善助の言葉に、一行は馬を進めた。


播磨の国北部、深い山々のあいだを縫うように延びる山道。朝露に濡れた草むらからはひんやりとした風が吹き上がり、馬の吐息が白くたなびいていた。

 全登は、ふと桜の馬上を見上げて目を瞬かせた。

「……あの、その妖怪はいったい……」

 彼女の視線の先には、桜の馬の上にちょこんと座り、首をかしげる白い子犬。毛並みは雪のように真っ白で、澄んだ瞳で全登をじっと見つめている。

「あ、この子? 名前はスシイヌ! 妖怪なんだよ」

 桜が無邪気に笑って答えると、全登の眉がぴくりと動く。

「スシイヌ……」

 横で手綱を握る又兵衛が呆れたように口を開いた。

「おい殿、なんでそいつ連れてきたんだよ。ちっせぇし、どう考えても足ひっぱるだけだぜ」

 桜は視線を泳がせ、唇を尖らせる。

「だって……」

 桜は旅立ち前の官兵衛との一幕を思い出す。


――


 官兵衛は腕を組み、真剣な顔で桜を見据えていた。

「殿。スシイヌも忘れずにお連れいただきますよう」

「え、えぇ!? でも、長旅になるし、連れて行くのは……」

 桜が慌てると、官兵衛は目を細め、低く念を押すように言った。

「私にその妖怪の世話をさせるおつもりですか? ちゃんと最後までめんどうをみるよう言ったことを……よもやお忘れではありますまいな」

 桜はその鋭い視線にたじろぎ、思わず肩をすくめる。

「うっ……」


――


 桜はため息混じりに仲間へ告げる。

「……官兵衛が……世話できないから連れて行けって……」

 又兵衛は大きく息を吐き、空を仰いだ。

「はぁー……」

 全登は苦笑を浮かべ、肩をすくめる。

「まあ……妖怪ですしね……」



やがて一行は山道を抜け、小さな宿場町へ到着した。夕方に差し掛かり、瓦屋根の家々からは炊事の煙が細く立ち上り、通りには旅人と町人が入り交じって行き交っていた。

「ここで少し休憩しましょう」

 善助が手を上げて提案し、一行は賑わいを見せる食事処へと入る。

 暖簾をくぐると、香ばしい匂いと人々の笑い声が一気に押し寄せ、旅の疲れを和らげてくれた。

「俺、天丼!」

「おら肉うどんがいいだあ!」

 又兵衛と友信が真っ先に声を上げ、店の者に注文を告げる。

 食事が並ぶと、しばらく和やかな談笑のひとときが流れた。

 湯呑を手にした善助がふと思い出したように全登へ視線を向ける。

「そういえば、当主の宇喜多殿はお元気ですか?」

 全登は小さく笑みを浮かべ、答えた。

「ええ。いつもにやにやしながら毒の調合に精を出されています」

「そう……ですか。それはなにより」

 善助はほんのわずかに口元を引きつらせつつも微笑を返す。

 そのとき桜が席を立つ。

「ちょっと私、お手洗い」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ