表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤松天翔物語 ~転生したら最弱の戦国大名だった!?~  作者: 姫笠
第一章 示された道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/133

第七話 備前の妖怪⑦

「ぐううう……」


が、妖怪は倒れない。3本の足と、ぶら下がった左脚でなんとか倒れず、体を支えている。

「しぶといやつ!」

政秀は即座に妖怪の首を切り落とそうと切りかかった。

その瞬間、妖怪の首が素早く動いた。

「ぬ――!」

桜に向けて念術弾が飛ぶ。

「――っ!」

桜はとっさに身を捻るが、足元の石につまずいた。

「うわっ」

桜が地面に倒れ込む。襲い来る妖怪の念術弾。

「殿! あぶない!!」

又兵衛と友信の攻撃を辛うじていなしていた善助が、桜の危機に気づき、足をもつれさせながらも駆け寄る。

しかし、構える時間はもう残されていなかった。善助は歯を食いしばり、背を向けたまま桜を庇うように身を投げ出す。


バアンッ!!


鈍い衝撃音とともに、黒い念術弾が善助の背に炸裂した。

「うっ……!」

 熱い痛みとともに視界が歪み、強烈なめまいと眠気が善助を襲う。

「くそ……これは……幻術か……」

低くつぶやいた声も途切れ、善助の身体は力なく崩れ落ちた。

「善助!!」

「おい! しっかりせい、善助!」

仲間たちの声に応えるかのように、善助はゆっくりと立ち上がる。

だが――その目はどこか焦点が合わず、光を失い、宙をさまよっていた。

「善助……大丈夫?」

桜の声に、善助の肩がぴくりと反応する。

次の瞬間、彼女の手に握られた日本刀がギラリと光り、切っ先は無慈悲に桜へと向けられた。

「……!!」

桜は思わず後ずさりし、喉がひゅっと鳴る。

「ちいっ……あの念術弾、泉と同じ幻術の効力か。」

政秀が舌打ちし、低く吐き捨てる。


じり……じり……。


官兵衛、又兵衛、友信、そして善助までもが、無言のまま桜と政秀に歩み寄る。

その動きはぎこちなく、まるで人形のようでありながら、殺意だけは確かに滲んでいた。

「ぐぬぬ……万事休すか。」

政秀は奥歯を噛みしめ、刀を強く握る。

「殿。一旦引きましょう。わしが殿しんがりをいたします。」

「え、でも……」

桜が戸惑う間にも、又兵衛、友信、善助が一斉に武器を構え桜につめよった。

「させぬわっ!」

桜と3人の間に政秀がわって入る。

だが、同時に官兵衛が桜の方を向き、地に手を添え、呪文を唱えている。

「い、いかん!殿!お逃げくだされ!」

「うっ……」

桜は戸惑いつつも観念し、背を向け走り出そうとする。

だが、間髪いれず官兵衛が呪文を唱え終わると、周囲の地面がうごめき始めた。

「――棘黒陣!」

逃げきれず桜は頭をかかえ目をギュッと閉じる。


 ブシュッ!


「……!?」

官兵衛が放った2本の念術の槍が妖怪の顔面を貫く。

「ウ”ウ”アア!!」

妖怪がのたうち回る。

勝利を確信し油断しきっていたのだろう。身の軽い妖怪の両目は、官兵衛の念術―棘黒陣の2本の槍により正確に貫かれていた。

「……貴様あ! どうやって幻術を解いた? あの水を飲んでいたはず……!」

官兵衛は冷静に答えた。

「飲んでおらぬ」

「なんじゃとお?」

「道中の屍、兵同士で争った形跡があった。よもやとは思ったが……」

妖怪が両目を失ったからか、他の操られていた3人もとたんに動きが鈍くなる。

「貴様あああ!」

叫ぶ妖怪に、政秀が渾身の力で駆け寄る。

「うおおおおお!!」


―一閃―。


政秀の刃が妖怪の首を断ち切った。

ゴトリッ と音をたて妖怪の首が地をころがった。

と同時に、他の操られていた3人も脱力し、その場に倒れ込む。

「みんな!」

桜は善助に駆け寄る。

「……大丈夫?」

善助は力なく体を起こし、微笑む。

「……はい、なんとか。」

その声を聞き、桜はほっと息をつく。

続いて、又兵衛と友信も地面に手をつきながら、ふらふらと体を支え、ゆっくりと起き上がった。

まだ夢うつつの又兵衛が頭をかきながら呟く。

「……なんか、友信と一緒に妖怪鬼ババアを退治する夢をみていたぜ……」

「んだあ……」

その隣で友信も、顔をしかめながらうなるように答えた。

ピクッ……

善助の耳がピクリと動く。


そこへ、妖怪の死を確認した政秀と官兵衛が歩み寄ってきた。

政秀は血塗られた刃を軽く払うと、隣を歩く官兵衛にぼやき始める。

「まったく、おぬしはいつもひやひやする策を……」

政秀の文句を、官兵衛は涼しい顔で聞き流している。

「さすが官兵衛だね!」

桜が無邪気に笑いながら言うと、官兵衛は一礼しながら答えた。

「敵を騙すにはまず味方からと申しますれば……殿、無礼をお許しくだされ」

「いいよ!それが官兵衛の作戦だもんね!」

桜が屈託なく返すと、官兵衛は静かに目を細めた。

だがその直後、又兵衛と友信に向ける眼差しは、鋭く冷たいものに変わった。

「お前たち……敵地の水を口にせぬのは兵法の常識であろう」

又兵衛と友信は肩を落とし、しゅんと頭を垂れる。

「……だから簡単に妖怪の血など飲んでしまうのだ」

「う”お”え”え”!!」

二人は顔を青ざめて呻いた。

「あの……おっさんの血……」

桜はそんな二人を見て、苦笑するしかなかった。

妖怪を討伐し、一行は姫路城に向け帰路につく。

官兵衛がふと口を開いた。

「そういえば政秀殿、先ほどは本気で私に斬りかかってきているように見えましたが……」

「……ギクッ」

「それに、私の策と知らず『軟弱者』と……」

「も、もうよいではないか! はははっ!」

大きな笑い声とともに、政秀は前を歩き出した。

後ろで官兵衛が小さくため息をつく。

桜はそんな二人を見て、くすりと笑った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ